吉野家の客数前年同月で16%減、売上プラスは今月も松屋のみ…牛丼御三家売上:2015年12月分(最新)

2016/01/05 16:00

牛丼チェーン店「吉野家」などを運営する吉野家ホールディングスは2016年1月5日、吉野家における2015年12月の売上高や客単価などの営業成績を公開した。その内容によると既存店ベースでの売上高は、前年同月比でマイナス7.9%となった。これは先月から継続する形で、2か月連続のマイナスとなる。牛丼御三家と呼ばれる日本国内の主要牛丼チェーン店3社のうち吉野屋以外の企業の状況を確認すると、松屋フーズが運営する牛めし・カレー・定食店「松屋」の同年12月における売上前年同月比はプラス1.2%、ゼンショーが展開する郊外型ファミリー牛丼店「すき家」はマイナス0.3%との値が発表された。今回月は前回月に続き松屋のみが前年同月比でプラスの売上を計上することとなった(【吉野家月次発表ページ】)。

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前年同月比、そして前々年同月比試算で各社現状を精査


牛丼御三家の「前年」同月比における、公開値による客数・客単価・売上高の動向は次のグラフの通り。特記事項が無い限り既存店(1年前に存在していた店のみの値を集計したもの)の動向を記していることに注意。

↑ 牛丼御三家2015年12月営業成績(既存店)(前年同月比)
↑ 牛丼御三家2015年12月営業成績(既存店)(前年同月比)

このグラフで概況をまとめた上で、まず最初に吉野家の状況の確認を行うことにする。昨年同月(2014年12月分)の記事、データを基に営業成績を比較すると、一年前の客単価前年同月比はプラス9.4%。同社では2014年4月1日から消費税率改定に伴い主力メニューの牛丼価格を引き上げており、12月の時点でも客単価の上昇、そして客数の減退の作用が生じる状況ではあった。さらに【吉野家の牛丼、300円から380円へ値上げ・12月17日15時から】にある通り、2014年12月17日から主力商品の牛丼価格をはじめ各種商品価格の引き上げを実施しているため、これ以降は客数の減少と客単価の増加が直接的な影響要因として計上される。結果として2014年12月は客数マイナス8.4%・客単価プラス9.4%、売上高プラス0.2%と、事実上トントンの業績を計上している。また2015年冬季も再び「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」が投入されているが、前年のラインアップに加え、オプションの新設でさらなる単価引上げが期待できる状況となっている。

結果として客数は1割強の減退となったが、客単価は1割近い上昇。売上高は客単価の上昇が客数減少をカバーしきれず、マイナスに落ち込んでしまう。相次ぐ客単価引き上げ施策の実施によるメニュー構成、さらには運営方針のかじ取りの結果によるものだが、今回月では三社中最大の下げ幅には違いない。

昨今では各社とも客単価と客数が大きく動く施策(メニュー全体の価格引上げなど)が相次いでいることもあり、反動による前年同月比の変化の影響を最小化するために、前々年同月比を試算したのが次のグラフ。2年に渡った変化率であることから、ここから年平均を求めるにはルート換算をすれば良い。例えば吉野家なら、2年前同月比の売上から年平均を試算すると3.93%のマイナスとなる。

↑ 牛丼御三家2015年12月営業成績(既存店)(前々年同月比)
↑ 牛丼御三家2015年12月営業成績(既存店)(前々年同月比)

前年同月比だけでなく、前々年同月比で見ても、吉野家だけでなく3社が客単価の引上げにより客数の減退を補い(あるいは客数減退を覚悟しても客単価の引き上げを模索し)、売上を維持している様子が把握できる。結果としてこのような状況になったのか、あるいは意図してのものなのかは不明だが、明らかに施策としてのかじ取りの転換がなされている。特に吉野家は相次ぐ牛丼価格の引き上げが実施され、客単価の上昇ぶりは他の2社から群を抜く形となっているのが分かる。同時に客数の引き具合も大規模なものとなり、2年越しで2割強の減退が確認できる状況。

続いて松屋。今回月も1本ではあるが新作メニュー「トマトバジルチキン定食」が登場し、ラインアップに彩りを添えている。12月の業績は、客単価こそ3社中最小の上昇率だが、客数増加は唯一のプラス。結果として売上は単独のプラスを維持することになった。2年前同月比でも似たような動きを示しており、松屋ならではの地道な成長ぶりがうかがえる。

最後にすき家。新メニューとしては特に新しいものは無いが、【すき家の鍋料理、単体展開も開始】にて紹介したように、鍋メニューにおいて鍋単体での注文を可能とし、他のご飯系メニューとの組み合わせによる選択肢の拡大を推し量っている。結果として客単価は吉野家に続く上昇ぶり、客数はマイナスだが4%足らずに留め、売上もマイナスではあるものの誤差レベルの範囲に留める形となった。

↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2015年12月)
↑ 牛丼御三家売上高推移(既存店)(前年同月比)(2006年1月-2015年12月)

売上高の中期的動向としては、ここ数年に限れば、すき家の人員不足騒動や吉野家の鍋旋風でそれぞれぶれが生じているが、それ以外は大よそ横ばいに推移している。少なくとも震災前のような大幅な上下感は確認できない。他方、直近で2015年8月と前年2014年11月に起きている吉野家の売上における跳ね上がりは、新商品の導入に伴う客単価の大きな底上げによるもの(2年前は定価を上げた鍋定食、前年は「麦とろ牛皿御膳」)。逐次インパクトのある商品投入で、業績に活力を与えるのがここ数年の吉野家の施策とも読める。

客数の減少・客単価の増加は戦略転換によるものに違いなく


次に示すのは各社の客数動向。先の消費税率改定に伴い各社とも(規模、タイミングこそ違えど)メインとなる牛丼・牛めしをはじめ各商品の価格引き上げを実施しているが、それからすでに1年以上が経過しているため、消費税率改定による客数減退の影響は消え去り、むしろ前年同月比動向ならば反動で底上げ効果が生じてもおかしくないが(イベントによる減退が生じた場合、次年はそのイベントの影響が無くなっているため、特異的に減少した値との比較によって大きなプラスが生じ得る)、相変わらず値はマイナス値のままで低迷した状態が続いていた。2015年10月に松屋とすき家で客数が大きく跳ねたのは、牛丼・牛めしの期間限定の値引きによるところが大きい。案の定、その影響が無くなったその次の2015年11月では、客数はこれまでの動向同様に低迷する形に戻ってしまった(松屋の客数減退が小さめなのは、客単価の引上げ度合いが小さい結果)。

↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2015年12月)
↑ 牛丼御三家客数推移(既存店)(前年同月比)(2011年1月-2015年12月)

単純な前年同月比だけでなく、2年前同月比の試算結果を見ても、各社とも規模、結果に違いがあれど、客単価増・客数減となる方向性を示している。中期的には客数だけを見れば「低迷している」との判断に至るが、売上は横ばい、客単価は上昇との情報を合わせると、新たな側面も見えてくることに違いは無い。

今回月は吉野家で客数の減退ぶりが客単価の上昇でカバーしきれないほどとなっており、不安な面もあるが、過去から2年前同月比を試算し直すと、やや起伏が激しいものの、大よそ回復基調の中の、想定の範囲内の動きでしかないことが分かる。

↑ 吉野家売上高推移(既存店)(前々年同月比)(2007年4月-2015年12月)
↑ 吉野家売上高推移(既存店)(前々年同月比)(2007年4月-2015年12月)

卵が先か鶏が先かの問題に近いものだが、震災以降顕著化している消費者の消費性向の変化に伴う、廉価スタイルの外食産業全般からの客足の遠のきに対し、各社とも価格面で一歩上のステージに上がることにより、時代の変化に対応しようとしている。これまで同様に廉価外食店の様式では客数が減るばかりで、客単価がそのまま維持されたのでは、当然厳しさを増してくる。ならば客数の減少が一時的に加速化しようとも、営業様式の格付けをアップし、売上の点で帳尻を合わせようとするものである。逆に品質の高いブランド化が成されれば、新規層の開拓につながる可能性もある。

客単価の引き上げで客数の減りをカバーして売上、利益を維持する場合、これまでの「薄利多売」と比べて客数が減った時の売上の減退リスクは大きくなる(同じ人数が減った時の、売上の減少額が大きくなる)。しかし店員の接客時における負担は軽減される。間接的にサービスの品質向上も期待できる。商品在庫のリスクや物流コストも圧縮されうる。

類似業界として良く比較されるハンバーガーチェーン店では、方向性の確定に苦慮しているマクドナルドが苦戦を強いられる一方、モスバーガーやケンタッキー・フライド・チキンでは高単価・高品質をさらに前面に押し立てるだけでなく、独自ブランドをより個性豊かなものとして、売上を維持している。

この「客単価増・客数減」の動きが今後も継続するのなら、数年後には牛丼チェーン店における社会的立ち位置は、これまでとは随分とちがったものとなるに違いない。そして現状までの動向、特に震災前の施策、例えば牛丼価格の期間限定による引き下げ競争は、歴史的事象として語られることになるだろう。


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