現状全項目で下落、先行きは飲食とサービス以外が下落…2016年2月景気ウォッチャー調査は現状下落・先行き下落

2016/03/08 16:00

内閣府は2016年3月8日付で2016年2月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で下落して44.6となり、水準値の50.0を下回る状態は継続する形となった。先行き判断DIは先月比で下落して48.2となったが、こちらも水準値の50を割る状態が続いている。結果として、現状下落・先行き下落の傾向となり、基調判断は中国の景気後退懸念や金融市場の不安定感を受け「景気は、円高、株安といった金融資本市場の不安定な動きの中、消費動向等への懸念により、このところ弱さがみられる。先行きについては、春物商戦やローン金利低下への期待等がある一方で、引き続き、先行き不安や金融資本市場の動向が企業、家計のマインド等に与える影響に留意する必要がある」となり、景況感の軟調さを覚えるコメントが示されている(【平成28年2月調査(平成28年3月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は下落、先行きも下落


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2016年2月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比マイナス2.0ポイントの44.6。
 →「やや良くなっている」「変わらない」が減少、「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加。
 →詳細全項目で減少。ただし振れ幅の大きい項目は特になく、最大値でもマイナス3%台。

・先行き判断DIは先月比でマイナス1.3ポイントの48.2。
 →「やや良くなる」「変わらない」が減少、「やや悪くなる」「悪くなる」が増加。
 →家計動向の飲食とサービスのみ増加。雇用関係が大きく減少し、マイナス4.7をつける。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。ガソリン価格は2015年春先までの原油価格の上昇を受けて一時値上がりの気配も見せたが、その後は再び原油価格の下落基調が強まり、これを受けてガソリンなどの石油製品の価格も安値安定化の動きを示しており、少なくとも運輸方面そのものと運輸に大きな影響を受ける業界では安堵の声が聞かれる状況。

今回月は先月に続き、水準値となる50.0を現状・先行き共に下回る形となった。具体的コメントや周辺状況からも明らかな通り、中国の景況感への先行き不信感への強まりに加え、それをきっかけとした、さらには原油安を受けた円高・株価安による金融市場の軟調さに強く影響される形で、景況感は大きく縮退している。利用する側としては原油価格は安いにこしたことはないのだが、その低迷で金融市場全体が萎縮し、間接的に景気悪化を後押しする構図であるため、大いに悩ましい話に違いない。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

水準値超えは現状で1つ、先行きで3つ


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。

↑ 景気の現状判断DI(-2016年2月)
↑ 景気の現状判断DI(-2016年2月)

消費税率改定からはすでにほぼ2年が経過したが、それによってもたらされた消費者心理の深層部分で影響を及ぼし続けているマイナスの景況感を回復させる材料が見当たらず、低迷感は薄まりながらも継続。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、景況感は足かせ状態が続いていると判断できる。

2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年秋以降に落ち込んだ価格水準にまで再び下落。直接的な景況感の観点ではプラスの要素として継続している(企業の収益構造上の話としてはまた別)。さらに円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが2015年夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

その上、原油価格の低迷感が続くことで、関連企業や原油輸出を大きな糧としている諸国の経済的不安定感が強まり、金融市場にも影を落とし、相場低迷に拍車をかけている。昨今では為替の変動と原油価格の動向が、日本の株式市場を左右する主要因となっているほどである。

今回月では詳細項目はすべてマイナス。最大の下げ幅は飲食のマイナス3.7で、昨年12月に見せた大飛躍から転じた大きなマイナスに続き、再び減少し、直近半年間では最低値にまで落ち込んでしまう。雇用関係もマイナス3.2を計上し、水準値の50.0はかろうじて維持したものの、非常に危うい形となった。もちろん水準値超えはこの雇用関係のみ。

景気の先行き判断DIは現状と比べればまだおだやかだが、下げたことに変わりはない。

↑ 景気の先行き判断DI(-2016年2月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2016年2月)

家計動向では現状と比べて下げ幅は小さく、プラスを示す項目も複数確認できるが、その分企業動向や雇用関連の下げ幅が大きい。特に雇用関連はマイナス4.7を示し、水準値となる50.0を割り込んでしまった。これは2014年11月以来のことであり、先行き不透明感の高まりを表す一つの指標ともいえる。

中国景況感と市場と原油が景気の足かせ


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・客からの問い合わせで新築物件の早期建築を要望するケースが増加している。その理由としては、マイナス金利施策による金融機関の金利優遇や消費税率引上げを見越した早期契約を要望している客が増加しているためである(住宅販売会社)。
・商店街で商売をしているが、商店街への来客は高齢者が多く、今年のように寒暖の差が大きくなると、来客の頻度が減少する(商店街)。
・冷え込む日が増えたため、鍋や煮物など冬物商材の動きが改善した。来店客数も前月より若干増加し、売上に寄与している(スーパー)。
・やはり一番は株価の低迷に伴う消費自体の冷え込みというか、不要不急な物はしばらくは買い控えようという声がある。ぜいたく品やファッション性の高い商材については、もうしばらく景気が落ち着いてからという声がかなり聞かれる(百貨店)。

■先行き
・春めいてくるのが早いとの予報を受け、これからは春物衣料が好調に売れていくと期待している(衣料品専門店)。
・団体需要は期待にはまだ遠いが、個人旅行については伸びが期待できる。特に、ゴールデンウィークは2日休むことにより10連休となり、3連休が2回含まれるので、長期、短期旅行いずれのパターンでの需要も期待感が高い(旅行代理店)。
・現在の円高、株安の状況が、今後の景気を大きく左右するのではないか。さらに、今後の国際環境、状況の変化も大きく影響すると思われる(スーパー)。
・為替相場や株安により、先行きに不安がある(旅行代理店)。
・世界経済の先行きが不透明で、客は生活防衛を考え、来年の消費税率引上げに対する不安もかなりある(商店街)。

季節通りの温度変化や気象状況が展開するか否かで景況感に影響が生じるのは毎度の話ではあるのだが、高齢者の利用客の増加に伴い、寒暖差が大きくなると来客数が減少するとのコメントは、非常に興味深いものがある。商圏、業種による差異は生じるはずだが、今後同様の傾向がより強くなる可能性は多分にある。

他方、現状・先行き指数動向でも言及しているが、中国経済の後退や、原油・株式市場の低迷、為替市場の円高化に伴い、大きな金額の取引が控えられるだけでなく、普通の消費者の間でも消費マインドにブレーキがかかるようすが見えている。また、消費税率動向も小さからぬウェイトが生じていることも分かる。

今回コメントで中国に言及したのは重複含めて6件。前回の17件よりは大きく減少しているが、多分に原油・株式・為替市場の混迷により注力が当てられている感は強い。「株価」への言及は重複含めて20件と多分に及んでおり、すべてがネガティブな内容となっている。株価に関しては上昇時は他人事、下落時は自らの話との印象を報道界隈では伝えているが、実際には上昇局面であろうと下降局面であろうと、直接株式投資をしていない人も合わせ、世間一般に大きな影響を与えていることが、改めて確認できる次第ではある。

なお消費税率の引上げに関する言及は全部で10件(重複含む)。マイナス金利などの金利動向と合わせ、大型取引の後押しにつながるとの意見もあるが、大よそは消費者心理の足かせになる、マイナス要因として言及されている。



昨夏は8月前半までが猛暑で消費を大きく後押ししたものの、後半からは一気に冷夏的な温度低下・日照時間の低迷にシフトし、その辺りから景況感も足を引っ張られた感がある。株式を運用する個人、企業だけでなく、その他多方面にも心理的影響を与える株価もほぼ同じタイミングで、中国の株価急落をトリガーとして一段下げた形となり、その状態が続いていることから、景気の先行き感に不安を覚える人が増え、それが景気の歩みを引っ張る気配が随所に見て取れる。その後株価は12月までじわりと持ち直し、それに伴い株価下落による心理的なプレッシャーは軽減されつつあった。もっとも特段景気の良い話が耳に入ってくることが無く、いわゆるぬるま湯的な、むしろそれよりも少々温度が低いものの、今更風呂から出るわけにもいかず仕方なく入っているような状況の感は否めなかった。

1月に入ってからは原油価格の低迷に伴う関連企業の業績悪化懸念、そして中国経済・株式市場の急落による世界規模の市場下落により、景況感は大きな減退を経験している。今回月の各コメントからも、極端な表現をすれば「原油と中国、さらには為替で身動きが取れない体制」「そこに消費税率引上げ予定という、習字の筆によるくすぐりを受けている状態」と記せる。

多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内においてはそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれるところではある。数か月先のことではなく、数年、数十年先を見越した、長期に渡る展望が期待できる政策、例えば社会リソースの若年層に対する重点配置といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。


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