リーマンショック直後の水準にほぼ復帰、しかし中身は…4マスへの業種別広告費の「5年間の」推移(2015年)

2015/02/26 14:00

電通が2015年2月24日に発表した、日本の広告業界の動向を記した報告書【「2014年 日本の広告費」は6兆1,522億円、前年比102.9%】を基に、いくつかの切り口から精査を行い、広告業界の動向を垣間見ている。今回は従来型大手4メディア「テレビ」「ラジオ」「新聞」「雑誌」における、業種別広告費の5年前と直近(2014年)との比較をチェックする。業種毎の主要媒体に対する中期ベースでのアプローチの変化を推し量ることができよう。

スポンサードリンク


5年間の推移を額面比較


2014年における媒体別広告費前年比は次の通り。今回取扱う4媒体では「新聞」のみが前年比マイナスで、後はプラス(雑誌は表記上はプラマイゼロだが、額面の上ではわずかにプラスを示している)。

↑ 2014年媒体別広告費前年比(再録)
↑ 2014年媒体別広告費前年比(再録)

それでは1年では無く5年を経た変化はどのようなものだろうか。それが今回の記事の主旨。

区切りを「5年」にしたのには理由がある。普通ならば区切りが良いと考えるのは10年単位。実際10年前のデータは報告書(のバックナンバー)から確認できるものの、広告費の区分などの変更が行われているため、今回検証対象となる4大従来型メディアの業種別広告費では2006年以降のデータにならないと、直近までの連続性が無い。2014年の10年前となると2004年の値との比較になるが、この「区分変更」をまたいでしまうため、正しい比較が出来なくなってしまう。そこで半分の5年前との比較とした。2016年分から、つまり次々年発表分からは、比較対象のデータとして2006年分の(区分変更後の)値が使えるため、それ以降は10年前との比較で記事展開を行うことにする。

今報告書には「テレビ」「雑誌」「新聞」「ラジオ」に対する、21に区分した広告主業種別の広告費の推移が掲載されている。2014年と2009年における値を抽出し、整理した上で並べてグラフ化したのが次の図。

↑ 業種別広告費(4大従来型メディア全体、2009年と2014年)(億円)
↑ 業種別広告費(4大従来型メディア全体、2009年と2014年)(億円)

単純な総額(4大従来型メディア限定)では2009年が2兆8282億円、2014年が2兆8176億円とほぼ同額。増加した業種は9つと半数近く。今回比較対象となる2009年は、金融危機の影響を受け、さらにリーマンショックが発生した次の年であり、全体では大きな広告費の減退が発生している。リーマンショックから5年でどこまで広告投資が回復したか、業種別の動向を推し量れる形となっている。

5年間の間にはリーマンショックからの回復基調、政権交代とその繰り戻し、超絶円高不況、東日本大地震・震災など、多数の経済に係わる事件・事象などが起きている。また広告関連に深い影響を与える変化としては、スマートフォンの急速な普及をはじめとしたインターネットの普及に伴うメディアにおけるパワーバランスの変化、震災以降における節電思考の高まり、そして団塊世代の高齢化突入(2014年まで)などが挙げられる。

金額面でもっとも増加したのは「情報・通信」の約575億円。具体的には「コンピュータ・関連品、コンピュータソフト、携帯電話機、携帯情報端末、電話サービス、通信サービス・インターネット、 ウェブコンテンツ、モバイルコンテンツ、放送など」が該当し、インターネット、スマートフォンの浸透普及においてもっとも恩恵を受けそうな、そして競争が激しい業種である。それゆえに市場規模の大きさに加え、成長性も高い結果が出た次第。

次いで大きい額面上の伸びを示したのは「自動車・関連品」。金融不況時は大きく売り上げを減らし、さらに円高不況に伴い輸出も伸び悩み、自動車関連業界は大きな低迷期にあった。それと、回復期の現状との比較であることから、広告出稿が底上げされているのも当然といえる。テレビCMの出稿に限っても(【定期更新記事:関東民放テレビCM動向(ゼータ・ブリッジ)】)、ここ1、2年の間に新車のCMが増えていることを実感する人は多いはずだ。

他方、額面を大きく減らした筆頭業種は「趣味・スポーツ用品」。約479億円の減少。具体的には「趣味用品、ゲーム機・ソフト、音声・映像ソフト、園芸用品、ペットフード、パチンコ・パチスロ機、スポーツ用品など」で占められ、2014年に限れば解説文には「ゲームソフト、オーディオソフトなどが(大きく)減少」と記されている。

変化の度合いを比率で見ると、そして注目の3業種の推移


直上のグラフは額面の推移が把握できるもの。これを金額では無く、5年経過における増減比率で見ると、個々の業種における「4大従来型メディアに対する広告費」のさじ加減の変化が見えてくる。

↑ 業種別広告費(4大従来型メディア全体、2009年から2014年への変移)
↑ 業種別広告費(4大従来型メディア全体、2009年から2014年への変移)

4大従来型メディアに限れば広告費総額は5年間でほぼ変わらずの状況にまで回復したが(2009年以降も下げ基調が続いていた。回復に向かいだしたのは2012年から)、その出稿元の視点では大きな変化を遂げている。

大きく増加したのは「ファッション・アクセサリー」「自動車・関連品」「家庭用品」「情報・通信」の4業種。「情報・通信」は業界そのものが数少ない成長分野であるのに加え、テレビなどでは従来型メディアとの相性が良いことから、大きな伸びを示す形となった。「自動車・関連品」は上記の通りだが、他の「ファッション・アクセサリー」「家庭用品」も合わせ、景況感の回復ぶりを示す動きと言える。

他方「エネルギー・素材・機械」などのように業界そのものが不調なもの、「家電・AV機器」のようにインターネット広告をはじめとした4大従来型メディア以外との相性が良いものなどは下げ幅が大きい。また「趣味・スポーツ用品」は直上にある通り2014年に限れば、ゲームソフトやオーディオソフトに大きく足を引っ張られたと説明されているが、これもまたインターネット(通販)との親和性が大きいのが要因。さらに周辺環境から見るに、中長期にはむしろパチンコ・パチスロ機の減退によるものの影響が大きいと思われる(2011年・2012年には減少主要因として具体的に名前も出ている)。

下げ方が気になる業種を3つほど抽出し、2006年以降の動向を記したが、金融危機・リーマンショック後に大きな減退を示していること、「趣味・スポーツ用品」がそれ以降も継続的な減少を示している様子が分かる。

↑ 広告費推移(一部)(対4大従来型メディア、億円)
↑ 広告費推移(一部)(対4大従来型メディア、億円)

今後この3業種の、特に「趣味・スポーツ用品」の4マスへの広告出稿額の動きには特に留意をした方がよさそうだ。残念ながら「日本の広告費」では4大従来型媒体以外の業種別出稿額推移は公開されていないので、単に4マスから距離を置き他メディアにシフトしているのか、広告費そのものを減らしているかまでは判断が難しいが、該当業界で広告媒体に対する評価の点において、大きな動きが生じていることに違いは無いからだ。



やや蛇足ではあるが、独自の指標を算出しておこう。これは単純に「5年間の総変化額」のうち、どれほどの割合を各業種の増減分で構成したのかを計算したもの。例えば「自動車・関連品」はプラス360.5%と出ているので、5年間の総額変化分においてはプラス360%程の増加貢献をしたことになる(金額では約380億円)。他方「趣味・スポーツ用品」はマイナス451.51%とあるが、総額変化分に対し450%ほど減少方面に足を引っ張ったことになる。

↑ 業種別・2009年-2014年の広告費変移が与えた影響度(4大従来型メディア全体、5年間の総変化額のうち占める割合)
↑ 業種別・2009年-2014年の広告費変移が与えた影響度(4大従来型メディア全体、5年間の総変化額のうち占める割合)

やはり「趣味・スポーツ用品」の下げ幅の大きさが目立つが、他にも「食品」「交通・レジャー」「案内・その他」など、可処分所得と深いかかわりのある、インターネットとの連動性・親和性の高い分野での下げ幅が目に留まる。「情報・通信」「自動車・関連品」などの伸びがどこまで来年以降、4大従来型メディアの広告費全体をけん引することになるのか、注目したいところだ。


■関連記事:
【定期更新記事:景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】
【新設住宅戸数動向(最新)】
【新聞とネットの順位交代…今年一年の従来4マスとインターネットの広告売上動向を振り返ってみる(2013年)】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(上)…4マス+ネット動向編】

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2016 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー