母子世帯のお財布事情を詳しく(2016年)(最新)

2016/01/11 05:29

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結婚や子育ての概念、価値観の変化、就労市場の変動、さらには社会保障の実情に対する注目の高まりなどを受け、母子世帯に対してスポットライトが当てられる機会が増えてきた。今回は総務省統計局が2015年12月16日に発表した【「2014年全国消費実態調査」】のうち二人以上世帯の公開値を元に、母子世帯における平均的なライフスタイルの現状を、主にお金の面から確認していくことにする。


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持ち家率は3割前後


今調査の調査要目は先行記事の【普通乗用車より軽自動車が所有される時代…自動車の車種・世帯種類別普及率(2015年)(最新)】を参照のこと。今回取り上げる世帯における「母子世帯」とは、言葉通り母親と子供から成る世帯のこと。父親が世帯内に居ない事由は問われていない。用語の定義としては「母親と18歳未満の未婚の子供の世帯」と記載されている。

住宅事情だが、持ち家率は約3割。

↑ 母子世帯の居住状況(2014年)
↑ 母子世帯の居住状況(2014年)

子供が1人の世帯では26.1%、2人以上では33.1%。自前の自宅に居住している人は少数派。賃貸住宅暮らしの人は多数派に及んでいる。持ち家世帯のうち、住宅ローンを有しているのは半数に満たないため、多分は夫との死別や離別の際に、ローンを完済扱いされたか、取得したものと考えられる。

なお二人以上世帯などでは住居関連の値としてこの他に、現在居住地の広さや自動車の保有比率も計上されているが、母子世帯に関する項目ではこれらの値は非公開のため、詳細は不明。

また、持家居住者以外が「家賃・地代支払い世帯」と「その他世帯」で仕切り分けされておらず一括でまとめられているのは、公開値における「持家率」と「家賃・地代を支払っている世帯の割合」を足すとわずかながら100%を超えてしまうため。現居住の家を持家として取得しながら、家賃・地代も同時に払っている母子世帯は、想像がしにくいものがある。単なる誤差の可能性もあるが、念のためにこのような表記とした。

一か月のお金のやりくり


続いてお金のやりくりの内容。実収入(勤め先収入や事業収入、内職収入、財産収入、社会保障給付など実質的に資産の増加となる収入を集めた収入)と、実支出(税金や社会保険料などの支出を集めた「非消費支出」と、生活費を意味する「消費支出」、黒字(実収入から実支出を引いたもの)の合計)の内訳を、具体的金額と比率の面からそれぞれ見ていく。詳しい各用語の解説、関係は先行記事の【若年夫婦勤労世帯のお財布事情を詳しく】で解説しているので、そちらで確認のこと。

なお母子世帯のうち子供が1人の世帯においては、実収入だけでは生活費をまかないきれないため、実支出と帳尻を合わせるために貯蓄の切り崩しが行われている。実収入の部分に「+不足分」が加わっているのはこのため。当然黒字の類はない。他方、子供が2人以上の世帯ではそのような状況は生じていない(実収入>>実支出となり、黒字がわずかだが計上される)ため、実支出のみとなっている。

まずは母子世帯のうち子供が1人のみの世帯。

↑ 家計収支の構成(2014年、円、一か月)(母子世帯・子供1人)
↑ 家計収支の構成(2014年、円、一か月)(母子世帯・子供1人)

↑ 家計収支の構成(2014年、比率、一か月)(母子世帯・子供1人)
↑ 家計収支の構成(2014年、比率、一か月)(母子世帯・子供1人)

↑ 家計収支の構成(2014年)(円)(支出のみ)(一か月)(母子世帯・子供1人)
↑ 家計収支の構成(2014年)(円)(支出のみ)(一か月)(母子世帯・子供1人)

収入は就労による収入に加え、その他(多分に社会保障給付)などでまかなわれる。それだけではわずかだが実支出をカバーしきれず、不足分は貯蓄の切り崩しで補っている。

非消費支出は12.2%。住居費は13.5%とやや大きめ。そして食費の割合は19.8%と大よそ2割を示している。食費そのものの額はある程度を維持しなければならず、使える金額が限られるために、割合が大きくなる次第(エンゲル係数は22.6%)。交通・通品費も負担が大きく13.7%。医療費などは4600円ほどに抑えられている。

子供が2人以上になると、ぎりぎりだが黒字が出る。ただ実質的には誤差の領域。

↑ 家計収支の構成(2014年、円、一か月)(母子世帯・子供2人以上)
↑ 家計収支の構成(2014年、円、一か月)(母子世帯・子供2人以上)

↑ 家計収支の構成(2014年、比率、一か月)(母子世帯・子供2人以上)
↑ 家計収支の構成(2014年、比率、一か月)(母子世帯・子供2人以上)

↑ 家計収支の構成(2014年)(円)(支出のみ)(一か月)(母子世帯・子供2人以上)
↑ 家計収支の構成(2014年)(円)(支出のみ)(一か月)(母子世帯・子供2人以上)

その他収入の多分が社会保障給付などでまかなわれていることに変わりはない。エンゲル係数が高めで、交通・通信費の負担も大きい。子供が2人以上いるのにも関わらず、保険医療の額面が5000円台に留まっている状況には、多分に不安感を覚える。

一応黒字は数字の上では出ているものの、平均的な金融資産の純増率は、子供1人同様にマイナス。消費性向は97.9%。資産のやりくりの中で生じた誤差の範囲であることが分かる。

金額面から食卓事情を見ていく


各値について一般的な世帯との比較をしても良いのだが、すべての項目で行ったのでは雑多に過ぎる。そこで食料関連にスポットを当て、さらに詳細な項目から金額を比較する。対象となるのは【若年夫婦勤労世帯のお財布事情を詳しく】で取り上げた若年夫婦勤労者世帯のうち、世帯主が30代前半の世帯。平均世帯構成人数は3.47人。18歳未満人数は1.42で、大よそ夫婦2人に1.5人近くの子供がいる計算。ちなみに母子世帯のうち2人以上の子供がいる世帯では、その平均構成人数は3.20人となっている。当然母親は1人のみであることから、子供の数は2.20人となる。

↑ 家計支出における食料詳細(2014年、円)(一か月)(母子世帯、二人以上世帯・世帯主が30-34歳で勤労者世帯)
↑ 家計支出における食料詳細(2014年、円)(一か月)(母子世帯、二人以上世帯・世帯主が30-34歳で勤労者世帯)

構成人数、構成者の内容(大人か子供か、同じ大人でも男女の違い)、さらには生活様式の違いにより、消費する食品の料や種類は大きく異なる。【成人男女の魚介類・肉類の摂取量】でも解説しているが、年齢によって摂取種類・量は多分に変化する。そのため今件はあくまでも参考値でしかないが、主食となる穀物はあまり差異が無く、外食や飲料、野菜・海藻などでは大きな違いが生じている。

菓子類に差があまり出ていないのは子供の数に大きな違いが無い、むしろ母子世帯のうち子供が2人以上世帯の方が多いから。また調理食品の額が母子世帯・子供2人以上世帯の方が高く出ているのは、母親の就業で自炊をする時間が取れず、調理食品で食事をまかなう事例が多いからだと推測される。



今件はあくまでも平均的な母子世帯のお財布事情。実情は母子世帯に至った状況、そして現在置かれている環境によって多種多様。今件属性におかれているすべての人が、同じような内情とは限らないことに注意が必要。

他方、今後ますます注目を集めるであろう母子世帯の内部事情を推し量るのには、有益な値であることも変わりあるまい。


■関連記事:
【母子世帯や高齢者世帯などの所得動向(2015年)(最新)】
【増える「子供無し世帯」「一人親と子供のみ世帯」…核家族の中身の推移(2015年)(最新)】


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