シングルCDはAKB48が独占、アルバムCDは「アナと雪の女王」も…CDやネット配信の「ミリオン認定」などの動向(2015年)

2015/04/29 15:00

コンテンツビジネスを営む者にとって、「ミリオン」(100万)は一つの大きな目標であり、ヒットの代名詞に他ならない。今回は日本レコード協会が2015年4月28日に発表した音楽業界に関する白書「日本のレコード産業2015」の公開値を基に、日本におけるミリオンセラーの概念に近い「ミリオン認定」などについて状況を把握するため、各種データの精査を行うことにした(【発表リリース:「日本のレコード産業2015」を発行】)。

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雑誌やゲームソフト市場でも良く使われている言い回しであり、作家・出版元の立場からは夢の一つでもある「ミリオンセラー」(100万本以上売れることを意味する)。しかし「日本のレコード産業」では数年来この言い回しは使わず、代わりに「ミリオン認定」なる言葉を用いている。これは「会員各社からの申請に基づいた出荷枚数」を定期的に確認し、「発売日からの累計出荷枚数が100万枚を超えた場合」に認定する称号である(【解説ページ:ゴールドディスク認定作品】)。ちなみにミリオンより下には10万枚以上の「ゴールド」をはじめ、25万枚以上の「プラチナ」、50万枚以上の「ダブル・プラチナ」などがある。あくまでも出荷枚数であり、販売枚数よりはハードルが低いことに留意しなければならない(数年前までの当サイト内類似記事では、資料も含め「ミリオンセラー」が使われていたため、現在の「ミリオン認定」の値との連動性は無い)。

次に示すのは、過去の分も合わせ、経年の「日本のレコード産業」で確認できる限りにおける「ミリオン認定」の推移。

↑ 音楽CD・ミリオン認定の推移など(2002年-2014年)(作品数)
↑ 音楽CD・ミリオン認定の推移など(2002年-2014年)(作品数)

2014年はシングルで1本、ダブルミリオンが登場した。またシングルのミリオンは(ダブルミリオン以外では)3本、アルバムのミリオンは2本が確認できる。具体的には

●シングル
■ダブルミリオン
・ラブラドール・レトリバー(AKB48)
■ミリオン
前しか向かねえ(AKB48)
心のプラカード(AKB48)
希望的リフレイン(AKB48)

●アルバム
・次の足跡(AKB48)
・アナと雪の女王 オリジナル・サウンドトラック(V.A.)

という次第である。

アルバムは「手堅い」作品が多い。今回は映画が爆発的ヒットとなった「アナと雪の女王」の関連アルバムであり、改めて同作品の浸透力を感じさせる。他方シングルは、いわゆる「選挙」や「握手会」との絡みをはじめとするさまざまな「仕組み」もあり、ここ数年来の状況から変化は無く、同一グループの独占状態となった。単純計算でも最低500万枚は売れていることになり(3×100万+1×200万(枚))、2014年のシングルCD総生産数5545万8000枚に対し1割近い(実際にはミリオンが100万枚きっかりではないので、合計では1割に届いているだろう)との計算になる。無論「選挙」「握手券」が無くともそれなりにヒットはしたはずだが、ミリオン3タイトル・ダブルミリオン1タイトルとの実績には大いに貢献したことは間違いない。

以前の記事でも指摘しているが、2010年にシングルのミリオン「1件」記録されている「Beginner(AKB48)」もまた同様の事由によるところが大きい。このCDは2007年8月に発売された「千の風になって」(秋川雅史)以来3年強ぶりのシングルミリオンとして認定されていた。つまり「千の風になって」以降、シングルCDのミリオン認定はAKB48によるもののみ(加えるならば「選挙」絡みの影響が色濃く出ている)との現実が浮かび上がる。

他方グラフの緑線に大きなイレギュラー的動きが確認できる。これは今回発表分、つまり2014年からミリオン認定のカテゴリ区分に変更が生じたことによるもの。これまで「着うた」「着うたフル」はCDとは別途「音楽配信」として計上し、さらにパソコンやスマートフォンなど向けの「PC配信(シングル)」は今件項目ではカウントしていなかった。しかし今回分(2014年分)から「着うたフル」「PC配信(シングル)」を統合して「シングルトラック」としてカウントし、「ミリオン認定作品」に計上している(【有料音楽配信認定】)。

2014年分では2014年1月において、これまでカウントしていなかった過去の「PC配信(シングル)」分のミリオン作が大量にミリオン認定されている。つまり2014年分が跳ね上がったのは、2014年に大量のミリオン認定作が突如出現したのではなく、これまで未認定だったものが一挙に認定されたことによるもの。次年2015年分以降は再び通常の状況に戻るはず。

↑ 有料音楽配信(シングルトラック)における2014年分で認定カウントされた作品一覧
↑ 有料音楽配信(シングルトラック)における2014年分で認定カウントされた作品一覧

ちなみに2014年中に「配信を開始」し、ミリオン認定されたのは「レット・イット・ゴー-ありのままで-(日本語歌)」のみである。

2012年以降は携帯電話市場におけるスマートフォンへのシフトが進み、それに合わせてモバイル端末の有料音楽配信市場が大きく変動、従来型携帯電話(フィーチャーフォン)による着うた・着うたフルの需要が大きく減退している。その動向はミリオン認定数の激減との形にも表れていたが、今回カウント形式が再度変わり、今後はパソコンやスマートフォン向けの有料配信も計上されることで、動きが読みにくい状況となったのは否めない。



今回のミリオン「認定」の動向を見るに、CDでは大きな動きが無く。少しずつ勢いを落としているような感はある。前年に続き今年でもシングルのセールスでダブルミリオンが登場したこと自体は喜ばしいものの、その内情を見るに「音楽業界の伸長による結果」と評して良いのか否か、判断に迷う。

かつて宇多田ヒカルの初アルバム『First Love』は初回出荷280万枚、1999年だけで800万枚を超えるヒットとなった(国外も合わせると1000万枚前後ではないかとの話もある)。このような「超ヒットセラー」は、現在の市場では奇跡でも生まれえないのが現実。あの「アナと雪の女王」ですら、アルバムはダブルミリオンに届いていない。趣味趣向が分散拡散し、手法が多様化する以上、同一作品が集中的に売れることが難しくなったのが一因と言える(もちろん無料の音楽配信に音楽利用客が流れているなど、複合的要因はある)。2013年以降、定額制の聴き放題サービス部門が大きく伸びたのも、その状況変化を示す数字の一つであろう。

デジタル化、スマートフォンの普及、ソーシャルネットワークの浸透など、音楽を取り巻く環境は大きく変化を遂げている。「音を楽しむ」というスタイルも多種多様化し、既存のビジネスモデルが通用しにくい時代であることは否めない。他方、主従を逆にしかねないビジネスモデルが良いものなのかについても、賛否両論がある。関係各位は今一度、音楽とビジネス、そして業界の将来のことを見据えるために、思案する必要があるのではないだろうか。


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