「いぬのきもち」「ねこのきもち」は下落が止まらず…諸種雑誌部数動向(2015年7-9月)

2015/11/12 05:00

小規模・個人経営の書店が経営者の高齢化、インターネット通販の普及、高収益を見込める雑誌の売れ行き減退、少子化に伴う顧客減少で閉店した上で他業種店舗、あるいは一般住宅への改装が相次ぎ、それと共に雑誌などの供給場として注目を集めるようになったのがコンビニエンスストア。しかし、雑誌の集客効果は媒体力の下落と共に落ち、コンビニでもその領域と取扱い雑誌数は減っていく。雑誌コーナーは縮小され、その場にはイートインコーナーや電子マネーの販売スタンドなど、時代の需要に合わせた設備が配されていく。大型書店も最近は数的に縮小傾向にあり、雑誌を店舗で手に取り購入する機会は減り、雑誌業界そのものも元気を無くしつつある。このような状況の中で、各分野の雑誌のうち一部ではあるが、複数の分野に関し、社団法人日本雑誌協会が2015年11月5日付で発表した「印刷証明付き部数」の最新値から、雑誌の部数における「前年同期比」を算出し、その推移を確認していくことにする。

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対象雑誌は週刊プレイボーイだけがプラス…一般週刊誌


データの取得場所の解説や「印刷証明付部数」など用語が意味するもの、諸般注意事項、類似記事のバックナンバーは一連の記事をまとめ収録した【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】にある。詳しくはそちらを参照のこと。

まずは一般週刊誌のジャンルに該当する雑誌。写真を中心に記事を展開する、いわゆる写真週刊誌も含む。

↑ 一般週刊誌印刷実績変化率(2015年7-9月、前年同期比)
↑ 一般週刊誌印刷実績変化率(2015年7-9月、前年同期比)

↑ 一般週刊誌印刷証明付き部数(2015年7-9月)(万部)
↑ 一般週刊誌印刷証明付き部数(2015年7-9月)(万部)

今四半期では幸いにも脱落・追加雑誌は無し。また、印刷証明部数を収録している雑誌に限定しているとはいえ、最低でも10万部の印刷部数は確保されている……との言い回しがこれまでの定番ではあったのだが、ついに今四半期でそれが覆される状況が発生してしまった。具体的には「サンデー毎日」が9.8万部と10万部を割り込んでしまっている。また「AERA(アエラ)」も10.2万部で、間もなく同じ「10万部割れ倶楽部」の仲間入りをしそうな状況。もっともそれ以外は相応の需要は「今のところ」維持されていることになる。想定購読層が幅広い一般週刊誌ならではの値といえる。

前期比(前年同期比では無い。内部試算のためグラフは略)でプラスはわずか2誌、「SPA!」と「週刊プレイボーイ」。両者とも誤差領域の5%以内ではあるが、プラス圏には違いない。「SPA!」は昨今幅広い層から注目を集めており、また中長期的な動向でも安定的な部数を維持している、数少ない優良銘柄。

↑ SPA!印刷実績
↑ SPA!印刷実績

話題の作品「孤独のグルメ」(不定期連載)に関しては先日単行本の第二巻が刊行され、またテレビドラマの新シリーズも展開し、根強いファンによって支えられている。連動企画なども合わせ、今後も手堅い部数展開を見せることだろう。

また今回前年同期比・前四半期比共にプラスを計上した「週刊プレイボーイ」だが、その部数動向を確認すると奇遇にも、「SPA!」と非常に良く似たグラフをしている。

↑ 週刊プレイボーイ印刷実績
↑ 週刊プレイボーイ印刷実績

やや値動きが荒い、不安定な部分も見受けられるが、大よその流れは同じ。雑誌の色的にも近しいものがあり、結果論ではあるが共通となる方策により、部数維持を果たしているのかもしれない。

なお今回躍進の動きを示した原因を調べたが、該当しそうな事案は2つ。「キン肉マン超人総選挙2015」の実施、そして8月17日号に付録として登場した「AKB48 神7 “サプライズ”マウスパッド」が挙げられる。どちらか一方のみでは無く、双方ともが部数の底上げに貢献したと考えるのが妥当だろう。

安定のベビモ…育児系など


続いて育児系雑誌。部数の継続チェックの過程でプラスマイナスがあり、現在では8誌の動向を追いかけている。今四半期では追加・削除誌は無し。「ベビモ」がプラス、残りは全誌が前年同期比で誤差領域を超えたマイナス。

↑ 育児系雑誌印刷実績変化率(2015年7-9月、前年同期比)
↑ 育児系雑誌印刷実績変化率(2015年7-9月、前年同期比)

少子化は育児系分野の市場縮小の一要因。しかしその市場動向の多くは単純な子供の人数の減り方をはるかに超えるスピードで縮小している。そして核家族化などを考慮すれば、口頭伝達の教え手となる祖父母が身近に居る育児世帯は数を減らしていき、育児情報の需要は増えることから、切り口次第ではチャンスは多い。もちろん同時にインターネット、中でもスマートフォンやタブレット型端末を利用した主婦層による利用の普及が進んでおり、子育て世代に向けた情報・コミュニティサービスも充実しており、雑誌ならではの提案が求められる。例えば蓄積性、専門性、正確性、実物品の提供などが思い浮かぶ。

今回大きな上昇を示した「ベビモ(Baby-mo)」は季刊誌で、今期間でも1誌のみの発売。

同誌は充実した冊子内容と有益な付録が好評を博しており、毎号大きな話題を集めている。今回号は前号同様に、冊子部分のサイズは同じで付録あり版(Solbyカシャカシャ布絵本)、少々お値打ちとなる付録無し版(とじ込み付録はついている)が同時に発売されている。需要に合わせて購入対象を選べる配慮は、他の雑誌も見習うべき手口に違いない。

「ベビモ」の中期的な動向を確認すると、育児系だけに限らず、雑誌全般でも注目に値する堅調さを示している。確かな支持層を確保し、信頼を得ることで口コミにより新たな読者層が逐次生まれ、さらにそのような状況に甘んじることなく常に改善を模索し、それが功を奏しているように解釈できる。

↑ ベビモ(Baby-mo)印刷実績
↑ ベビモ(Baby-mo)印刷実績

続いて食・料理・レシピ系雑誌。健康志向の強まり、一人暮らし世帯の増加、食の多様化に伴い、レシピや家事テクニックの情報需要は増加しているはずだが、インターネットの普及浸透、料理系をはじめとする家事情報に関するサイトの乱立により、紙媒体の専門誌の立場は思わしくない。

↑ 食・料理・レシピ系雑誌印刷実績変化率(2015年7-9月、前年同期比)
↑ 食・料理・レシピ系雑誌印刷実績変化率(2015年7-9月、前年同期比)

↑ オレンジページ印刷実績
↑ オレンジページ印刷実績

今四半期では全雑誌がマイナス、誤差を超えた大幅マイナスは3誌に及ぶ。「オレンジページ」は堅調な部数推移を示す、今ジャンルでは数少ない雑誌ではあるが、それでもなおマイナスへの振れは防げなかった。

「オレンジページ」と類似の色合いを持つ「レタスクラブ」は大きな減少。同誌は【10月24日発売のレタスクラブには毎年恒例のスヌーピーカレンダーがついてくる】にもある通り、毎年10月発売号にはスヌーピーのカレンダーを添付し、大いに売り上げを伸ばすことで知られている。次四半期でどこまでその勢いが加速化するかを注目したい(もっとも前年同期も同じようにカレンダーで底上げされているので、それ以上のセールスが無ければ前年同期比ではマイナスとなってしまう)。

エリア情報誌は真っ赤な状態が続き、さらに……


エリア情報誌。スマートフォンのGPS機能を活用して地図を確認しながら、さまざまな周辺環境の状況を確認していくのが当たり前となった昨今では、かじ取りが極めて難しい状態。

↑ エリア情報雑誌印刷実績変化率(2015年7-9月、前年同期比)
↑ エリア情報雑誌印刷実績変化率(2015年7-9月、前年同期比)

↑ 「東京ウォーカー」「関西ウォーカー」印刷証明付き部数推移(万部)(2015年7-9月期まで)
↑ 「東京ウォーカー」「関西ウォーカー」印刷証明付き部数推移(万部)(2015年7-9月期まで)

今四半期も前四半期に続き、対象全誌が5%超の下げ。ただし四半期単位の動向を見るに、少なくとも「東京ウォーカー」「関西ウォーカー」は安定した値動きにシフトしており、次四半期以降は前年同期比でも落ち着いた値を計上することになるものと思われる。ようやく底を打った、と判断したいところではあるが。

愛玩動物として筆頭に挙げられる、犬と猫をテーマにしたペット専門誌「いぬのきもち」と「ねこのきもち」。書店での一般売りは無く、通販専用の雑誌。書店のレジでサンプルが配されていることが多く、その表紙からわきあがる愛らしさに惚れた人も多いはず。

↑ 犬猫雑誌印刷実績変化率(2015年7-9月、前年同期比)
↑ 犬猫雑誌印刷実績変化率(2015年7-9月、前年同期比)

↑ 「いぬのきもち」「ねこのきもち」印刷証明付き部数推移(万部)(2015年7-9月期まで)
↑ 「いぬのきもち」「ねこのきもち」印刷証明付き部数推移(万部)(2015年7-9月期まで)

「いぬのきもち」「ねこのきもち」前四半期に続き前年同期比では著しい下げ幅を示している。これは発行元のベネッセにおける大規模な顧客情報漏洩事件の影響と見てまず間違いない。他に犬や猫の専門誌が急に売れなくなる原因は考えにくいからだ。部数動向そのものを見ても、昨年末の下げを底値に今年に入ってからは戻しを見せているようにも見えたが、リバウンド的な動きはすでに終り、再び下降基調に移行している。元々下落傾向のあった両誌だが、先の事案がその状況を加速させる大きな力となったことは疑う余地もない。

また「ねこのきもち」より「いぬのきもち」の方が下落スピードが大きいのも特徴。このままでは両誌の部数が均衡する可能性も出てきた。ペット数そのものも両者の数が競りつつあるとの報道も見受けられることから、両誌部数が並ぶ日もそう遠い日の話ではないのかもしれない。

「妖怪のしわざ」の気配は小学一年・二年生にまだ少し


最後に小学生向けなどの雑誌。「小学●年生」スタイルの雑誌は現在「小学一年生」と「小学二年生」のみ。かつて存在していた「小学三年生」などはすでに休刊となっている。そこで幼稚園向けの雑誌も合わせての精査となる。昨今では少子化に加え、競合的立場にある各種教材も合わせた通信教育的なサービスが好評を博し、厳しい値が出るのが常だったのだが、1年ほど前から状況は大きな変化を見せはじめている。

↑ 「小学●年生」シリーズ+α印刷実績変化率(2015年7-9月、前年同期比)
↑ 「小学●年生」シリーズ+α印刷実績変化率(2015年7-9月、前年同期比)

該当5誌のうち2誌がプラス。「小学一年生」も最小限のマイナス幅に留まっている。この上昇の原因は「妖怪ウォッチ」による引き上げ効果と見て間違いない。「入学準備学習幼稚園」ではドラえもんやピカチュウなども織り交ぜているが、「小学一年生」「小学二年生」では「妖怪ウォッチ」がフルスロットルで活躍中。付録もほぼすべて「妖怪ウォッチ」関連。無論その他にも「アイカツ!」「ポケモン」「プリパラ」など、子供達の間で話題の作品を巧みに取り込んだグッズを提供したことが大いに部数への貢献をしたようだ。



今記事では多様なジャンルを網羅していることもあり、多様な変動が見受けられるが、複数か所で変化を覚えさせる流れが見受けられる。その流れは多種多様だが、中期的な方向性が見える動きなだけに、今後の動向には大いに注目したい。

元々一般誌の多くはすき間時間を埋めるために用いられることが多く、現在はスマートフォンに代表されるモバイル端末に役割を奪われている。駅売店の雑誌コーナーにおいて、言葉通り飛ぶように一般週刊誌が売れた情景は、もはや過去のものとなっている。

今後はそれぞれの雑誌が自らの立ち位置を明確に分析し、得意な分野、手法で読者の需要をつかんで離さず、さらにその手を広範囲に広げる発想が求められよう。


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