熱中症による救急搬送者の内情をグラフ化してみる(2015年)

2015/08/23 14:00

当サイトでは夏季に総務省消防庁が定期的に発表している、熱中症を起因とした救急車による搬送者の動向の精査を【週次熱中症搬送状況】などで行っている。しかし今調査結果では搬送者の詳しい状況を推し量るには今一つ情報が不足している。そこで今回は国立環境研究所が定点観測・集計調査を行っている「熱中症患者速報」の最新データとなる2014年度分などを元に、主要地域の熱中症搬送患者の内情を、複数の視点から確認していくことにする(【国立環境研究所 熱中症患者速報】)。

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今調査は19都市・県、具体的には、札幌市、仙台市、さいたま市、千葉市、東京都、横浜市、川崎市、新潟市、静岡市、浜松市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市・高石市、神戸市、広島市、北九州市、福岡市は各消防局、沖縄県は保健医療部薬務疾病対策課の協力を経て、各地域の計23定点医療機関を受診した、熱中症による救急車での搬送患者情報を集計したもの。別記事の消防庁による搬送者データと同様、直接医療機関に足を運んで受診した患者や、熱中症によるものと思われる体調不良を起こしたものの受診しなかった人は含まれていない。集計期間は札幌市と沖縄県は6月から9月、それ以外は5月から9月。

まずは直近となる2014年度における、熱中症による該当地域の搬送者数を男女・世代、そして事案が発生した場所別に仕切り分けしたのが次のグラフ。

↑ 年齢階級別・発生場所別・性別患者数(2014年度、人)
↑ 年齢階級別・発生場所別・性別患者数(2014年度、人)

元々人口構成比による違いもあるが、大よそ歳を経るほど搬送者数は増える。そして女性よりも圧倒的に男性の方が数は多い。これは中堅層まででは作業中(仕事中など)や道路・駐車場における事案の発生、つまり何らかの仕事的な事情で外出していた時に熱中症の症状が生じたことを起因とするものが多いからに他ならない。また65歳以上でも男女差の差異の原因は主に作業中の差に加え、道路・駐車場、そして公衆出入場所(学校や駅構内など人が集まる場所)であり、外回りが多分にある男性の方が多くなるのも納得がいく。

また7歳から18歳、つまり小学生から高校生までにおいては運動中や学校における事案の発生が多数を占めており、特に男子の方が数が多い。体育などの集団行動や部活動で無理な行動がたたり、熱中症を発症してしまうものが多々いるものと考えられる。

他方、65歳以上、つまり多くは定年退職を迎えた高齢者においては、道路・駐車場や公衆出入場所での発症事例も多いが、それよりも住宅や老人施設での発症数が他年齢階層と比べて異様に多いのが目に留まる。【エアコンの普及状況をグラフ化してみる】などにもある通り、高齢世帯でもエアコンの普及率は若年層世帯と変わらない、むしろ若年層より高い値を示しているが、節約志向の高さ、操作することが難儀なためによるあきらめ、人工的冷気を嫌う、体感温度反応の鈍さによる「つけるべき状況なのにつけない」などの理由で、エアコンをつけないまま高温・多湿な状態の屋内環境での生活を続け、身体への負担の大きさから熱中症を発症する事案が多いものと考えられる。

今件を年齢階層別に患者数の比率で表すと、各年齢階層・性別の熱中症の状況の特性が良くわかる。

↑ 年齢階級別・発生場所別・性別患者数(2014年度、比率)
↑ 年齢階級別・発生場所別・性別患者数(2014年度、比率)

大よそ上の表記の通りだが、小学生から高校生までは運動中や学校内での発症が多い、中堅層は男性が作業中や道路・駐車場など仕事中の発症が増える、女性は公衆出入場所での事案も多く、出先での発症リスクが高くなる、そして高齢者は住宅内のリスクが上昇する。特にシニアでは男性の方が外歩きの最中の事案が多い一方で、女性はほぼ2/3が住宅内によるものとなっているのが特徴的。

最後は年齢階層別の搬送時における患者の重症度。これは沖縄県を除いた値(沖縄県の値は病症度合の仕切りが別物となっている)。また重症度の具体的内容は次の通り。

軽症:入院を必要としない程度

中等症:重症または軽症以外の病状

重症:3週間の入院加療を必要とするもの以上

死亡:医師の初診時に死亡が確認されたもの

↑ 年齢階級別・重症度別患者数(比率、2014年度、沖縄県除く)
↑ 年齢階級別・重症度別患者数(比率、2014年度、沖縄県除く)

きれいな形で若年層ほど軽症の状態で搬送されていることが分かる。見方を変えると高齢層ほど搬送(場合によっては第三者によって発見の上で)される時にはすでに入院が必要な状況となっている人が多いことが見て取れる。中等症以上は要入院なので、例えば19歳から39歳の搬送者のうち3/4は入院を必要としない状況での搬送だが、65歳以上ではほぼ半数が搬送時に入院(+その他)が必要となる状態にまで悪化している。

熱中症による搬送の場合、来院時の状況は高齢者の方が悪化しているとの報告・調査結果は、他の多数の調査報告でも同様の結果が出ている。体力や温度感知能力の低下により、初期の段階での対応ができない場合が多いのがその要因。

良い例がエアコンの利用判断。日本救急医学会が2014年に公開した【熱中症の実態調査 -日本救急医学会 Heatstroke STUDY 2012 最終報告-】によると、2012年の夏季に全国103救急医療施設において熱中症で受診した事例についての統計調査結果として、当事者の世代別では高齢層ほど「エアコンの設置はしていたが停止中」の事例が多く、そして(年齢を問わず)エアコンが停止状態で搬送された熱中症患者ほど病症の重症度が大きいとの結果が出ている。

↑ 「年齢とエアコンの設置、使用状況」(左)と、「エアコンの設置、使用状況と来院時重症度」(右、IよりII、IIIの方が重病)。双方とも人数。「熱中症の実態調査 -日本救急医学会 Heatstroke STUDY 2012 最終報告-」より抜粋
↑ 「年齢とエアコンの設置、使用状況」(左)と、「エアコンの設置、使用状況と来院時重症度」(右、IよりII、IIIの方が重病)。双方とも人数。「熱中症の実態調査 -日本救急医学会 Heatstroke STUDY 2012 最終報告-」より抜粋

エアコンを使用中、あるいはエアコンを使っていない場合は熱中症へのリスクに対する備えも相応だが、エアコンがあってもつけていない場合、油断をしているか、それともつける状況であることを気が付いていないがため、重症レベルの状況となってから搬送する事例が多々あることを示唆するものとなっている。



未成年者の熱中症は学校行事、特に運動中に発生しやすい、成人は労働中、中でも屋外において起きやすく、男性の数が多くなる、高齢層は男性は屋外でもリスクを体現化するが、男女ともに屋内での発症確認事案が多い。さらにエアコンを使える環境にあっても、何らかの理由で作動せずに環境が悪化し、熱中症を発症するケースが多々ある。一つ一つは断片的な実例として語られていた話ではあるが、今回複数の統計・検証データでその裏付けが取れた形となる。

熱中症などに係わる他の記事でも言及しているが、今後高齢層の一人暮らし世帯が増加することもあり、それらの人達の熱中症リスク、体現化の絶対数は増加することが容易に予想できる。エアコンは整備してあっても利用されていなければ単なる置物と何ら変わりはない。スマートに利用されるような仕組み、工夫も求められよう。


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