米国でもゆるやかに進むパソコン離れとスマホ依存

2016/01/19 11:09

このエントリーをはてなブックマークに追加
パソコンと比べると「インターネットにアクセスするツール」の観点では、機動力も高く利用のための技術的ハードルも低く、初期投資コストも比較的抑えられるスマートフォン。その急速な普及に伴い、パソコンを利用する機会が減る、優先順位を下げる人が増え、いわゆる若年層のパソコン(キーボード)離れが進んでいるとの指摘がある。果たしてこの現象は日本だけのものなのだろうか。今回はアメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2015年12月21日に発表した調査結果【Home Broadband 2015】を元に、その実情を確認していく。


スポンサードリンク


今調査のうちメイン部分は2015年6月10日から7月12日にかけてアメリカ合衆国内に居住する18歳以上の男女に対し電話の音声によるインタビュー形式によって行われたもので、有効回答数は2001件。うち701件は固定電話、1300件は携帯電話に対して行われている(携帯電話で応答した人のうち749件は固定電話無し)。一部調査項目では調査対象母集団数が6000人台にまで拡大されている。調査結果には国勢調査を用いた各種項目を考慮した上でウェイトバックが行われている。

まず最初に示すのは、自宅にブロードバンド環境が整備されている人の割合。回線が引かれているだけでは「環境整備」とは言わず、必然的にパソコンによるインターネットアクセスが可能な環境が用意されていることになる。またブロードバンドとはここではDSLやケーブルテレビ回線、光ファイバーなどによるインターネット接続を指す(対義語となるナローバンドは、いわゆるダイヤルアップ)。

↑ 自宅にブロードバンドサービスがある人(米国、2015年)
↑ 自宅にブロードバンドサービスがある人(米国、2015年)

全体では67%。大よそ2/3。意外に低い値のように見えるが、これは多分に高齢層まで含めた平均値だから。男女別の差異はほとんどなく、年齢別では高齢層の方が低い値。また、世帯年収でも大きく差が出ているのが特徴で、低年収と高年収との間には2倍以上の差が出ている。学歴でも似たような動きがあるが、これは多分に世帯年収と学歴に相関関係があるため。

居住地域別では地方ほど高い値を示す。これは後述するように代替手段となるスマートフォンの利便性によるものだろう。つまり都市部の方がスマートフォンの接続環境が整備されているので、スマートフォンにシフトする人が多い次第である。

同様の調査は2年前にも実施されているが、その時の値との比較を算出すると、意外な結果が導き出される。

↑ 自宅にブロードバンドサービスがある人(米国、2013年から2015年への変移、%ポイント)
↑ 自宅にブロードバンドサービスがある人(米国、2013年から2015年への変移、%ポイント)

プラスの属性はゼロ。大よそ3から5%ポイントの減退を示している。特に若年層、都市部、低年収から中堅年収における減少ぶりが著しい。

スマホとパソコンの両用からスマホのみへ


しかしアメリカ合衆国でインターネットへのアクセスに関する普及利用率は減少していない。パソコンの代替役として登場したのがスマートフォン。その実力・長所は冒頭で解説した通りで、報告書でも「スマートフォンはインターネットアクセスに関するパソコンのオプション的な存在ではあるが、『スマホのみ』の利用者も増加中」と説明している。

実際、今調査でも(調査対象母集団全体、つまり大人全体において)現状では13%の人が「パソコンによる自宅でのブロードバンド接続環境は無い」「スマートフォンを所有し、インターネットアクセスはそのスマホによるもののみ」と回答している。

↑ スマートフォンを所有し自宅にブロードバンドサービスが無い人(米国、2015年)
↑ スマートフォンを所有し自宅にブロードバンドサービスが無い人(米国、2015年)

↑ スマートフォンを所有し自宅にブロードバンドサービスが無い人(米国、2013年から2015年への変移、%ポイント)
↑ スマートフォンを所有し自宅にブロードバンドサービスが無い人(米国、2013年から2015年への変移、%ポイント)

数字そのものは違えど、属性別における直近の値と、2013年から2015年への変移の%ポイントの相対的な立ち位置に変わりは無い。つまり各属性の傾向がそのまま積み重なる形で継続し、「自宅にブロードバンドが無い、スマホだけでインターネットをしている人」が増えていることが分かる。

具体的には若年層、低年収層、低学歴、そして都市部。性別による差異は無い。報告書ではいくつかの可能性を呈している。パソコンによるブロードバンド環境とスマートフォンの双方を有していても、お財布事情からパソコン経由を断念せざるを得ないケース。世帯年収そのものが低下しており、下位年収層ではスマートフォンへのアプローチがインターネット環境の取得には最適な手段と判断されたケース。そしてさらには最初からスマートフォンを積極的に選択し、パソコンの必要性を覚えないケースも想定される。若年層では特にそのパターンが多いものと思われる。

↑ 自宅にブロードバンドがある人/スマートフォンを所有し自宅にブロードバンドサービスが無い人(米国、2013年から2015年への変移、%ポイント)
↑ 自宅にブロードバンドがある人/スマートフォンを所有し自宅にブロードバンドサービスが無い人(米国、2013年から2015年への変移、%ポイント)

きれいな形で自宅のブロードバンド環境は減り、スマートフォンのみの利用率は上昇。ここ数年のアメリカ合衆国におけるインターネット普及率そのものの上昇は、多分にスマートフォンの普及浸透によるものであることが分かる。動きの度合いそのものはまだ微少だが、「スマホも」から「スマホのみ」の人の増加の動きは、今後確実に同国のインターネット界隈に影響を与えていくことだろう。


■関連記事:
【「ほとんどスマホは電源切ること無し」アメリカでは82%】
【成人全体で58%、若年層なら83%…アメリカのスマートフォン所有率の現状】
【パソコン87%、スマホ73%…アメリカ未成年者のデジタル機器所有状況】


スポンサードリンク


関連記事


このエントリーをはてなブックマークに追加
▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2024 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー|Twitter|FacebookPage|Mail|RSS