現状・先行共に低下、双方とも水準値以下の低迷状態続く…2015年11月景気ウォッチャー調査は現状下落・先行き下落

2015/12/09 16:00

内閣府は2015年12月8日付で2015年11月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で低下して46.1となり、水準値の50.0を下回る状態が継続する形となった。先行き判断DIは先月から低下して48.2となり、こちらも水準値の50を割る状態が続いている。結果として、現状下落・先行き下落の傾向となり、基調判断は中国の景気後退懸念で世界経済の足並みの乱れが生じていることやテロ事件などの心理的影響を反映し「景気は、中国経済に係る動向の影響等がみられるが、緩やかな回復基調が続いている。先行きについては、中国経済の動向やテロ事件など、海外情勢への懸念がある一方で、観光需要や燃料価格の低下、雇用の改善への期待等がみられる」となった(【平成27年11月調査(平成27年12月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状も先行きも下落へ


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2015年11月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比マイナス2.1ポイントの46.1。
 →「良くなっている」「やや悪くなっている」「わるくなっている」が増加、「ややよくなっている」「分からない」が減少。
 →企業動向と雇用関連で増加。家計動向は住宅以外が減少。特に小売り関係の下落が著しい。

・先行き判断DIは先月比でマイナス0.9ポイントの48.2。
 →「良くなる」「やや悪くなる」「悪くなる」が増加。「やや良くなる」「変わらない」が減少。
 →家計動向は住宅以外が減少。企業動向では製造業が減少。非製造業と雇用は増加。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。ガソリン価格は春先までの原油価格の上昇を受けて一時値上がりの気配も見せたが、昨今では再び原油価格の下落基調が強まり、これを受けてガソリンなどの石油製品の価格も安値安定化の動きを示しており、少なくとも運輸方面そのものと運輸に大きな影響を受ける業界では安堵の声が聞かれる状況。

今回月は先月に続き、水準値となる50.0を現状・先行き共に下回る形となった。具体的コメントや周辺状況からも明らかな通り、中国の景況感への先行き不信感が強まりを見せ、それが特に家計動向、中でも小売り関係に影響している。またフランスでのテロ事案に代表される、中東情勢及びそれに連鎖反応する形で生じている海外の情勢不安定感もマイナス要因となっており、総合コメントでも言及されている通り、外部的要因で冷や水を浴びたような状況なのが実情。他方、住宅や雇用が持ち直しを見せているのは頼もしい。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

基準値超えは現状のサービスと雇用、先行きの飲食と雇用のみ


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。

↑ 景気の現状判断DI(-2015年11月)
↑ 景気の現状判断DI(-2015年11月)

消費税率改定からはすでに1年以上が経過したが、消費者心理の深層部分で影響を及ぼし続けているマイナスの景況感を回復させるに必要となる材料が見当たらず、低迷感は薄まりながらも継続していた。さらに電気代や食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、景況感は足かせ状態が続いていると判断できる。

2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年夏以降の価格水準にまで再び下落。景況感の観点ではプラスの要素として継続している。また円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが今夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

その上今回月では11月に発生したフランスのテロ事案により、同地域の情勢の不安定感が一層強い懸念となったことで、世界全体の景気先行き感への不安要因が一気に底上げされた感は強い。またその事案をトリガーとする形で中東情勢も多国軍勢力による事態収拾の動きが本格化し始めたが、各国の思惑が複雑に絡み合い、さらなるカオス化を見出す形となっている。これでは外部的要因における景況感の回復を望むのは難しい。

今回月では住宅関連以外は家計動向はすべてマイナス。特に中国の景況感悪化を懸念してか、小売関連の下げ方が著しい。他方住宅はプラスを継続、雇用も3か月連続のマイナスから大きく持ち直しており、先行き不透明感の中でもわずかな光を見せてくれる。

景気の先行き判断DIも全体的な傾向は現状判断DIとさほど変わらず。小売の下げ方が大人しい程度。全体として小幅な値動きに留まっている。

↑ 景気の先行き判断DI(-2015年11月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2015年11月)

製造業がマイナスに振れているのを除けば、現状と変わらない方向性の動きを示している。状況としては先行きも今とあまり変わらないだろうとの判断が透けて見える。

気候の穏やかさと景況感の尻を叩く要素の無さがポイントか


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「家計(現状・全国)」そして「家計(先行き・全国)」の事例を抽出し、その内容についてチェックを入れてみる。

■現状
・海外からの旅行者増加に伴い、客単価は変わらないものの、宿泊客が前年比50%程度多くなっている(都市型ホテル)。
・インバウンドが引き続き高水準を保っている結果、国内の宿泊客も客室単価が高水準となっている。稼働率は上限にきており、これ以上の販売室数の増加は望めない(都市型ホテル)。
・例年11月はコートが売上高をけん引するアイテムであるが、本年は月全体を通して気温が高めに推移しており、コートが全く売れない状況で日々推移している(百貨店)。
・11月の前半は暖冬で、防寒商品の動きが非常に厳しい。それに伴い客の来店も鈍く、お歳暮ギフト早期承りも連動して低迷している(百貨店)。

■先行き
・来月には待望の新型車が発売される。競争力のある新商品であり販売台数増加の起爆剤となる(乗用車販売店)。
・例年、冬季シーズンになると、観光入込の勢いがやや鈍化する傾向にあるものの、全体的なムードから、外国人観光客の入込増加による地域経済へのプラス効果の勢いは今後も継続する(観光名所)。
・食料品をはじめとする日用品の値上げが続くなか、主婦層の買い控えが続く(商店街)。
・景気を上向かせるような要因が見当たらない。今後は消費税再増税の話題が増える中で、生活を防衛する意識がより一層強まるため、消費の停滞を懸念する(スーパー)

ボーナス周りの消費底上げの機会も過ぎ、イベント的な景況感の加速化をうながすイベントが見つからず、ぬるま湯的な状況を示しているのが不安要因として挙げられている。燃料費が安値で済んでいることは好感材料だが、材料費の高騰は継続中で、対外需要の観点では中国の景況感への不安に加え、上記でも言及した中東から欧州地域の政情不安定化に対する懸念が非常に強いものとなっている。円安基調で輸出が期待できる状況なだけに、この問題は心理面で大きなマイナス要因となる。

特にフランスのテロ事案は心理的な面で足を引っ張っている。具体的コメントでの言及件数は全部で8件。中国経済の低迷との合わせ技での不安感を覚えるものもあるほど。また、今事案で対欧州だけでなく、対米国でも影響が生じているとのコメントも見受けられる。

短期的影響要因としては、11月の気候が比較的穏やかだったことを受け、冬物のセールスが伸び悩んだとの言及が多いのが目に留まる。



今夏は8月前半までが猛暑で消費を大きく後押ししたものの、後半からは一気に冷夏的な温度低下・日照時間の低迷にシフトし、その辺りから景況感も足を引っ張られた感がある。株式を運用する個人、企業だけでなく、その他多方面にも心理的影響を与える株価もほぼ同じタイミングで、中国の株価急落をトリガーとして一段下げた形となり、その状態が続いていることから、景気の先行き感に不安を覚える人が増え、それが景気の歩みを引っ張る気配が随所に見て取れる。また上記にもある通り、EUから中東で相次ぐ発生した情勢不安定な要因も、経済の上ではマイナスにしかならず、雰囲気の上でのウェイトとなってしまっている。

幸いにも株価はある程度復調を見せ、それに伴い株価下落による心理的なプレッシャーは軽減されつつあるが、年末の足音が聴こえてくるようになった昨今においても、景気の良い話は耳に入ってくることが無く、いわゆるぬるま湯的な、むしろそれよりも少々温度が低いものの、今更風呂から出るわけにもいかず仕方なく入っているような状況の感は否めない。

さらに本文中でも触れている通り(、そして報告書に目を通して多分に驚きを覚えたのだが、想定以上に)、パリのテロ事案に対する回答者の直接、そして回答者に係わる業務における間接的な心理的マイナスの影響が大きく、景況感への重圧となっている。今回月で現状・先行き共にマイナス化した原因をあえて一つだけ選ぶとすれば、この影響によるところと断じて間違いない。

多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内においてはそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかる可能性は高い(心理的にはすでに飛び火している)。それらのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれるところではある。


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