有料テレビ放送からネット動画へのシフト「コード・カッティング」の米国事情を探る

2016/01/28 11:58

回線の高速化と再生技術の進歩により、インターネット上で閲覧できる動画は、一般のテレビ放送やブルーレイディスクの再生による映像とそん色ない品質まで進歩発展している。その状況を受け、YouTubeなどの動画共有サイトのアクセスは増え続け、有料動画配信サービスのHuluやネットフリックスも盛況を博している。これらの動きは選択肢の増加や映像視聴の便宜性の向上の観点では喜ぶべき話だが、ケーブルテレビや衛星放送の利用者の減退につながるのではとの懸念もある。今回はアメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2015年12月21日に発表した調査結果【Home Broadband 2015】を元に、その実情を確認していく。

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今調査の調査要項は先行記事【米国でもゆるやかに進むパソコン離れとスマホ依存】を参照のこと。

冒頭の説明にある通り、技術とインフラの進歩でネット動画の質が向上したことにより、視聴者のテレビ離れ、ケーブルテレビや衛星放送のような有料放送離れが進んでいるとの指摘がある。この流れをコード・カッティング(Cord Cutting。ケーブルテレビのコードを切る、つまり契約を解除することを意味する。大本の意味ではネットシフト以外も合わせた動き)と呼んでいる。

現時点で調査対象母集団においてケーブルテレビや衛星放送など(以後「有料放送」)の契約をしている人は76%。一度もしたことが無い人は9%。コード・カッティングに該当する人は15%。

↑ ケーブルテレビや衛星放送の契約を自宅でしているか(米国、2015年)
↑ ケーブルテレビや衛星放送の契約を自宅でしているか(米国、2015年)

ではなぜ現在有料放送を契約していないのか。元から無い人・かつて契約していた人を合わせ、契約状態に無い人に尋ねた結果が次のグラフ。「高額だから」、つまりコストパフォーマンス的に割が合わないと判断した人がもっとも多く、7割を超えている。

↑ なぜ現在ケーブルテレビや衛星放送の契約を自宅でしていないのか(複数回答、該当者限定、米国、2015年)
↑ なぜ現在ケーブルテレビや衛星放送の契約を自宅でしていないのか(複数回答、該当者限定、米国、2015年)

続く理由として挙げられているは「無料放送やインターネット上の動画で十分」とする意見で64%。トップの回答とも多分に絡んでおり、「無料放送などで映像視聴に関する欲求充足は十分。わざわざ対価を支払って観るほどの価値ある番組を、有料放送では見つけることができなかった」とのパターンもあるものと考えられる。

他方「テレビ番組そのものをあまり観ない」とする意見は46%。「元々有料放送契約は一度もしていない」人の多くが、この回答に該当するものと考えられる。

有料放送からネット動画へのシフトが多分に起きていることがうかがえるのが次の結果。調査対象母集団全体、自宅で有料放送の契約をしていない人、いわゆる「コードカッター」の人それぞれに仕切り分けした上で、スマートフォンの所有状況、自宅にブロードバンド環境があるか否か(≒Huluなどの有料ネット動画サービスを受信できる環境が整っているか否か)、そして個人保有のインターネット環境はスマートフォンのみの人の割合を確認したもの。

↑ ケーブルテレビや衛星放送の契約現状とインターネットやスマホの状況との関係(米国、2015年)
↑ ケーブルテレビや衛星放送の契約現状とインターネットやスマホの状況との関係(米国、2015年)

一般放送の受信が可能なテレビ以外では、とりあえずスマートフォンがあれば、映像視聴の欲求は充足できる。ランダムアクセスや過去のライブラリの繰り返し再生も可能。自宅で有料放送の契約をしていない人、コードカッターの人はスマートフォンの所有率が高い傾向を示している。

他方、ブロードバンド環境は逆に全体値より低め。つまり契約をしていない人、特にコードカッターの人は、Huluなどの有料ネット動画サービスにシフトした・満足していて有料放送を契約しないのではなく、スマートフォンで取得できる動画で満足・我慢し、有料放送契約をしない・解除したケースが多いものと考えられる。

2007年夏に始まる金融危機の際には、生活防衛の手段として「トレードダウン」なる様式が流行った。利用サービスのランクを下げ、生活を防衛するものだが、これに相当する動きが映像周りでも起きている感はある。もちろん単に、有料放送にコスト分だけの価値を見いだせなくなった人も多分にいるのだろうが。


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