高卒男性は18.34万円…初任給の推移(最新)

2023/04/29 02:44

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2023-0419学校を卒業してアルバイトなどではなく主業としての就業を果たし、初めて手にする給与のことを「初任給」と呼んでいる。人生で一度しか得られないものであり、多くの人にとっては一生忘れえない経験となる。他方、経済的側面ではその当時の景気動向や労働市場、給与相場、物価などを加味した一つの指針として、大いに参考となる値にも違いない。今回は厚生労働省が2023年3月17日付で発表した、賃金関連の情報を調査集積した結果「賃金構造基本統計調査」の最新版となる【令和4年賃金構造基本統計調査(全国)結果の概況】などをもとに、初任給の動向を確認していくことにする。

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学歴・男女別の初任給動向


今回検証する初任給とは、新規学卒者(各種類学校を卒業してそのまま就職した人。いわゆる就職浪人をした人を除く)がその企業で初めて取得した「賃金(所定内給与額)」から通勤手当を除いた額。今回は企業規模の別は精査せず、すべての規模を勘案した平均値を用いる。また「所定内給与額」だが先行記事【フルタイムの平均賃金は31万1800円・前年比でプラス1.4%(最新)】で解説の通り、「基本給に家族手当などを足したもの」、つまり通常はほぼ固定して受け取れる額を意味する。

ただし【令和2年賃金構造基本統計調査の変更に伴う遡及集計について】にある通り2020年分調査から一部調査方法の変更が行われ、初任給については通勤手当を含む額となった(つまり他の労働者同様、所定内給与額そのもの)。2020年分で大きく値が跳ねているのはこれが原因である。

まずは直近分となる2022年における、学歴・男女別の初任給状況。

↑ 新規学卒者の初任給(最終学歴別・男女別、万円)(2022年)
↑ 新規学卒者の初任給(最終学歴別・男女別、万円)(2022年)

これまでいくつかの記事で解説した通り、一般的には女性よりも男性、低学歴よりも高学歴の方が給与は高く、初任給も当然高いものとなる。就業先の違いなどが大きく影響するのだが、初任給の時点ですでに数%の差が生じていることになる。もっともこの初任給は当然就業できた人における平均値で、就職率とはまた別の話。

続いてこれを経年推移で確認していく。賃金構造基本統計調査では現在時系列で1976年以降の初任給が確認できる。ただし大学院・修士課程修了に関しては2005年以降のものとなる。これらの値を男女別にまとめ、グラフとして作成したのが次の図。なお2020年分以降は上記にある通り通勤手当を含む額に変わっていることに注意が必要。

↑ 新規学卒者の初任給(男性、最終学歴別、万円)
↑ 新規学卒者の初任給(男性、最終学歴別、万円)

↑ 新規学卒者の初任給(女性、最終学歴別、万円)
↑ 新規学卒者の初任給(女性、最終学歴別、万円)

男女とも学歴が上になるほど初任給も高く、そして学歴間の額面上の差異にはあまり変化が生じていないことが分かる。それでも1990年代前半、バブル崩壊前後までは全体の額が大きく上昇するのに併せて、差異も開いていった。しかし1990年代後半以降は上昇度合いが非常に緩やかなものとなり、差もほとんど一定の額を維持するようになる。

また、すでに気が付いた人もいるだろうが、これらのグラフの動きは【1950年と比べて8.51倍…過去70年あまりにわたる消費者物価の推移(最新)】で記した、消費者物価指数の動きとよく似ている。

↑ 消費者物価指数(全国、持家の帰属家賃を除く総合、年次、1950年の値を1.00とした時)(2022年分は直近月の値)(再録)
↑ 消費者物価指数(全国、持家の帰属家賃を除く総合、年次、1950年の値を1.00とした時)(2022年分は直近月の値)(再録)

要は初任給は多分に当時の物価に左右されると考えれば道理は通る。

物価動向を加味すると


「初任給は多分に当時の物価に左右される」。そこで物価動向を加味した上で、初任給動向を再精査してみることにする。手法は【40年あまりにわたる学校給食費の推移(最新)】などと同じ。直近の2022年における消費者物価指数をベースとし、過去の各額面を修正していく、いわゆるウェイトバックをかけていく。要は各過去の年において、2022年当時の物価水準ならばどれほどの額だったかを計算した結果である。

↑ 新規学卒者の初任給(男性、消費者物価指数考慮、最終学歴別、万円)
↑ 新規学卒者の初任給(男性、消費者物価指数考慮、最終学歴別、万円)

↑ 新規学卒者の初任給(女性、消費者物価指数考慮、最終学歴別、万円)
↑ 新規学卒者の初任給(女性、消費者物価指数考慮、最終学歴別、万円)

物価が上昇したバブル崩壊前後までにおける上昇度合いは緩やかなものとなり、むしろ1980年代前半は一時的に実質初任給が減少した時期もあるほど。その後はほんのわずかずつではあるが上昇を示している。ただし2011年以降は物価上昇に額の上昇が追い付いていない、実額でも減少した年もあることから、横ばいから下落の動きに転じている。ここ数年で再び上昇に転じたのは幸いだが。

よい機会でもあるので取得可能なもっとも古い値、大学院などは2005年、それ以外は1976年における初任給と、直近の2022年のそれとを消費者物価指数を考慮した上の額で比較する。なお2022年の値は通勤手当を含んだ値になっているので、1976年と比較するには厳密にはその分を割り引く必要がある(通勤手当単独額は今調査では調べられていない)。

↑ 新規学卒者の初任給(消費者物価指数考慮、最終学歴別・男女別、万円)(1976年(大学院-は2005年)と2022年)
↑ 新規学卒者の初任給(消費者物価指数考慮、最終学歴別・男女別、万円)(1976年(大学院-は2005年)と2022年)

大学院などは比較対象となる年が20年足らずしか離れていないのでほとんど差が生じていないが、それ以外は3-5割台もの底上げが生じている(通勤手当分は差し引く必要があるが)。可処分所得となるとまた別の話となるが、少なくとも初任給の上ではそれだけ得られる額が増えていることに違いはない。


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