新聞と携帯電話の世帯収入別利用状況をグラフ化してみる(2015年)

2015/12/16 13:00

情報配信を行う媒体の多様化、特にインターネットに関連したデジタル技術の伸張に伴い、紙媒体の相対的価値観が減退し、需要は漸減しつつある。またその媒体に載せるコンテンツを制作する業界内部における経年劣化、金属疲労的な状況も数多く指摘され、結果として価値を下げているとの分析もある。それでは昨今、低年収層においても生活必需品として欠かせないと言われている新聞は、本当に現在必需品足りえる存在なのだろうか。同じようにコンテンツを取得するツールとして今や生活必需品的認識の強い携帯電話(従来型携帯電話、スマートフォン双方を意味する。以下同)と合わせ、総務省統計局が2015年2月17日付で発表した、【家計調査報告(家計収支編)における2014年分平均速報結果】の各種データを基に、状況を見ていくことにする。

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グラフ生成に用いるデータの取得方法などは、これまでの「家計調査報告(家計収支編)」関連の記事にある通り。また「購入世帯数」「世帯購入頻度」などの言葉の概念は、先行記事【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編)・総世帯版)】にて解説しているので、そちらを参照のこと。

次に示すのは「二人以上世帯全体」(勤労者世帯以外に、就業者が世帯に居ない年金生活者世帯(年金も収入に含まれるので無収入では無い)も含む)における、世帯別新聞購読率・移動電話通信料支払い率の、世帯年収別推移。合わせて購読・支払い世帯における平均支払額も算出した。なお今件では「新聞購読料支払い世帯は月極での購入」「移動電話通信料を支払う世帯は携帯電話を所有している」前提で計算している。また単身世帯はデータが存在しないので精査は不可能。

↑ 世帯収入別新聞購読・移動電話通信料支払い率(2014年、二人以上世帯全体)
↑ 世帯収入別新聞購読・移動電話通信料支払い率(2014年、二人以上世帯全体)

↑ 世帯収入別新聞購読・移動電話通信料支払い額(2014年、月額、二人以上世帯全体、購読・支払い世帯限定、円)
↑ 世帯収入別新聞購読・移動電話通信料支払い額(2014年、月額、二人以上世帯全体、購読・支払い世帯限定、円)

まず実質的な料金の支払い率、実質的な普及率だが、新聞はむしろ低収入層の方が普及率が高い。100%を超えている層は、1世帯当たり1部以上か、月極以外にも単発で周期的に購入している世帯があることになる(実際【月極で新聞を取ってる人はどれぐらいいるのだろうか】にもある通り、数%だが複数紙を購読している世帯は存在する)。他方、携帯電話は低年収ほど低所有率ではあるが、その差は200万円未満を除けば20%ポイント足らずでしかない。

利用世帯の負担費用は、新聞ではほぼ一定。1紙あたりの月額料金にさほど差が無いこと、多くの購入世帯では1紙の購読であることを考えれば当然の話ではある。他方携帯電話は利用の仕方で費用が大きく変わる、子供のあるなしなど世帯構成などによって世帯内所有台数が変わる、さらに利用している携帯電話の種類でも料金に大きな差が出ることから、高年収層ほど額が上昇していく。

この結果のみを見ると、「新聞は低年収層においてはコンテンツ、情報取得のために欠かせない存在」との話も間違っていないように見える。しかし「二人以上世帯」には勤労者世帯以外に年金生活者世帯も多分に含まれていること、年金生活者は世帯年収こそ低いものの、生活費の少なからずを資産の切り崩しで充当している実態から、実生活様式と額面上の年収との間には、勤労者世帯と比べて差異が大きく出ることを考える必要がある。

↑ 家計収支の構成(65歳以上・単身・無職・男性)(2014年)(円)(一か月)。
↑ 家計収支の構成(65歳以上・単身・無職・男性)(2014年)(円)(一か月)。【年金暮らしをしているお年寄りのお財布事情を詳しくグラフ化してみる】から。上段の「実収入+不足分」の不足分が資産からの切り崩しとなるが、これは収入としては計上されない。

そこで実質的な年金生活者世帯を除外できる、勤労者世帯に限り、上記グラフを再構築したのが次の図。

↑ 世帯収入別新聞購読・移動電話通信料支払い率(2014年、二人以上世帯のうち勤労者世帯)
↑ 世帯収入別新聞購読・移動電話通信料支払い率(2014年、二人以上世帯のうち勤労者世帯)

↑ 世帯収入別新聞購読・移動電話通信料支払い額(2014年、月額、二人以上世帯のうち勤労者世帯、購読・支払い世帯限定、円)
↑ 世帯収入別新聞購読・移動電話通信料支払い額(2014年、月額、二人以上世帯のうち勤労者世帯、購読・支払い世帯限定、円)

利用者世帯の支出額動向はさほど変わりはなく、新聞は一定、携帯電話は高年収ほど上昇していく。利用世帯における年収の仕切り分けでの利用性向は、勤労者世帯に限ってもあまり変わりがない。他方普及率は一部イレギュラーが生じているものの、新聞は多分に高年収世帯ほど購読している、そして携帯電話は世帯年収による差異があまり出ていない。

つまり現役世代に限れば「低年収層における生活必需品」は、新聞と携帯電話の二択ならば新聞よりもむしろ携帯電話であり、新聞は優先順位としては低いことが推定できる。そして逆算すれば、新聞を「低年収層における生活必需品」的な立ち位置に押し上げているのは、二人以上世帯においては非勤労者世帯、大よそ高齢年金生活者世帯が該当していることとなる(若年層では年金生活者は存在しえない)。

実際、世帯主の年齢階層別で仕切り直すと、まさにその通りの結果が出る。

↑ 世帯収入別新聞購読・移動電話通信料支払い率(2014年、二人以上世帯全体、世帯主年齢階層別)
↑ 世帯収入別新聞購読・移動電話通信料支払い率(2014年、二人以上世帯全体、世帯主年齢階層別)

↑ 世帯収入別新聞購読・移動電話通信料支払い額(2014年、月額、二人以上世帯全体、購読・支払い世帯限定、円)(世帯主年齢階層別)
↑ 世帯収入別新聞購読・移動電話通信料支払い額(2014年、月額、二人以上世帯全体、購読・支払い世帯限定、円)(世帯主年齢階層別)

世帯主の年齢と共に新聞普及率は上昇していく。他方、携帯電話は70歳以上でやや下がるが、60代までは8割以上をキープしている。広範囲の世帯に普及浸透しているか否かの観点では、はるかに携帯電話の方が上となる。

なお高齢世帯で携帯電話の利用者世帯における利用料金が大きく下がっている。これはスマートフォンでは無く、利用料金が安上がりで済む従来型携帯電話を利用している人が多いのが要因。これは【携帯電話の普及率現状をグラフ化してみる】など他の複数調査からも明らかになっている。

↑ スマートフォン世帯主年齢階層別普及率(2015年3月末)(再録)
↑ スマートフォン世帯主年齢階層別普及率(2015年3月末)(再録)

↑ 従来型携帯電話世帯主年齢階層別普及率(2015年3月末)(再録)
↑ 従来型携帯電話世帯主年齢階層別普及率(2015年3月末)(再録)

もとより同じ「コンテンツ、情報を取得するツール」的立場にある新聞と携帯電話だが、厳密には前者がコンテンツそのものを創生する業界、企業をも多分に包括しているのに対し、携帯電話はあくまでも純粋なインフラであり、そのインフラに載る形で配信されるコンテンツまでは今件のような普及率関連の話では内包されない。同一次元で比較するのは、多少無理がある。

とはいえ、金銭面やメディア論の上で、両者がよく比較されるのも事実。特に収入面で難儀している人において、情報伝達のためのツールは何が普及浸透しているのか、考えさせられる話には違いない。


■関連記事:
【月極で新聞を取ってる人はどれぐらいいるのだろうか】
【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(拡大版)】
【複数データを基にした携帯電話の普及率推移】

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