「プレジデント」がプレジデント状態…ビジネス・マネー系雑誌部数動向(2015年7月-9月)

2015/11/11 04:00

インターネットに代表される電子情報技術の加速的進歩、機動力に長けたスマートフォンの普及浸透で、ますます時間との戦いが熱いものとなりつつあるビジネス、金融業界。その分野の情報をつかさどる専門誌では、正しさはもちろんだがスピーディな情報展開への需要が天井知らずのものとなる。デジタルとの比較で生じる時間的遅れは紙媒体の致命的な弱点となり、その弱みをくつがえすほどの長所が今の専門誌では求められている。このような状況下の「ビジネス・マネー系専門誌」について、社団法人日本雑誌協会が2015年11月5日付で発表した、第三者による公正な部数動向を記した指標「印刷証明付き部数」から、実情を確認していくことにする。

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「プレジデント」一強時代に変化ナシ


データの取得場所に関する解説、「印刷証明付部数」など各種用語の説明、過去の同一テーマのバックナンバー記事、諸般注意事項は一連の記事の集約ページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で解説している。必要な場合はそちらから確認のこと。

最初に精査するのは、直近にあたる2015年の7-9月期とその前四半期に該当する、2015年4-6月期における印刷実績。

↑ 2015年4-6月期と2015年7-9月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績
↑ 2015年4-6月期と2015年7-9月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷実績

今四半期では追加・脱落雑誌は無し。ただし不定期刊化し、出入りが激しい「¥en SPA!」は今回は顔を見せておらず、部数は未確認。前四半期は登場しグラフに名前を連ねていたが、当然今記事のグラフではその姿は無い。

対象誌の中では「PRESIDENT(プレジデント)」が前四半期から継続する形でトップ。部数上で第2位となる「週刊ダイヤモンド」とは3倍近くもの差をつけている。グラフで概況を確認する限りでは、他誌は多少の増減を示しているが、「プレジデント」は大きな部数増加が把握できる。ただし同誌は昨今では上昇の動きと共に四半期毎の部数変動の幅が大きくなる傾向があるため、今回の動きも予定調和的なもので想定の範囲内。

↑ PRESIDENT印刷証明付き部数(2015年7-9月期まで)
↑ PRESIDENT印刷証明付き部数(2015年7-9月期まで)

2013年後半辺りから始まった上昇傾向に変わりは無い。この流れを維持できれば、あと数年で40万部への大台に手が届きそうである。

プラスが3誌、マイナス4誌…前四半期比較


次に示すのは各誌における、四半期間の印刷証明部数の変移。前四半期の値からどれほどの変化をしたかを算出している。季節による需要動向の変化を無視した値のため、各雑誌の実情とのぶれがあるものの、手身近に各雑誌の状態を知るのには適している。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2015年7-9月、前四半期期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2015年7-9月、前四半期期比)

今四半期ではプラス領域は「プレジデント」「週刊東洋経済」「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」の3誌、ただし誤差領域内(5%内)。一方でマイナス領域は4誌で、誤差を超えた下げ幅は「COURRiER Japon」1誌。「COURRiER Japon」は、かつて期待の新星として上昇機運真っ只中にありながら天井感の後、失速。前四半期ではようやくその失速速度も落ち着いてきたかと思いきや、今四半期では再びその歩みを早歩きにシフトしてしまった。

↑ COURRiER Japon(クーリエ ジャポン)印刷証明付き部数(2015年7-9月期まで)
↑ COURRiER Japon(クーリエ ジャポン)印刷証明付き部数(2015年7-9月期まで)

取得可能な限りの過去の値と比較しても、今四半期の値はもっとも少ない部数。かつての上昇機運に乗る前の平均的な値である6万部を切った現状は、大いに憂いを覚えると共に、早急なてこ入れの必要性を認識すべき状況であることに間違いない。

2誌が伸びて1誌がへこむ前年同期比動向


続いて前年同四半期を算出。こちらは前年の同期の値との比較となることから、季節変動の影響は考えなくてよい。年ベースでの動きなためにやや大雑把とはなるものの、より確証度の高い雑誌の勢いを把握できる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、2015年7-9月、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、2015年7-9月、前年同期比)

誤差領域を超えた伸び率は「THE21」「プレジデント」の2誌、明らかなマイナス基調は「COURRiER Japon」1誌。「プレジデント」は躍進状態にあることが年ベースでも把握できた次第だが、「THE21」は意外といえば意外かもしれない。ただ中長期の動向を見れば分かる通り、下げ基調の中の盛り返しなのが現状であり、むしろこれからこのペースを維持できるかが注目のポイントといえる。

↑ THE21 印刷証明付き部数(2015年7-9月期まで)
↑ THE21 印刷証明付き部数(2015年7-9月期まで)

他方「COURRiER Japon」は年ベースでも大きく下げているが、状況は上記で説明の通り。下げ基調の真っただ中にあり、ブレーキが利かない状態。1年間で3割ほどの部数減少はキツイ状況。



内容の斬新さから注目を集めると共に部数を伸ばしていた「COURRiER Japon」が、編集方針の変更と思われる内容性向の変化と共に失速し、書籍的な保存を半ば目論んだ企画構成の「PRESIDENT」「THE21」が確実に部数を伸ばす動きを示していることから、記事冒頭で触れている「インターネットにスピード感では絶対に太刀打ちできない、紙媒体としての専門誌の勝利の方程式」の一つに、内容の充実性、さらに突き詰めれば蓄積性、保存性の高さの強調がある感は強い。それだからこそ、以前の記事でも指摘しているが、【近藤誠×和田秀樹 「決定版! 頼れる病院、危ない病院"特集...ダークサイドに入り込んだ感じ】のような記事の展開を「PRESIDENT」が行ったのは残念であり、違和感を覚える。一時的な注目、部数上昇は果たせるかもしれないが、中長期的にはそれ以上の何かを失うリスクは多分にある。

元々ビジネス誌の多くは連載物、あるいは特集の記事を再構築して加筆し、書籍として再展開する傾向が強い。コミック誌における雑誌連載と、その集約+描き下ろしによる単行本のような関係ではある。雑誌の掲載時点で捨て置かれる程度のものでは無く、保存して単行本のごとく取り扱ってもらう、価値あるものとしての作りを成すのは、雑誌そのもののセールスを高める点では一つの方法論としてありうる。たとえ月刊誌でもコミック誌を保存している人はあまりいないが、ビジネス誌なら結構多くの人が保全しているのではないだろうか。

「PRESIDENT」「THE21」が見つけた「方程式」も、その考えにのっとったものなのかもしれない。


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