業界規模は3兆2522億円・お菓子の売れゆき具合をグラフ化してみる(2015年)

2015/04/01 14:00

羊かんやおまんじゅうのような伝統的な和菓子、ロールケーキやシュークリームのような洋菓子、さらにはガムやチョコレート、アイスクリームにいたるまで、多種多様なお菓子は食生活にメリハリを与え、心を和ませ、憩いのひとときを満喫させてくれる。それらお菓子を開発・生産・販売するお菓子業界の動向を記した年次レポートとして、全国菓子卸商業組合連合会と全日本菓子協会が共同で設立したe-お菓子ねっと製販代表会議運営による「e-お菓子ねっと」では2015年3月30日に、2014年分の菓子統計データを公開した。今回はその値を元に、2014年のお菓子業界の動向を精査する(【発表リリース一覧ページ】)。

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2014年の概況


元来お菓子は景気動向の影響をあまり受けない商品として知られている。単価が安く手頃に購入できる趣向品であること、創意工夫がしやすく、時節に合わせた新商品を臨機応変に創れること、多種多様な他商品との組み合わせが行えることなどがその理由。昨今ではコンビニによる独自ブランドでのデザート系菓子の展開、シニア層のコンビニ・スーパーの多用化に伴うそれら店舗での積極的な和菓子をはじめとした懐かし系のお菓子の導入、さらには健康を意識した素材や製法に通常品よりも配慮したことをうたった健康志向的なお菓子など、色々な業界内の動きも確認できる。一方、世界全体で見れば景気が良くなるほど甘味の材料とされる砂糖の消費量が多くなる傾向もあり、好景気ほどさらに売り上げを伸ばせることには違いない。

2014年に限れば、消費税率の引上げで消費性向が足を引っ張られたことに加え、輸入原材料の価格漸増による商品の割高感も懸念材料となったものの、景況感の回復や各種キャンペーンの実施、新分野における積極的な商品開発による展開が功を奏し、売上は前年を上回る形となった。もっとも商品ジャンルにより勢いはまちまちで、大きな伸びを示した種類もあれば、低迷を継続しているものもある。

今件リリースで取り上げられている、お菓子の品目区分の具体例は次の通り。

↑ お菓子区分の中身

目立つ動向を示したいくつかの項目について、概要を確認すると次の通りとなる。

・チョコレート
消費税率引き上げや原材料価格の上昇に伴う割高感の影響が懸念された一方、健康ブームの流れに乗る形でチョコレートの主要原材料であるカカオの効果に後押しされ売上アップ。特にビター系、ダークチョコレートの需要が大きく伸びた。

・チューインガム
歯の健康へスポットライトが当たった関係でミント系は復調。しかしそれ以外は概して厳しく、中期的な市場縮小傾向に歯止めがかからない。特に若年層の購入率減退が痛手。

・せんべい(小麦粉)
消費税率引上げ後の価格上昇、原材料費のアップが痛手となり、生産量、金額ともに前年割れ。一方で消費者の間に地産地消の傾向が強くなり、原材料で国内産をうたった商品が伸びている。

・ビスケット
季節限定商品の導入、個包装の積極展開による工夫、さらには夏の低温が幸いし、例年を上回る売り上げを示した。種類別ではハードビスケットが下げ止まり、ソフトビスケットはほぼ横ばい、半生は増加。震災後に防災用が注目されていた乾パンの動向は特に無し。

・和生菓子
前半期は消費税率引上げまでは堅調、その後軟調、秋以降は再び持ち直し、年ベースでは前年比でプラスに落ち着いた。贈答品、法人需要は軟調、コンビニなどの和菓子は地方都市を中心に堅調。

・洋生菓子
コンビニやスーパーなどのフルタイム販売品、インターネット通販が堅調さを示す一方で、しわ寄せを受ける形で百貨店での売り上げは軟調。消費税率引き上げ後は軟調さが続き、さらに原材料費の高騰が採算面で大きく足を引っ張った。その上12月は大雪と総選挙がマイナス要因となる。

・スナック菓子
価格競争は継続。じゃが芋の確保量問題も解決し、さらに新商品の展開でポテトチップスやコーン系のスナックは伸びたが、ファブリケートポテト(スライスではなく一度潰して成型しなおす形のポテトチップス)は軟調。

2011年の震災をきっかけに生じた防災・備蓄用菓子への特別需要は2013年で終息を迎え、その影はもはやない。消費者の健康志向の強い意志、原材料価格の上昇、冷夏で夏の消費減退が最小限に抑えられるなど、さまざまな要因がお菓子の売上を左右していることが分かる。

またそれとは別に、ガムの中期的な減退傾向が目に留まる。特に若年層に対するアピール不足が懸念されている。一応2014年は「減少率は改善傾向」と説明されているが、これは見方を変えれば減少していることに違いは無い実態を意味する。業界側でも多種多様な新商品の開発を続け、奇抜さ、目新しさで新たなユーザーの開拓を模索しているが、消費者側のハートをつかむまでには至っていない。今年のミント系商品の堅調さのような適切な開発戦略が、全体として行えれば事態の改善も図れるのだろうが。

グラフで分かるお菓子業界


さて肝心の分野別の売り上げ高だが、各区分別ではチョコレートがトップで約4860億円。次いで和生菓子が約4700億円。スナック菓子などが続き、合計は3兆2522億円(小売りベース)。前年比765億円増(プラス2.4%)。

↑ 菓子小売金額の構成比率(2009年-2014年)
↑ 菓子小売金額の構成比率(2009年-2014年)

↑ 菓子小売金額(2009-2014年、億円)
↑ 菓子小売金額(2009-2014年、億円)

昨今の高齢化を受けて米菓のシェア・売上高は伸びを示している。一方で意外にも和生菓子の伸び悩みが目立つ。また洋系の菓子ではチョコレートが堅調、スナックも順調だが、一方でビスケットやチューイングガムが厳しい。特にチューイングガムは元々小さめだったシェアがさらに縮小している。

意外といえばコンビニの独自ブランドによる積極展開で一見順調そうに見える洋生菓子も、上記概要にある通り2014年は下落。この6年ほどの間は継続的に売り上げが落ちていることが確認できる。もっともその分チョコレートが伸びていることから、消費者サイドとしては広い範囲での洋菓子の中で、洋生菓子からチョコレートへのシフトが起きているだけなのかもしれない。

直近となる2014年に限った動きを見ると、大よそ昨年までの流れを踏襲しているように見えるが、チョコレートの大きな飛躍とビスケットのトレンド転換の兆しが確認できる。チョコレートは上記の通り健康ブームによるところが大きく、また冷夏で夏の需要の落ち具合が最小限に留まったのが幸いしたのだろう。ビスケットも前年比で増加しているが、チョコ同様に冷夏の賜物、加えて個包装化という需要に応えた商品展開が功を奏している。さらに半生製品などの商品が伸びていることから、シニア層への受けも一因と考えられる。

最後は売上高の前年比。グラフが煩雑化しないよう、3年分に限定した。項目別のすう勢が良くわかるグラフに仕上がっている。

↑ 菓子小売金額前年比(2012-2014年)
↑ 菓子小売金額前年比(2012-2014年)

スナック菓子や米菓、チョコレートは概して堅調、和生菓子やビスケットは回復の動き、飴菓子は大きく復調(のど飴やグミが好調となり全体をけん引した)、チューインガムやせんべい、油菓子は軟調だが2014年は下げ幅が縮小しているのが分かる。状況が前年比で悪化したのは洋生菓子ぐらい。もっともチューイングガムは主要項目区分別ではもっとも下げ率が大きく、年ベースで2011年以降は毎年5%以上の前年比マイナスを計上しており、抜本的な対策が求められる状態となっている。



冒頭でも触れているが甘味系業界は不景気でもさほど影響を受けず、好景気にはさらなるセールスが見込める、手堅い分野として知られている。創意工夫を凝らすことでターゲットを幅広く設定できるのがポイントとなる。

他方、コンビニの浸透や高齢化社会の到来による消費層の変化、国内旅行需要の低迷によるお土産品の需要の継続的な減少など、多様な変化が起きている。そして商品区分別のすう勢を見るに、全般的にはやわらか系、すぐに食べられる系統のお菓子が伸び(チョコレート、米菓、スナック菓子)、食べるのに時間を要するタイプの菓子(油菓子、チューイングガム、飴菓子)が敬遠される動きがあるようにも見える。「スナック感覚」との言葉ではないが、お手軽感がお菓子全体のトレンドの一環として浸透しているのだろうか。

現在進行中の2015年においては、2013年に食品業界全体を大きく揺るがせることとなった食品原材料偽装問題、2014年に発覚した中国産の鶏肉問題、さらには異物混入問題など、相次ぐ食品の質の面で消費者に懸念を与える事件が生じていることに加え、シニア層が積極的に消費層として市場に影響を及ぼすようになったこともあり、健康志向の商品への需要がこれまで以上に高まりを見せている。また少人数世帯化や「チョイ食べ」需要の拡大に伴い、少量パッケージ化や個別包装商品の需要も増加している。同じ商品で需要に合わせた一工夫を凝らすことで、大きな飛躍を見せた商品も少なくない。

コンビニでコーヒーの供給が増えたことを受け、コーヒーと相性の良い商品の開発が相次ぎ、需要もそれに合わせて拡大しているのも注目に値する。個性を出すために次々と新しい商品が店頭に並び、それが消費者の需要に刺激を与える好要因ともなっている。

お菓子業界のかじ取りの上で、大きな影響を及ぼすであろう要因が次々と他業界、関連業界で生じている。2015年は2014年以上に、多様な変化が見られるに違いない。


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