50年余りの間の映画館数の変化をグラフ化してみる(2015年)

2015/03/01 10:00

庶民の娯楽の代名詞的存在の一つ、映画館における映画観賞。独特の雰囲気の中で巨大なスクリーン上に展開される映像は、老若男女を問わず心を弾ませ、ときめかせてくれるもの。一方、インターネット技術の進歩と家庭用テレビの大型化・高解像度化、さらにはスマートテレビ化に伴い、映画鑑賞という観点における映画館の存在意義は確実に変化を示し、荒波の環境下にある。今回は一般社団法人日本映画製作者連盟が定期的に更新、公開している【日本映画産業統計】を基に、最新のデータに基づいた、日本の映画館数などの動向を確認していくことにする。

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漸減する映画館、最近では再び増えたようだが…


まずは映画館数の変移。後述するように、2000年以降はスクリーン数でカウントしているため、厳密には連続性が無いグラフとなってしまった。しかし大まかな流れはつかみ取れる。

↑ 映画館数(スクリーン数)(-2014年)
↑ 映画館数(スクリーン数)(-2014年)

シネコングラフ中にも説明書きのある通り、1999年までは「映画館数(=スクリーン数)」でカウントしていたが、2000年以降は「映画館スクリーン数」に計測対象が変わっている。これはスクリーンが一つしかない「通常型映画館」に対し、いわゆる「シネコン(シネマコンプレックス、複合映画館。同一施設内に複数のスクリーンが用意されている映画館)」が主流になりつつある状況に対応したもの。通常映画館・シネコン別のスクリーン数も2000年からデータが用意されているが、その推移を見ればシネコンが漸次増加しているのが把握できる。

↑ シネコン・通常映画館のスクリーン数(-2014年)
↑ シネコン・通常映画館のスクリーン数(-2014年)

同時にそのスクリーン数自身も、この数年は「通常映画館は減少」の一方で、その減少分を補完する程度しか「シネコン・スクリーンの増加」が果たされず、全体的には横ばいのまま推移していたのが分かる。「通常映画館数以上にシネコン・スクリーン数が伸び、全体値を押し上げる」動きは停滞していた。震災の起きた2011年以降はシネコンの増加も止まり、2012年ではむしろ減る動きを見せた。

ただし2013年以降は「通常映画館減少」に歯止めがかからないものの、シネコンスクリーン数は増加し、結果として総スクリーン数は増加の動きを示している。景況感を背景にした拡大が起きているのかもしれない。

公開本数と来場者数と


さて、そのスクリーンで公開される映画本数だが、1980年代後半までは洋画がじわじわと押していたものの、それ以降は邦画が少しずつ押し戻す傾向にある。本数そのものは当たり外れの年があるため、「ぶれ」のレベルでの変化が生じているが、大体500本から800本/年の範囲に収まっていた。その時期では逆算すると、毎日1本から2本ずつ新作が公開されていた計算となる。

↑ 映画公開本数(邦画/洋画)(-2014年)
↑ 映画公開本数(邦画/洋画)(-2014年)

↑ 映画公開本数(邦画/洋画、比率)(-2014年)
↑ 映画公開本数(邦画/洋画、比率)(-2014年)

今世紀に入ってからは2006年に一度ピークを迎えた後、数年は公開本数全体が逓減状態にあった。ところが2011年には東日本大地震・震災があったにも関わらずその傾向が打ち消されるかのように増加、さらに2012年では記録に残っている1955年以降最大の公開本数となる983本(邦画・洋画合わせて)を示している。

その勢いはとどまることを知らず、2013年は再び記録を更新し1117本(邦画・洋画合わせて)。これは記録のある1955年以降では初の1000本超えとなる。直近の2014年では邦画615本・洋画569本、計1184本と記録を前年から上乗せする形で更新し、過去最大の本数を記録している。本数が多ければ良いわけではないが(詳しくは後述)、少なくとも本数の増加分だけ確実に活性化している状況は素直に喜ぶべきだろう。観賞側からすれば、選択肢がそれだけ増えたのだから。

続いてグラフ化するのは入場者数推移。映画の人気ぶりの動向を一番ダイレクトに確認できるもので、「映画館離れ」が起きているのか否か、もし起きているのならどの程度なのかを確認できる、具体的な指標動向である。

↑ 映画館入場者数(億人、年単位)
↑ 映画館入場者数(億人、年単位)

1958年の11.27億人をピークに急速に入場者数は減少し、1970年後半以降はほぼ横ばいの形を崩していない。この急激な減少の原因は、映画館での映画観賞の代替となりうる「テレビの普及」によるものに他ならない。特に1959年の皇太子明仁親王(今上天皇)ご成婚の中継が、家庭用テレビの普及に大きなインパクトを与えている。

また1960年にはテレビのカラー放送が本格的に始まり、それと共にカラーテレビも発売され、世帯内に普及していき、映像娯楽の主役は映画館での映画鑑賞から自宅でのテレビ観賞に移り変わっていく。その変化が歴史の証人のごとく、グラフとして表れている。

ただしこの数年では後述するように、1997年の1.41億人を下限とし、わずかずつではあるが、横ばいから持ち直しの動きも見せている。直近の2014年は1.61億人、前年比で約523万人・3.4%の増加。前年の震災による影響で1.45億人まで減った状況からは回復したが、まだ直近の高値である2010年の1.74億人には及ばない(もっとも2010年の入場者数の多さは「アバター」「アリス・イン・ワンダーランド」などヒット作が連発したのが要因としては大きいのだが)。

公開本数が大幅に増加した一方で、入場者数は微増にとどまっている。これは映画1本あたりの平均入場者数が減少していることを意味する。具体的にその値を算出すると、ここ数年は確実に減少を示しており、集客力のある映画が全体比として少なくなっていることが確認できる。

↑ 平均映画入場者数(公開映画あたり、千人)
↑ 平均映画入場者数(公開映画あたり、千人)

↑ 平均映画入場者数(2000年以降、公開映画あたり、千人)
↑ 平均映画入場者数(2000年以降、公開映画あたり、千人)

単純試算だが2014年における1公開映画あたり平均入場者数は13.6万人。この値は記録のある中では過去最低値。直近の高値である2010年の24.4万人から4割強の減少となる。

来場者数と興行収入、ヒット作


映画館、映画業界不振の打開策として登場したシネコンだが、一時的に入場者数のかさ上げには成功した。しかし抜本的な状況改善にはつながらず、さらに震災の影響を受けて再び入場者数も減少した。2012年以降は回復の兆しがあるものの、震災以前のレベルには届いていない。興行収入(映画館での入場料から得られる売り上げの合計)の動向推移も似たようなものである。

↑ 映画館入場者数(万人、年単位、2000年以降)
↑ 映画館入場者数(万人、年単位、2000年以降)

↑ 興行収入(億円、年単位、2000年以降)
↑ 興行収入(億円、年単位、2000年以降)

2008年から2010年は、多少ながらも持ち直しの気配が感じられた。これはひとえにヒット作に恵まれた結果によるもので、特に洋画の健闘(「ハリー・ポッターと謎のプリンス」「アバター」「アリス・イン・ワンダーランド」など)が著しい。ところが2011年は入場者数、興行収入共に大きく減少している。震災による直接的・物理的な開場・上映機会の減少だけでなく、自粛の世情によるもの、さらには震災を機に発生した「消費者性向の変化」、そして上映作品の当たり外れによるものも要因としては小さくない。

過去3年における洋画・邦画別の興行収入上位作は次の通り。

↑ 2012年-2014年興行収入ベスト3(各年、億円、邦画)
↑ 2012年-2014年興行収入ベスト3(各年、億円、邦画)

↑ 2012年-2014年興行収入ベスト3(各年、億円、洋画)
↑ 2012年-2014年興行収入ベスト3(各年、億円、洋画)

直近の2014年の動向としては、邦画は前年と比べてトップこそ値を落としたが上位陣全体としては健闘。洋画は世界的ヒット作となった「アナと雪の女王」が日本でも大奮闘し、興行収入は200億円を突破する大ヒットとなった。公開値で単純比較が可能な2000年以降で比較作品を確認すると、2001年12月公開の「ハリー・ポッターと賢者の石」が203億円、2009年12月公開の「アバター」が156億円であることから、「アナと雪の女王」の好評ぶりがうかがえる。

なお邦画・洋画別の興行収入全体だが、邦画は前年比でプラス2.6%、洋画はプラス12.8%の結果が出ている。やはり「アナと雪の女王」の影響が色濃く出ているといえよう。



映画館内装冒頭で触れている通り、ブロードバンド環境の普及、動画配信の浸透と常用化、そして映画もインターネット経由などで自宅観賞でも優れた画質のものを楽しむことができるようになった。さらに、地上波テレビの地デジ化に伴い家庭内のテレビも大型化・高画質化し、映画館は競合のパワーアップが進むばかりとなり、厳しい状態におかれている。映画業界でもシネコンの展開、さらには4DX(3D化に加え、座席の振動や香りなどさらなる疑似体験を観客に提供し、映画の臨場感をアップする仕組み)の例にあるように、さまざまな手を打ってはいるが、状況の変化とそれに伴う消費者性向の移り変わりは、映画館側の対応を上回るスピードで進んでいる。

映画館業界全体の売上は、上映される作品の質・話題性や景況感に影響を受ける面が多々あるのは否めない。しかし娯楽の質、映画を観る媒体・選択肢の増加をはじめとした周囲環境、言い換えれば「時代の流れ」を見極めた上で、その流れに乗る変化・アイディアの詰め込みをしなければ、映画館が現状維持、さらには発展する形で生き残ることは難しい。むしろ新興メディアとの間に相乗効果を狙えるような発想とその実行こそが、今の映画館業界には必要に違いない。

特に平均映画入場者数のグラフで示したように、1公開映画あたりの入場者数が減少している傾向には、大いに注意を払う必要がある。粗製乱造、質の上での二極化、映画コンテンツそのものの集客力の低下、色々な解釈はできるが、いずれにせよ憂うべき状況に変わりはないからだ。


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