子供達の視力の推移をグラフ化してみる(2015年)

2015/01/26 08:00

文部科学省は2015年1月23日、2014年度版の【「学校保健統計調査」】の速報値を発表した。これは幼稚園から高校生にいたるまでの、各種身体的測定結果、病症の状況などを定期的に集計しているもので、子供の最新の育成状況や中長期的な健康状態の推移を推し量れるものである。今回は発表されたデータの中から、子供の視力関連について各種値を抽出し、現状と状況の移り変わりについて確認をしていくことにする。

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視力1.0未満の子供ってどれくらいいるの?


「学校保健統計調査」内の視力関連データは現時点では1979年以降2014年分まで、幼稚園・小学校・中学校・高等学校の、視力1.0未満全体、1.0未満-0.7以上、0.7未満-0.3以上、0.3未満の人の、それぞれの学校生徒全体に占める比率が収録されている。また該当年分の詳細データをたどると、1歳単位の値も取得可能。

まずはこれを基に、視力1.0未満の割合の推移を折れ線グラフ化する。「裸眼」とは「眼鏡をかけない状態」を意味する。

↑ 裸眼視力1.0未満の者の推移(1979年度-)
↑ 裸眼視力1.0未満の者の推移(1979年-)

中学生までは中期的に1.0未満の人が漸増する傾向にあるが、高校生は1990年代前半でほぼ増加は頭打ち、しばらく横ばいを見せた後、2000年以降はむしろ減少傾向にあった。しかし2011年度以降は高校生でも再び増加の動きを見せ、60%を超えてしまった。単年ならばイレギュラーと見ることもできるが、3年連続しての動きから、新たな傾向と見た方が良さそう。ただし直近の2014年度分はいくぶん値を下げ、安心感を覚えさせる(後述するがこの動きもまた、安心とは言い切れない内情であることが分かる)。

もっとも似たような動きは中学生でも生じており、こちらは漸増状態に拍車をかけたようにも見える。中高生共にスマートフォンの普及とほぼ同じタイミングであるだけに、少々気になるところではある。

学校種類別により細かく視力1.0未満の内情を確認


続いて学校別に、1.0未満の中身を細分化(1.0未満-0.7以上、0.7未満-0.3以上、0.3未満)して積み上げグラフ化する。合計値が上のグラフと同意となる。

まずは幼稚園

↑ 裸眼視力1.0未満の者の推移(1979年-、幼稚園)
↑ 裸眼視力1.0未満の者の推移(1979年-、幼稚園)

一般には視力が0.7を切ると眼鏡をかけた方が良いと言われている。グラフ上では赤系統の色の部分が該当する。直近では8.98%が該当するが、このガイドラインに従えば、幼稚園児の11人に1人以上は眼鏡をかけている計算になる。またこの30年では多少増えたかな……という雰囲気が見られる程度で、実質的にはほとんど変わりが無い。2014年度はいくぶん増えた雰囲気はあるが、まだ単年ベースなのでイレギュラーの範囲だろう。

続いて小学校。

↑ 裸眼視力1.0未満の者の推移(1979年度-、小学校)
↑ 裸眼視力1.0未満の者の推移(1979年度-、小学校)

幼稚園と異なり、明らかに上昇傾向にある。特に視力0.7未満の割合(赤系統色)が増加しているのが一目瞭然。この30年間に0.7未満の割合は2倍以上の増加が確認できる。

中学生の動向はどうだろうか。

↑ 裸眼視力1.0未満の者の推移(1979年度-、中学校)
↑ 裸眼視力1.0未満の者の推移(1979年度-、中学校)

増加傾向は穏やかではあるものの、小学校同様に上昇していることに違いは無い。また小学校と比べると、視力のより一層低い人の割合が多い(肌色<<赤色)実態が把握できる。ちなみに直近2014年度では0.7未満の割合は41.72%。5人に2人以上は眼鏡が必要な状態。

最後に高等学校。これは特異な変化を見せている。

↑ 裸眼視力1.0未満の者の推移(1979年度-、高等学校)
↑ 裸眼視力1.0未満の者の推移(1979年度-、高等学校)

1.0未満の人のみの折れ線グラフでも触れたように、1990年代前半で頭打ちとなり、21世紀に入ってからは減少傾向にあった。また構成をみると、0.3未満の「特に視力の弱い人」が減少していたのが分かる。ところが2011年度以降は「0.3未満」の割合が大きく跳ね上がり、やや特異な形を見せている。この動きはこの数年で高校生の視力が急激に悪化する事象が生じていることを示唆している。

携帯電話、特にスマートフォンの普及が連想されるが、その因果関係を証明するデータは、今件調査では確認できない。また直近の2014年度では1.0未満の人こそ減少しているものの、その内情は0.3以上の人の割合の減少であり、0.3未満の人は逆に増えていることが分かる。状況はより悪化していると評すべきかもしれない。



やや余談になるが今件項目における最古となる1979年度と、直近の2014年度の値を比較したのが次のグラフ。幼稚園は全般的に、小学生以降は視力の特に低い層の割合が増加していることが確認できる。

↑ 裸眼視力階層別比率(1979年度・2014年度)
↑ 裸眼視力階層別比率(1979年度・2014年度)

子供の視力低下の話になると、必ず「ゲーム機が」「携帯電話が」と責任をその両者に限定する動きがある。データ取得が始まった1979年以降では、1980年後半から視力低下=視力の低い人の割合が増加し、「相関関係」にあることは分かる。この時期は家庭用ゲーム機の革命機とも言える、ファミリーコンピューターが登場し(1983年)、普及しはじめた時期でもある。

眼鏡しかしそれでは1990年-2000年前半における横ばい、さらには高校生の21世紀に入ってからの一時的な減少の説明が出来ない。上昇する部分はゲーム機や携帯電話の責任、横ばいや減少は無関係、では合理的な考えとはいえない(特に高校生において、携帯電話が普及しはじめた2000年後半以降に視力が下がっている部分は仮説「携帯電話が視力低下の一因」と逆行した結果が出ていることになる)。つまり「相関関係」(の一部)は確認できても「因果関係」を立証することは今件データでは不可能。同様に、高校生におけるこの数年間での急激な視力低下と、スマートフォン普及との結びつきも、相関関係以上の説明は出来ない。

利用スタイルや普及率を考慮すれば、ゲーム機や携帯電話、スマートフォンが関係していることは疑う余地は無い。しかしそれが原因のすべてではない。睡眠時間・就寝時間の変化、食生活の変化、雑誌や新聞などの普及率・購読率の変化、学習スタイルの変化、テレビの普及率・視聴率の変化、周辺環境の変化(遠目で物を見る機会の変化)など、実に多種多様な要因が想定され、視力の変化に及ぼす影響が考慮されねばならない。

にもかかわらず、「子供達の視力が低下しているのは、ゲーム機、スマートフォンのせい(だけ)だ」と断じるのはいかがなものだろうか。


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