EU最大の懸念事項は経済や失業、公的債務よりも移民問題、38%が懸念を表明

2015/08/22 15:00

欧州連合欧州委員会(European Commission)は2015年7月31日、同会が毎年2回定点観測的に行っているEU全体における世論調査「Standard Eurobarometer」の最新版となる第83回分を発表した。それによると、現在EU全体の最大の懸念として上げられたのは移民問題で、全体の38%が懸念を表明していた。経済状態、失業問題、公的債務がそれに続いている。移民問題の懸念の高まりは昨今急激な上昇を示しており、EU全体の課題として市民ベースでも大きな注目を集めていることが改めて実証される形となった(【発表リリース:Spring 2015 Standard Eurobarometer : Citizens see immigration as top challenge for EU to tackle】)。

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今調査の直近分は2015年5月16日から27日にかけて直接面談のインタビュー方式でEU加盟国及び候補国内において行われたもので、回答者数は合計で3万1868人。

今年に入ってから外電でたびたび伝えられている通り、欧州諸国の経済問題が最悪期を脱したように見えたことや、中東情勢問題の悪化を受け、EU諸国への移民問題が大きな社会問題化している。船を使い、あるいは陸続きで、より経済的に安定していると思われるドイツ、さらには英仏海峡トンネルを越えてイギリスに向かう人たちは後を絶たず、海峡トンネルでは警備の強化が成されるほど。


↑ 違法難民の侵入阻止のフェンス設置を伝える報道。【直接リンクはこちら:英仏海峡トンネル、移民阻止のフェンス設置】


↑ 移民の移動手段として自転車の特需が起きていることを伝える報道。【直接リンクはこちら:自転車でEU目指す難民たち、マケドニアで特需】

「Standard Eurobarometer」は毎年2回、5月と11月に行われており、今回が83回目となる。今回の調査結果では移民と経済問題、失業に係わる大きな変化が生じたことで、日本の報道でも何度か伝えられているが、状況としては次の通り。調査対象母集団に対し、EU全体における大きな懸念事項は何かについて、選択肢の中から二つ選んでもらった結果が次のグラフ。変化が良くわかるように、過去3回分も合わせ都合4回分の動向をまとめている(順位は直近分の回答値順)。

↑ 現在EU全体における大きな懸念事項は(2つ選択)
↑ 現在EU全体における大きな懸念事項は(2つ選択)

回答個数無制限の複数回答では無いため、それぞれの項目の値は多分に相対的な動きを示すことになるが、経済状況や失業、公的債務といった、EU全体で問題視され、世界経済にも大きな影響を及ぼしていた問題への懸念は低下。その他経済関連の値も概して鎮静化、つまり懸念する状況からは外れつつある。インフレ・物価高の値も漸減している。

それに連れ、相対的に、あるいは経済的な復興感に引き寄せられる形なのか、移民問題への懸念が急激に上昇していることが分かる。また同時に、テロ問題への懸念も高まりつつあり、両者の問題の連動性も覚えさせる。単なる犯罪項目にはほとんど変化がないことから、単純な治安の悪化では無く、対外組織、あるいは国際問題的な事案への不安が感じられる。

経済の回復に伴う移民、テロ問題の懸念増加の構造は、国単位の動向でも見て取れる。上記解説の通り、陸続きで経済的に豊かだと思われるドイツやイギリスに渡ろうとする移民の増加は、当事国においては大きな問題となっている。類似設問を回答者自身の国に関して尋ねた結果が次のグラフだが、そのドイツやイギリスでは移民問題がずば抜けて高い値を示している。

↑ 現在回答者自国における大きな懸念事項は(2つ選択)(2015年5月)
↑ 現在回答者自国における大きな懸念事項は(2つ選択)(2015年5月)

他方、EU先進国でも失業率の高さが問題視されているフランスでは失業問題への懸念が大きく、次いで経済状況への不安が高い値を示している。ギリシャでも失業問題がトップ、次いで経済状況と続いているが、政府負債に対する不安も大きい。ただし今調査は5月時点のもので、ここ数か月では陸路経由でドイツなどに向かう移民が、ギリシャを経路地として用いることにより、大きな社会問題となっていることも伝えられており、次回調査ではギリシャの動向も大きな変化を生じる可能性はある。


↑ ギリシャにあふれる移民を伝える報道。【直接リンクはこちら:ギリシャ、移民であふれるコス島に機動隊増派】

先日各報道でも伝えられている通り、EU入りする難民は急激に増加しており、行き先の国とのあつれきの高まりなどで大きな社会問題化している(【7月のEU難民数、また最多更新 「欧州の緊急事態」】)。今後も加速度的な状況が継続するようであれば、EU側でも移民施策の変更が検討される可能性は十分にある。ただしそれはEUそのものの概念の再検討にも抵触することになるため、大きな波紋を呼び起こすことは間違いあるまい。


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