前年同期比ではプラス誌皆無…少女・女性向けコミック誌部数動向(2015年7月-9月)

2015/11/13 05:00

加速度的に展開される技術革新、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀なくされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は先行解説した少年・男性向け雑誌ばかりでなく、少女・女性向けのにも及んでいる。そこで今回は社団法人日本雑誌協会が2015年11月5日付で発表した「印刷証明付き部数」の最新値(2015年7月から9月分)を用い、「少女・女性向けコミック系の雑誌」の現状を簡単にではあるが確認していく。

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トップは少女向けはちゃお、女性向けはBE・LOVEで変化ナシ


データの取得場所に関する説明、「印刷証明付部数」など各種用語の解説、さらには「印刷証明付き部数」を基にした定期更新記事のバックナンバーは、一連の記事まとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】に掲載している。必要な場合はそちらを参照のこと。

まずは少女向けコミック誌の現状。内容の限りではターゲットとなる読者層は比較的年齢が若い世代、未成年でも高校生ぐらいまでが対象。今四半期も前四半期同様、脱落・追加雑誌は無し。また改名・リニューアル誌も無い。一時期は改名、リニューアル、休刊が相次いだだけに、平穏無事なだけでも嬉しい話には違いない。

↑ 2015年4-6月期と最新データ(2015年7-9月期)による少女向けコミック誌の印刷実績
↑ 2015年4-6月期と最新データ(2015年7-9月期)による少女向けコミック誌の印刷実績

少女向けコミック誌ではトップは「ちゃお」。第2位の「別冊マーガレット」に2.4倍ほどの差をつけており、少年コミック誌の「週刊少年ジャンプ」的な群を抜く部数の多さ。この圧倒的差異をつけた状況は、現在データが取得可能な2008年4月から6月分の値以降継続している。

第2位の「別冊マーガレット」と第3位の「りぼん」は僅差で競っており、何かイレギュラーな動きがあればすぐにでも順位は入れ替わりそう。そしてその後に「花とゆめ」「LaLa」「なかよし」「Sho-Comi」がほぼ同列で続き、その他諸々が後を追いかけている。前四半期と比べパッと見で大規模な変動をしているのは「なかよし」の増加で、これにより「LaLa」との順位が入れ替わっている。またトップの「ちゃお」が大幅に減退し、50万部の大台を割り込む形となった。

続いて女性向けコミック誌。想定読者層は「少女向け」と比べてやや高めの年齢層。内容的には実質的に大人向けが多く、子供にはあまりお勧めできない(いわゆるR指定は無いが、その判断を下されてもおかしくない雑誌、連載も多い)。発行部数は少女向けコミックと比べて少なく、横軸の部数区切りの数字も小さめ。

↑ 2015年4-6月期と最新データ(2015年7-9月期)による女性向けコミック誌の印刷実績
↑ 2015年4-6月期と最新データ(2015年7-9月期)による女性向けコミック誌の印刷実績

トップの「BE・LOVE」(主に30代から40代向けレディースコミック誌)がやや突出、「プチコミック」「YOU」が続く。トップ以外の部数は各誌でそれぞれ類似順位他誌と一定の差異があり、並べるときれいな傾斜が出来ている。ただし第2位と第3位の雑誌はここしばらく激しいつばぜり合いを続けており、前四半期では順位が入れ替わる結果が出ていた。また今四半期では下げ方に差が出たため、第2位から第4位の差が5000部内に収まる形となっているため、今後ちょっとした変化で大きな順位変動が起きる可能性が生じている。

ここ数四半期ほど、順位が大きく変動しているのが「ARIA」。ようやく今四半期では部数・順位共に安定した形となったが、該当ジャンルのコミック誌では一番少ない部数のポジションとなっている。ただ今四半期では大きな伸びが確認できる。これについては次の項で解説する。

少女向け・女性向け双方とも1誌のみ突出…四半期変移から見た直近動向


次に前四半期と直近四半期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに雑誌推移を知ることはできる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2015年7-9月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2015年7-9月期、前期比)

プラス領域は「なかよし」のみで、これは前四半期から系ぞした動き。「別冊フレンド」「別冊花とゆめ」はまったくの同数。「なかよし」は復調の気配もあるが、中長期的な動向を見ると、緩やかな下降が半年前で底を打ったようにも感じられる。一時的なリバウンドの可能性も否定できないが、今後注目したい動きには違いない。

↑ なかよしの部数推移(2015年4-6月期まで)
↑ なかよしの部数推移(2015年4-6月期まで)

前四半期で「健闘を示している」と表した「りぼん」だが、今回は誤差を超えた下げ幅。

↑ りぼんの部数推移(2015年7-9月期まで)
↑ りぼんの部数推移(2015年7-9月期まで)

「りぼん」は「なかよし」「ちゃお」と並び小中学生向けの3大少女向けコミック雑誌。1955年8月に創刊し、すでに半世紀以上の歴史を有している。自分の母親も愛読者だったとの人も多分にいるはず。雑誌不況には勝てず部数を減らしているものの、上記グラフの通り、2011年後半期以降はほぼ20万部がキープされていた。固定ファンの多い執筆陣を抱えている、編集方針の大きな変化が無く読者が安心して定期購読できる、毎号魅力的な付録を提供するため、本誌の内容以外の部分でも読者のハートをつかんで離さない手堅いの施策が結果に表れていると評することができる。それだけに、今回の明らかな下げ方は少々不安を覚えるものがある。

今記事ではある理由で定期的なチェックをしているのが「別冊花とゆめ」。

↑ 別冊花とゆめの部数推移(2015年7-9月期まで)
↑ 別冊花とゆめの部数推移(2015年7-9月期まで)

美内すずえ氏の「ガラスの仮面」の再開に伴い部数の盛り上がりを見せたものの、ほどなく休載。そしてその後現在に至るまで連載再開には至っていない(2012年7月号分が最後の掲載。また単行本の第50巻も今なお「発売延期となりました。申し訳ありませんが、今しばらくお待ちください」の説明がなされている)。部数の下落も安定してきたことではあるし、そろそろ連載再開で掲載誌の発破をかけてほしいものではある。

続いて女性向けコミック。1誌をのぞき、軟調な動き。

↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック)(2015年7-9月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック)(2015年7-9月期、前期比)

プラスを示したのは「ARIA」1誌のみ。「進撃の巨人」のスピンオフ作品「悔いなき選択」の掲載開始後、多くのファンを引き寄せ、部数を大幅に底上げしていた。そして同作品が2014年8月号(6月28日発売)で終了し、単行本も全2巻が発売されたあとは、勢いも失速。グラフにある通り部数を急速に落とし、前四半期ではほぼ特需前の水準にまで戻ってしまった。そのような動きを示した上での、大幅な上昇。部数的には2000部足らずのアップだが、大きな飛躍に違いない。

これは9月28日発売の11月号で「K」のマウスパッドが付録についたことに加え、アイドル育成ゲームのコミカライズ「あんさんぶるスターズ!」、テレビアニメが10月からスタートした「K」の新シリーズが表紙で登場、「遙かなる時空の中で6」のカラーによる連載再開、舞台化が決まった「インフェルノ」「おやすみジャック・ザ・リッパー」、そして単行本分と合わせ応募券を送ると書下ろしの寒中見舞いプレゼントがあるなど、盛り沢山の内容が受けたものと考えられる。

↑ ARIAの部数推移(2015年7-9月期まで)
↑ ARIAの部数推移(2015年7-9月期まで)

今回は地道に底値を上げてほしいものだけに、今後の動向にも大いに注目したい。

下げ基調の雑誌多数…前年同期比


続いて「前年同期比」による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による変移を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2015年7-9月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2015年7-9月期、前年同期比)

プラスの動きを示す雑誌はゼロ。これは前四半期の記事から変わらない。5%超、つまり誤差範囲を超えた下げ幅を示した雑誌は8誌で、前四半期から1誌減っている。これは素直に喜ぶべき。その領域から逃れた「誤差範囲内の下げ幅に留まっている」雑誌は「別冊花とゆめ」「別冊フレンド」「なかよし」「LaLa」「花とゆめ」「別冊マーガレット」の6誌。

逆に10%超の雑誌4誌のうち、前四半期でも同じポジションにあったのは全4誌。つまり2四半期連続して、前年同期比が1割以上の減少を示している。何らかの対策が求められている状況に変わりはない。

続いて女性向けコミック。

↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック誌)(2015年7-9月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック誌)(2015年7-9月期、前年同期比)

「海街diary あの日の青空」の映画化特需で前四半期は盛り上がった「フラワーズ」だが、今四半期では再びいつもの値となる3.3万部に戻り、プラスマイナスゼロ。もっとも同誌はこの2年ほどは横ばいを続けており、他誌と比べれば健闘しているとも表現できる。

「ARIA」は「進撃の巨人」特需の反動によるもの。1/4ほどの減退は驚異的な値に違いない。まさに巨人去りし後。ただし上記の通り、今四半期では新たな活力を見出した雰囲気を覚えており、今後に期待はできる。

それ以上に大きな下げ幅を見せたのが「ザ・デザート」。まさに急降下。

↑ ザ・デザートの部数推移(2015年7-9月期まで)
↑ ザ・デザートの部数推移(2015年7-9月期まで)

同誌は【THEデザートについてのお知らせ】にもある通り、10月10日発売の11月号をもって休刊するとの話が公式に発表され、現時点では既に新しい号は出ておらず、11月号が最新・最終号となる。今回の取扱期間は7月から9月なので全号が対象範囲だが、次四半期では最終号の値が計上されるか、あるいは値そのものが非公開となるかもしれない。ともあれそのような事情もあり、印刷部数も大きく減退せざるを得なくなったのだろう。



「ザ・デザート」の休刊は突然といえば突然で、部数チャートも下降の中にあったのは事実だが、多くの他誌も似たような形状で、部数そのものもさらに低い雑誌は多々あっただけに、やや驚きの感はある。

男性向けの雑誌と比べて女性誌は、通学はともかく通勤状況を見る限りでは、「すき間時間を費やす」目的としての雑誌需要の影響は少ない。少女・女性向けコミック誌は男性向け雑誌以上の減退ぶりを示している。インターネット、特にスマートフォンによる情報のやり取りが、男性よりも女性の方が積極的に行われるのも、女性向けコミック誌の減退が著しい要因の一つ。

むしろそれを利点とし、ネットとのリンクを重視した雑誌展開が、あるいは起死回生の手立てとなるかもしれない。例えば、最近女性にも人気を博している某アプリゲームのような、他業種で女性を上手く取り込んだ市場との連動性を模索するのも一手だろう。


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