全紙マイナス、朝日は4%強の下げ率で700万部割れ…新聞の販売部数などをグラフ化してみる(2015年前半期・半期分版)

2015/08/19 10:00

当サイトでは主に年単位で日本新聞協会発表の公式データを基にした、そして読売新聞社の広告ガイドページで半年単位で更新・公開されている日本ABC協会「新聞発行社レポート 半期」を基に、日本の新聞業界の動向を精査している。その後者について2015年8月18日付で、最新版となる2015年前半期の分のデータ掲載を確認することができた。そこで今回はその最新データを基に、日本の主要新聞社の新聞における発行部数の現状を確認していくことにする。

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前半期比では全紙がマイナス、最大下げ率は朝日


まずは主要全国紙、具体的には読売新聞・朝日新聞・毎日新聞・日本経済新聞(日経新聞)・産経新聞の計5紙における「販売部数」。これは【読売新聞広告ガイド】からリンクをたどり、【販売部数の公開ページ】に掲載されている、「日本ABC協会「新聞発行社レポート 半期」2015年1月-6月平均」で取得することができる。該当半年間におけるで平均値であること、朝刊「販売」部数のみで夕刊は含まれないことに留意する必要がある。また電子版は含まれておらず、紙媒体としての新聞販売部数に限定されている。

↑ 2015年前期における主要全国紙の朝刊販売数(万部)
↑ 2015年前期における主要全国紙の朝刊販売数(万部)

読売新聞は数年前まで「販売部数1000万部超」をセールスコピーとして用いていた。他誌と比べて「ケタが違う」部数はそれだけで大きなセールスポイントとして呈することができた(「いっせんまん」の言葉の響きはそれだけでパワーがある)。しかし2011年前半期でその大台を割り込み、以後販売部数の減少が続いている。今半期でも部数漸減の動きに歯止めをかけることは出来ず、主要全国紙の中ではトップの部数を維持しているものの、後述するように減少部数率では朝日新聞に次いで大きな値を示してしまっている。

読売新聞に続く部数を計上しているのは朝日新聞、そこから部数を半分以下に減らして毎日新聞、日経新聞、そして産経新聞が続いている。各新聞社の順位はこの数年、少なくとも当サイトで各紙の部数動向の精査を始めて以来変化は皆無。各新聞の部数の差異から考察する限りでは、毎日新聞と日経新聞との間で順位変動が起きる可能性が一番高いが、各紙とも下げ基調の中にあるため、順位そのものの差し替わりの機会はなかなか無さそうだ。

読売新聞が部数の上で他紙と比べて優位な位置を維持しているのは、【「東洋経済の2010年 2/20号 特集:再生か破滅か……新聞・テレビ 断末魔」】によると「ホテルなどへの営業が功を奏している」のが大きな要因とのこと。ただしここ数年は下げ幅が大きくなっていることから、それらの場面での需要も減退している可能性はある。

なお一部で話題に登っていた「朝日新聞700万部割れ」の件だが、2015年前半期における平均値の限りでは、その話の通り700万部を大きく割り込む結果が出ている。

朝日新聞の下げ幅は4%超


続いて公開値を基に独自算出した値を用い、複数の比較グラフを生成し、状況のより詳しい精査を行うことにする。まずは前半期、今回ならば2014年後半期との差異を比率化したもの。単純計算で、半年の間の変動部数を確認できる。

↑ 2015年前期における主要全国紙の朝刊販売数変移(2014年後期との比較)
↑ 2015年前期における主要全国紙の朝刊販売数変移(2014年後期との比較)

前半期は朝日新聞の「二つの吉田問題」など、朝日新聞を中心に新聞そのものの意義や信頼性が大きく問われる形となった。各種調査でも全国紙に対する存在意義が改めて問われるような結果が出ていたが、その影響が半年を経過してもなお、色濃く残る結果が数字となって表れている。

朝日新聞がずば抜けた下げ幅、それに読売新聞が続き、毎日新聞と日経新聞が小幅な下げ幅。この傾向は前半期から変わらない。産経新聞は前半期ではわずかにプラスを示したが、今回は微細な下げ。事実上の現状維持が継続していると見て良い。読売新聞の下げ幅は毎日や日経と比べれば大きいものの、前半期のマイナス3.11%と比べればおよそ半分にまで縮小している。

一番の下げ幅となった朝日新聞はマイナス4.27%。前半期はマイナス4.47%だったことから、わずかではあるが状況の加速的悪化は免れていることになる。もっとも部数が大きく減少していることに変わりはない。「二つの吉田問題」などをトリガーとした、第三者委員会による精査を経た、再生に向けた数々の同社の行動は、少なくとも部数の上では評価されていないと判断できる。

詳細な部数算出、グラフ生成は省略するが、部数の増減においては、朝日新聞のマイナス30.3万部がもっとも減少部数が大きく、読売新聞のマイナス14.0万部が続いている。前半期比で1%前後までは誤差的変動とも解釈できるが、それを超える下げ幅はさすがに「低迷」と判断せざるを得ない。今回該当時期では朝日新聞は、単純計算で毎月5万部以上部数が減った計算になる。

世帯普及率は全紙で低下


最後に世帯普及率の算出。これは全世帯に対して各新聞が届いている世帯の比率を表したもの。例えば読売新聞は15.85%とあるので、大体6世帯に1世帯は読売新聞を取っていることになる。

↑ 2015年前期における主要全国紙の世帯普及率(2014年後期との比較)
↑ 2015年前期における主要全国紙の世帯普及率(2014年後期との比較)

朝刊は世帯単位で定期購読されることが多く、また世帯構成員全体が目を通す可能性が高い。今件は単純な朝刊の販売部数よりも新聞市場・業界のすう勢を推し量る指標として有意義な値である。これを見ても読売新聞の絶対的なポジションをはじめとした、各主要紙の現状がつかみ取れる。

今半期では、全紙が部数を減らしており、当然のことながら世帯普及率も減少している。特に部数の下げ率が大きかった読売新聞と朝日新聞において、明らかに前半期から棒グラフの長さが凹んでいるのが分かる。残り三紙、特に産経新聞は部数の減少幅が小幅なため、世帯普及率の減退はわずかな値に留まっている。

注意事項を挙げるとすれば、世帯普及率の動向は、漸増する世帯数にも影響を受ける点。人口は漸減しているものの、一人暮らし世帯が(若年層と高齢層で)増えるため、世帯数は増える。そして一人暮らしの世帯では新聞の購読率は落ちるため(読み手が一人しかおらずコストパフォーマンスが低くなる、世帯収入が二人以上世帯より低いので可処分所得が下がり、新聞購入の余裕が無くなる)、世帯普及率はマイナスのプレッシャーを受ける形となる。



日経新聞電子版の有料会員数各紙の販売部数の減退の一つの要因に、購読者の一部が紙媒体版から電子版に切り替えたため、紙媒体の新聞販売部数としてはカウントされなくなったのでは、との説が挙げられる。各紙とも何らかの形で電子版を展開しているが、定期的に展開状況が把握できる値を公開しているのは日経新聞のみ。現時点で容易に取得できるデータとしては【日本経済新聞 媒体資料 2015(PDF)】が確認できるが、それらによると

・朝刊購読数…312万3880

・朝刊(紙媒体)販売数…273万2989部

・電子版有料会員数…39万0891
 うち朝刊と電子版の併読…18万4194
 うち電子版単体購読…20万6697

となる。販売数ではなく購読数の表現が用いられているのは、日経Wプラン(紙と電子版の双方を読むプラン)で重複カウントをしているため。「読者数」「販売数」の概念としては、仮に有料電子版も読者として想定するのなら、273万2989(紙媒体購読者数)+20万6697(電子媒体のみ購読者数)=293万9686との概算値が出る。また現状では紙媒体の新聞部数の7.6%の値が、電子版のみの購読者と成り得るとの指標が算出できる。例えば100万部の発行部数を誇る新聞ならば、7.6万人が電子版のみの購読者として期待できる。

もっともこれは2015年1月時点における、日経新聞の事例。他社新聞社は恐らくこれより下回る部数・比率であることは容易に想像ができる。また無料登録会は各紙ともそれなりに人数がいるはずだが、今件における紙媒体の新聞(当然有料)と合わせて考えることは、かなり難があるので考察には加えない。

過去のデータを確認する限り、日経新聞に限れば有料電子版単体の購読者、つまり紙媒体の新聞の代替的存在の数は漸増をしているものの、1年で5万人程度の増加に留まっている。例えば前半期との比較では、電子版有料会員数は約2万7000人、そのうち朝刊と電子版の併読は約8000人、電子版単独の購読は2万0000人、それぞれ増加している計算になる。今回計上された前半期との紙媒体としての新聞の部数推移はマイナス約1万4000部なので、電子版単独の購読者の増加でほぼ補完され、さらに上乗せした形となる。つまり半期単位では電子版はビジネスの上で成功を収めていると見なすことができる。

もっとも今回のような順調な伸び方が、今後も期待できるかは未知数。そして他の4紙も電子版に関しては、ビジネス的な成功を期待することは、現時点では難しい。公開できるだけの実績を挙げていれば、電子版の有料会員数、つまり紙媒体の購読者の代替的な存在数について、定期的に公知ができるはずであり、それが成されていない現状からは色々と察せざるを得ない。

インターネットの普及、スマートフォンやタブレット型端末の浸透に伴い、情報の取得スタイルは大幅に変化し、メディアの価値観は変動を続けている。その荒波を乗り越え、しかも新聞としての大義を忘れることなく品質を維持し、新時代の担い手として支持を得続けることができるか否か。努力と検証、そして決断が求められている。その選択の正しさは、部数にも反映されるに違いない。


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