砂糖をのぞいて前月比はすべてマイナス、前年同月比は全種類でマイナス(2015年11月分世界食糧指数動向)

2015/12/09 05:00

原材料の価格高騰に加え、為替の変動、エネルギーコストや人件費の上昇などを受け、食料品販売大手や外食チェーン店が続々と価格引き上げを実施する中、食料品の国際価格に対する注目はこれまでにない高まりを示している。その価格変動に関し、概略的ではあるが現状を確認できるのが、国連食糧農業機関(FAO、Food and Agriculture Organization)が公式サイト上で調査結果を毎月公開している【世界食料価格指数(FFPI:FAO Food Price Index)】。今回は2015年12月3日に発表された現時点で最新版の値となる、2015年11月分の値を中心に、当サイトで独自に複数の指標を算出。その値を基にグラフを生成し、食糧価格の世界規模における推移を見ていくことにする。

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短期は底打ちから反転上昇感気味、中期は大きく下落だが砂糖が跳ねる


今記事中にあるデータの取得元や各種用語に係わる解説は、一連の記事をまとめ、さらにバックナンバーを収録したページ【世界の食料価格の推移(FAO発表)】で行っている。必要な場合はそちらのページで確認のこと。

まずは最新の値、つまり2015年11月分を含めた取得可能なデータを基に、1990年以降の各種値の推移を折れ線グラフにする。前世紀終盤以降の中長期的な食料価格の変移を大まかに、大局的な視点で確認できる。いわゆる「ざっと見」用の図である。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2015年11月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2015年11月)

砂糖は価格変動性が高い食料品であり、その内部的な実情は知らなくとも、大きく価格が変化することは多くの人が見聞きしている(店頭で並ぶキロ単位の袋詰めの砂糖価格はそのような変動はあまり無く、価格は比較的安定しているのでご安心を)。そのダイナミックな動きをこのグラフから知ることが出来る。他の食品項目は大よそ2005年位まではさほど大きな動きを示していないが、砂糖だけが大きく動いており、別物の動向のように見える。

一方2005年終盤以降になると、砂糖だけでなく他の食品も少しずつ価格が変化、しかも上昇方向に動き始める。その後直近の数年に渡る金融危機の引き金となる「サブプライムローンショック」(2007年夏以降)が起きると共に、大きく上向きの流れを見せる。

これらの動きは、主に株式市場の暴落を原因とする。要は投資市場の資金が暴落した株式市場から逃げ、その行く先に商品先物市場が目を付けられた次第。そして市場規模は商品先物市場の方が小さいため、過剰な資金流入と共に全体の価格が底上げされ、それは実商品価格の上昇をも招くこととなる。

その後は「リーマンショック」(2008年9月以降)を起因とする市場の騒乱を経て大きく乱高下を成したあと、高値安定状態に移行している。この数年は各食品項目とも200から250位の領域で小幅な値動きに終始していたのが分かる。ほんの10年ほど前の水準であった100前後と比べ、約2倍から2.5倍の領域。

もっとも直近2年足らずに限れば、おおむね下落基調の中にあり、底値ともいえる200を切り、複数の品目が150を目指し、一部はさらに150すら突き抜けた。この勢いでは新たな底値として切りの良い100を、あるいは直近の安値となる130前後(2008年から2009年、リーマンショック前後)が目標となる動きすら見せていた。しかしこの1、2か月の間に多くの指数が反転上昇の動きに転じており、150を底値として再上昇の兆しを示している。ただし今回月では砂糖以外の全種類で前月から値を落とし、天井感の雰囲気も見受けられる。リバウンドでしかなかった可能性も否定できない。

なお各指標が明らかに値を下げ始めた2014年夏季は、原油価格も下落を始めた時期ともタイミングが一致している。偶然の一致か、あるいは何らかの連動性があるのかは、今件各指標からだけでは確認ができない。昨今では世界情勢の変化に原油価格は敏感な反応を示しているため(【原油先物(WTI)価格の推移をグラフ化してみる】)、食料価格指数との連動性を見極めるのは難しい。これら一連の動きは、中国経済の後退を予見した・連動しているのではないかとの話もあるが、あくまでも推測レベルの話に留まっている。もっとも昨今のFAOによるレポートにおける下落基調の理由にも、多分に同国の需要減退が挙げられており、まったくの的外れとも言い難い(同国の影響力の大きさに関しては、先月までの1、2か月間において乳製品の価格が急上昇したのが、一人っ子政策の終了に伴う粉ミルクの需要急増によるところが大きいのが好例)。その仮説が正しいのならば、昨今の指数再上昇の動きは、同国の需要の再拡大の気配とも読み取れるのだが。

次に示すグラフは、上記グラフの横軸における対象期間を短縮し、記述スタートを2007年1月にしたもの。2007年といえば7月・8月から、「サブプライム・ローン」問題がぼっ発(露呈)し、市場は大変動の動きを示した年。昨今の食料価格に大きな影響を与えた金融危機直前からの食料価格の動向を、より詳しく知ることができるグラフとなっている。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2015年11月)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2015年11月)

興味深いのは上記でも言及している通り、「サブプライム・ローン」問題のぼっ発「以前から」、食料品価格はやや高値に動き始めていた事実。一般に同問題が知られる前より食料市場は「知っていた」のか、それとも人口増加に伴う消費増加による、中期的な食糧需給の変化が市場に反映されていたのか、それともその双方なのか。残念ながらこのデータからのみでは判断は不可能。

もっとも名目GDPの動きを見る限り、新興国の経済発展が加速度的な動きを見せはじめたのは2005年頃から。その動きと各指数の上昇タイミングはほぼ一致している。「知っていた」では無く、人口増加による需給バランスの変化が指数の底上げの主要因だったと見た方が道理は通る。そしてその仮説が主要因として事実であるとすれば、上記に挙げた昨今の各指数の減退に関する推測もまた、つじつまが合うものとなる。

期間軸を短くしても、砂糖価格の変動が激しい事実に変わりは無い。一方で食肉価格が他の食品と比べて確実に、じわじわと上昇一本やりで上昇していたことが確認できる。それと共にその食肉以外は下げ基調にあることも見て取れる。特に乳製品の下げ方が著しい。そして唯一値を上げていた食肉ですらも、ここしばらくの間は下落の動きを示していた。何らかの確実な変化が、2014年夏あたりから生じていることを覚えさせる流れではある。この数か月における下落基調の歯止め的動きも、今回月で言葉通り「頭打ち」となった雰囲気が見受けられる。

前月比と前年同月比の動き


最新、そして直近1年ほどの値動きを確認するために、各指標の時系列データを抽出し、「前年同月比」と「前月比」を独自に算出。その数字の変移が分かりやすいように棒グラフ化したのが次の図。それぞれの項目ごとに、前年同月比は青、前月比は赤で記している。

↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2015年11月)
↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2015年11月)

総合指数は前月比でマイナス1.6%、前年同月比はマイナス18.1%。食料価格はこの一年間内では大きな下げ基調を続けていたものの、その勢いが止まり、下げの方向性に変わりは無いが落ち着いた動きを示す状況であることが分かる。

個別項目を見ると前月比では乳製品と砂糖が大きな上昇で、その他はわずかな下落。前年同月比ではすべての種類で下落で、いずれも1割を超えている。ここ一年ほどは日本国内でも乳製品不足が問題視されたが(一部では今なお購入数量の制限が続いている)、その時と比べれば状況は改善≒価格の下落が起きている実態が確認できる(価格の下落は需給バランスにおいて供給過多によって生じる)。

前月比で大きな上昇を示した砂糖について、その事由を報告書から読み解くと、「砂糖の上昇はブラジルの一部地域における大雨で収穫が遅れることへの懸念から。また、インドやタイ、南アフリカ、ベトナムといった主要生産国で発表された天候不良による生産量減退リスクの報告が、市場を底上げした」とある。砂糖は先月からこの気象変動に伴う指標≒価格上昇が続いており、少々不安を覚えるものがある。

農林水産省の最新レポートで現状を確認


今記事で毎月連動性のある、付随的資料として精査している【農林水産省の海外食料需給レポート】の最新版、2015年11月30日に更新された2015年11月分をざっとではあるが確認する。最新レポートによると、国際的な穀物需給に関して、小麦、大麦で生産量が増加するものの、米・とうもろこしで減少。前年度と比べると下回る見込み(24.760億トン)。他方、消費量は大麦・小麦・とうもろこし・米で増加し、史上最高値を示した前年度を上回り、史上最高の量となる見込み(24.691億トン)。そして生産量が消費量をほんのわずかだが上回ることから、期末在庫量見込みは前年同度比で増加する傾向を示している(5.655億トン、生産量比で22.9%(期末在庫量÷消費予想値で計算))。

日本は世界の全小麦輸入量の3.7%、とうもろこし輸入量の11.9%を占める、輸入大国である。また、経済上の混乱が指摘されている中国では、小麦、とうもろこし、大豆の生産量は大きく、上位陣に食い込んでいるが(例えば小麦はEUに次いで2位、世界の生産量の18%)、国内でほとんどを消費していることから、輸出国としての計上は確認できない。

日本国内に限れば(世界全体の生産量には関係はほとんどないものの、日本国内の価格動向には大きく影響を及ぼす)、エネルギーコスト(電気代)の高騰が農家に大きな影を差している。また、食料品の加工や輸送にも小さからぬ負担となることから、市場価格の上昇が生じている。食料品価格は食料需給そのものだけでなく、燃料動向にも小さからぬ影響を受ける点で、合わせて注視をしたい。


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