前四半期比では大幅プラス誌もあるが下降トレンドは止まらず…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向(2015年7月-9月)

2015/11/10 05:00

ゲームそのものの楽しさの提供だけでなく、周辺の人達とのコミュニケーションのための媒介・ツールとしての役割も大きい家庭用ゲーム機とその対応ソフトは、スマートフォンの普及浸透とそれ用のゲームアプリの大々的な展開で、大きな転換期の中にある。ただでさえインターネットのインフラ化に伴い速報性が重要視されるゲーム関連をはじめとしたエンタメ情報の提供媒体として、紙媒体の専門誌の立ち位置が危ぶまれる中で、二重の危機誘発要因の到来に違いない。「アプリ系ゲームの紙媒体専門誌を出せばよい」との意見もあるが、あまり上手くいった事例を聞かないのは、情報の更新伝達スピードがマッチしないのが主な要因だろう。まさに四方の行く手をさえぎられた状態のゲームやエンタメ系の専門誌の実情に関して、社団法人日本雑誌協会が2015年11月5日付で発表した、主要定期発刊誌の販売数を「各社の許諾のもと」に「印刷証明付き部数」として示した印刷部数の最新版となる、2015年7月から9月分の値を取得精査し、現状などを把握していくことにする。

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Vジャンはトップに変わりなし…部数現状


データの取得場所の解説や「印刷証明付部数」など用語の内容に関する説明、読む際の諸般注意事項、さらには類似記事のバックナンバー一覧に関しては、一連の記事のまとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明済み。必要な場合はそちらで確認のこと。また記事のカテゴリ名をクリックしてたどれる同一カテゴリの記事一覧からも、印刷証明付き部数関連の記事の過去のものを確認できるので、その手段も併用してほしい。

まずは最新値にあたる2015年の7-9月期分と、そしてその直前四半期にあたる2015年4-6月期における印刷実績をグラフ化し、現状を確認する。

↑ 2015年の4-6月期と2015年7-9月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績
↑ 2015年の4-6月期と2015年7-9月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績

大よそ部数は青よりも赤の方が短めで、減退している様子が分かる。他方、部数が少なめの雑誌で赤の方が長いものがあり、これが前四半期比で大きな上昇率を計上する動きとなっている。もっとも後ほど解説するが、これらの一部はリバウンドでしかなく、その誌に関しては販売業績が改善したことの裏付けとはいいがたい。

今四半期では追加・削減対象誌は無し。前四半期で脱落した「週刊アスキー」と「電撃PlayStation」の復活の兆しも無し。「週刊アスキー」は【週刊アスキー、紙媒体版は5月末で終了し、今後はネットへシフト】で伝えた通り紙媒体としての発行は終了し、今はデジタル媒体上での展開となっているため、当然印刷証明付き部数は存在しない。そのための掲載取りやめと考えれば道理は通る。一方「電撃PlayStation」は現在もなお紙媒体として新刊が定期的に発行されており、休刊や電子化による非公開化では無い。

「電撃PlayStation」と似たような現象は以前「ニュータイプ」でも起きており、それも合わせ発売元であるKADOKAWAの方針の可能性は否定できない。株式公開企業や大型企業による法的な公開義務はないものの、すでに公開していた数字を非公開化する施策は、情報の非開示化との姿勢としては残念と評せざるを得ない。色々な憶測を呼ぶ原因にもなるからだ。

ともあれ現在印刷証明部数を掌握しているゲーム・エンタメ誌は8誌にまで減少している。すでに公開サイトにおけるジャンル区分で「パソコン・コンピュータ誌」は皆無、「ゲーム・アニメ情報誌」でも7誌にまで減少しているのが現状。今後も減少傾向が続くようならば、「ゲーム・エンタメ」の定義で包括しえる、類似カテゴリの雑誌を加えることも検討せねばなるまい。

とはいえ、類似の主旨を持つカテゴリが存在しそうにないのも悩みの種。類似・同一ジャンルの雑誌としては例えば「娘TYPE」が挙げられるが、印刷証明部数は非公開。残念ではある。

プラスは3誌…前四半期との相違確認


次に四半期、つまり直近3か月間で生じた印刷数の変化を求め、状況の確認を行う。季節による変化が配慮されないため、季節変動の影響を受けるが、短期間における部数変化を見極めるには一番の値となる

↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2015年7-9月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2015年7-9月期、前期比)

プラス領域を示したのは「ファミ通DS+Wii」と「声優アニメディア」、「メガミマガジン」の3誌。うち前者2誌は2割前後の猛烈な上昇を計上している。もっとも「ファミ通DS+Wii」は前四半期に大きく下げたことの反動であるのと共に、元々部数が少ないため少数の上下でも比率的には大きく出てしまうのが、今回の大幅上昇の原因。前回から2300部強ほどの増加を示したが、さらに四半期前、つまり半年前と比較すると3000部強のマイナスとなる。

↑ ファミ通DS+Wii印刷実績(部)
↑ ファミ通DS+Wii印刷実績(部)

大きな節目となる1万部割れは幸いにも避けられたが、状況が危機的な場にあることはグラフからも明らか。

他方「声優アニメディア」は部数そのものが少ないのは「ファミ通DS+Wii」と同じだが、前四半期が特段大きな下げを示したわけではなく、また半年前と比べてもプラスのまま。該当期間の発売号を確認するに、8月号の「ラブライブ!」に絡んだミューズ特集が好評を博しており、これが影響した可能性は否定できない。

今ジャンルで最大部数を示している「Vジャンプ」はマイナス1.3%。幾分の下げに留まっているが、中期的な部数動向を見ると、この3、4年ほどの間のボックス圏の中の動きに過ぎない事が分かる。

↑ Vジャンプ印刷実績(部)
↑ Vジャンプ印刷実績(部)

懸念されていた20万部割れは今四半期でも回避できたが、危うい状態にあることに違いは無い。

独自路線、そしてかつては「進撃の巨人」特需で大きく背伸びをした「PASH!」は、その特需の終結と共に失速状態に移行。特需による上昇はその後の反動をも導く、よくあるパターンを形成してしまっている。

↑ PASH!印刷実績(部)
↑ PASH!印刷実績(部)

特需後の雑誌の部数動向は大きく2パターンが見られる。1つは特需時の底上げを堅硬な土台とし、失速しても特需前より上乗せした値を維持し続けるもの。もう1つは特需時の反動による下げに勢いが付き、特需前よりもさらに下降してしまうもの。ここ1年の動向を見るに、「PASH!」は残念ながら後者に属するようだ。

前年同期比はすべてマイナス


続いて前年同期比における動向を算出し、状況確認を行う。年単位の動きのため前四半期推移と比べればロングスパンの値動きの精査となるが、季節変動を気にせず、より正確な雑誌のすう勢を確認できる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)(2015年7-9月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)(2015年7-9月期、前年同期比)

全誌がマイナス領域、誤差範囲である5%を超えた下げ幅にあるのが6誌。「ファミ通DS+Wii」の現状は上記グラフに示した通りだが、それ以外にも「PASH!」「メガミマガジン」「アニメージュ」が2割を超える下げ幅、「アニメディア」が1割超。1年で部数が2割も3割も減る状況がいかに危機的かは、例えば自分のおこづかいなり給料が1年でそれだけ下がる場面を想像すれば、容易に理解はできるはず。

アニメ関連雑誌としてはライバル的な存在、世間一般では「三大アニメ誌」とも呼ばれているとの話も聞く、具体的には「アニメージュ」「アニメディア」「ニュータイプ」の動向。2四半期前から「ニュータイプ」の部数が非公開となったため、残り「アニメージュ」「アニメディア」のみ、データの継続反映をさせた上で、状況の精査を続ける。

「アニメージュ」と「アニメディア」の2誌間で順位変動が起きた後、そのポジションが維持されたまま、3誌とも部数を下げていた。ところが今四半期では「アニメージュ」が大きく下げてしまい、再び順位が逆転、「アニメディア」が「アニメージュ」を上回る形となった。

↑ 三大アニメ誌の印刷実績(部)(2015年7-9月期まで)
↑ 三大アニメ誌の印刷実績(部)(2015年7-9月期まで)

↑ 三大アニメ誌の印刷実績(部)(2015年7-9月期まで)(アニメディア・アニメージュ抜粋)
↑ 三大アニメ誌の印刷実績(部)(2015年7-9月期まで)(アニメディア・アニメージュ抜粋)

直近値では「ニュータイプ」は非公開、「アニメージュ」4万0834部、「アニメディア」4万3700部。各誌とも中期的には漸減傾向なのに変わりはないものの、「アニメージュ」は今四半期で大きな下げが生じてしまう。該当期間の発売号を確認したが、特に軟調となる原因は見当たらず。市場そのものが原因か、それとも内部的な方針転換があったのかもしれない。



前四半期から情報を非公開化し今四半期でもその状態を続けている「電撃PlayStation」だが、実は過去にも一度1年ほどの間、情報を非公開化した経験を有している。

↑ 電撃PlayStation(部)
↑ 電撃PlayStation(部)

公開の法的義務はないものの、非公開化の理由も開示されていない状況は不用意な憶測の火種となる。一応公称部数は21万部とあるが(【AD MediaGuide 電撃PlayStation】)、歴史あるコア雑誌として認知度が高い雑誌で、さまざまな指標となりうるだけに、厳密な情報としての印刷証明部数の開示再開を願いたいところだ。

【CESA、2015年分の国内外家庭用ゲーム産業状況発表】にもある通り、日本国内の家庭用ゲーム機業界の市場は縮小を続けている。冒頭の解説の通り、少なくとも利用者人口は堅調な動向にあるスマートフォンアプリ向けの紙媒体専門誌のアプローチも、情報の公知特性を考慮するとビジネス的には難しい。新しい付加価値の創生、アイディアの想起など、あらゆる手立てを講じて有効策を見出さない限り、今後も低迷は続くことだろう。


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