エンゲル係数の推移をグラフ化してみる(家計調査報告(家計収支編))(2015年)

2015/03/11 15:00

世帯単位における裕福さ、生活レベルの度合いを示す指標の一つとして「エンゲル係数」なるものがある。社会構造の変化と共に、生活内容実態との連動性は薄れつつあるが、今なお良く使われている値の一つには違いない。今回は金銭面や商品・サービス購入頻度の面から人々の生活状況を推し量れる、総務省統計局が2015年2月17日にデータ更新(2014年・年次分反映)を行った【家計調査(家計収支編)調査結果】を元に、この「エンゲル係数の推移」を確認していくことにする。

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エンゲル係数の定義と今世紀の推移


エンゲル係数」とは「消費支出」に占める「食料品」の割合を意味する。具体的にこれらの支出の関係を示すと

↑ エンゲル係数

となる。

「エンゲル係数」そのものはドイツの社会統計学者エルンスト・エンゲル(Ernst Engel)が提唱した指数で、「家計の消費支出に占める飲食費割合が高いほど生活水準は低い」との説に基づいている。よほどの富裕層(そしてそれらはごく少数)でない限り、食費の額に大きな違いは出ず(ただし今家計調査でも明らかな通り、差額が生じるのもまた事実)、一方で食費そのものはどの家庭でも必ず発生する。従って、全体の支出に占める比率は、消費支出そのものが大きくなるほど低くなる・食費以外の項目に割り当てられる額が大きくなるとの考え方。

現在では商品価格の水準や生活様式が同じもの同士でないと比較にならない、農村部の住民は自前で主食や野菜を自給出来る(割合が高い)ので必然的にエンゲル係数が低くなる、さらには住居費も合わせて考えるべきだとの意見もあり(住居費まで合わせると、賃貸か自前の住宅かによる違いの考察、住宅ローンはどのような判断をすべきかなど、問題は山積される)、以前ほど重要視されてはいない。しかしそれでも一定の参考値として使える値であることもまた事実。

そのエンゲル係数だが、二人以上世帯に限定した推移が次のグラフ。定義に従えば生活が苦しくなるほど上昇する傾向を見せるが、この10年あまりでは2005年を底値に少しずつ値を積み増している。

↑ エンゲル係数の推移(二人以上の世帯)(-2014年)
↑ エンゲル係数の推移(二人以上の世帯)(-2014年)

縦軸の区切りが0.2ポイントと小さめなことから、2-3年程度の動きでは誤差の範囲とも判断できる。しかしこの10年強の動きを見る限りでは、動きそのものは小さいものの、確実に上昇していることが認識できる。これは詳しくは後述するが、エンゲル係数本来の定義に従う通り「生活の苦境化」が生じていることも一因だが、むしろそれ以上に、エンゲル係数が元々高くならざるを得ない高齢層の比率が増加しているのが大きな要因である。

世帯主の世代別に見ていこう


これを世帯主の世代別に仕切り直したのが次のグラフ。

↑ 世帯主の年齢階級別エンゲル係数の推移(二人以上の世帯)(世帯主世代別)(-2014年)
↑ 世帯主の年齢階級別エンゲル係数の推移(二人以上の世帯)(世帯主世代別)(-2014年)

元々エンゲル係数は高年齢世代ほど高い傾向にある。中堅世代の子持ち世帯は子供への出費が(学費や子供の遊興費、その他住居関連費の増大など、食費以上にそれ以外の負担が大きい)増え、消費支出も大きい。一方高年齢世代は年金生活者が多数を占めることから、消費支出が小さく、当然食費が占める割合も大きくなるため。青系統色(=シニア層)の折れ線グラフの高位置がそれを表している。

各世代動向を見ると、全体値に近い動きではあるが、2010年から2011年の大きな上昇(≒生活の悪化)を別にすると、30代以上はほぼ横ばい、むしろ減少する局面もあったことが分かる。一方30歳未満に限れば2008年以降2011年まで一貫して上昇しており、この10年間でほぼ2ポイントほどの上乗せが確認できた。

中期的な流れで見ると、高齢層(60代以上)は漸増、30歳未満はややぶれが大きいものの50代以下は概して横ばいで推移しているのが分かる。ここ5年ほどの間は40代がいくぶん上昇気味なのが気になるが、それ以前ではむしろ低下していたことから、中期的には23%を軸とした安定感の中にあると見ても良い。

ではなぜ全体としてのエンゲル係数は漸増を続けているのか。それは2つの要因「高齢層のエンゲル係数漸増」「高齢層数の全体比の増加」による。他の世代が横ばいでも高齢層のエンゲル係数が増加すれば、全体値は底上げされる。さらに高齢層世帯が世帯全体に占める割合が増加すれば、与える影響も大きくなる。全体的にエンゲル係数が増加しているのなら、すべての世代で漸増しなければならないはずだが、実際には高齢層のみが増加している実態をみれば、その理屈は容易に理解できるはずだ。

今後高齢世帯それぞれのエンゲル係数が増加するか否かは未知数だが、少なくとも高齢世帯そのものの増加、全世帯に占める割合は増加するのは確実なことから、全体値としてのエンゲル係数も漸増していくものと考えられる。社会全体を眺める上では、その構成比を底上げする高齢世帯の増加に伴う係数増加には留意すべきだが、同時に世代間の状況の違いが大きな要因であることも同時に知っておくべきだろう。



上記に有る通り昨今では、社会指標におけるエンゲル係数の確からしさはあまり精度の高いものでは無い。それでも有益なものとして現在でも使われている。一部で語られている「高齢者は若年層よりも良い暮らしをしている」という文言とは反する結果…エンゲル係数は概してシニア層の方が高い…を直視し、現状を示す資料として、覚えておかねばなるまい。


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