高齢年金生活夫婦世帯の「貯蓄であと何年不足分をおぎなえるか」を試算してみる(2016年)(最新)

2016/01/07 13:13

先行記事【年金暮らしをしているお年寄り夫婦のお財布事情を詳しくグラフ化してみる】において、総務省統計局が2015年12月16日に発表した【「2014年全国消費実態調査」】のうち二人以上の世帯の家計収支及び貯蓄・負債に関する結果の公開値を元に、今後さらに増加することが予想される、高齢年金生活夫婦世帯(世帯主及びその配偶者のみの夫婦世帯で、その双方が65歳以上、そして有業者が居ない高齢年金生活世帯)のお財布事情を確認した。今回はそのお財布事情を元に、それらの人達の生活を支えるお金の一部となっている貯蓄の切り崩しに関して、現在の貯蓄残高であと何年生活を支えられるかの試算を行うことにする。

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今調査の調査要目は先行する記事【普通乗用車より軽自動車が所有される時代…自動車の車種・世帯種類別普及率をグラフ化してみる(2015年)(最新)】で確認のこと。

今回取り上げる「高齢年金生活夫婦世帯」は、有業者がおらず、夫婦双方とも65歳以上で、夫婦以外に世帯構成員が居ない世帯。なお「有業者が居ない」とは、世帯主及び配偶者が勤労者(世帯主が会社、官公庁、学校、工場、商店などに勤めている人)ではなく、社長、取締役、理事など会社団体の役員である人でもなく、個人営業の人や自由業者でも無い人。年齢を65歳以上に限定しているため、実質的には年金生活をしている人となる(切り崩しによる補完の多い少ないはともかく)。生活を支える主な収入は年金、そして財産収入。さらには貯蓄からの切り崩しで不足分を補っている。

先行記事にある通り、この属性の人の家計収支は例えば次のような状況となっている。

↑ 家計収支の構成(2014年、円、一か月)(夫婦双方とも65歳以上で無職・他に同居人無し世帯)(再録)
↑ 家計収支の構成(2014年、円、一か月)(夫婦双方とも65歳以上で無職・他に同居人無し世帯)(再録)

上記収支表から分かる通り、実収入だけでは不足しているので貯蓄を切り崩している以上、貯蓄は減少し、増えることは無い。利子などで増えてもささいな額に過ぎない。最終的には切り崩しができない状態となってしまう。そこで、同じペースで貯蓄を切り崩した場合、何年間生活費の補てんができるかを試算するのが、今回記事の目的。単身世帯と異なり、相方との別居、死別による状況変化も想定されるが、今件ではその可能性を無視する。

次に示すのは世帯主の年齢階層別、回答時点における貯蓄残高。貯蓄の性質別に大別してある。

↑ 現時点の貯蓄残高(2014年、夫婦とも65歳以上で無職・他に同居人無し世帯、世帯主年齢階級別)(万円)
↑ 現時点の貯蓄残高(2014年、夫婦とも65歳以上で無職・他に同居人無し世帯、世帯主年齢階級別)(万円)

上記解説の通り年金生活者は概して貯蓄切り崩しで生活費を担保しているため、歳を経れば経るほど貯蓄残高は減っていく。しかしその減り様はゆるやかで、5歳区切りでも総額は100万円前後しか減少していない。

また貯蓄とひとくくりにまとめているが、その性質は種類別に大きく異なる。通貨性預貯金は流動性が高く(普通預金など)すぐにでも出し入れできるが、定期性預貯金は一度解約してしまうと特典となる高金利は得られなくなるため、利用するのにはハードルが高い。有価証券は時価でよいのならすぐに現金化可能だが、生命保険などは定期性預貯金と同じで一度解約すると(原則として)元に戻せない。

世帯主の年齢階層別に見ると、生活費への充当のための切り崩しは、大よそ通貨性預貯金が主なものとなり、有価証券や生命保険の換金化が続き、定期性預貯金は最後の砦的なポジションにあるように見える。80歳以上の世帯でも、ほとんど切り崩しが行われていない。

そこで生活費に充当する想定の貯蓄として、「貯蓄高全体」「通貨性預貯金のみ」「通貨性預貯金+有価証券」の3つのパターンを想定し、それぞれのみを用いた場合の充当余力年数を算出したのが次のグラフ。「貯蓄高全体」は当然定期性預貯金も含まれるため、該当世帯にとっては「最後の手段」的な選択肢といえる。

例えば60代後半で貯蓄高全体は27.8とあるので、現在世帯主が60代後半の高齢年金生活夫婦世帯において、手持ちの貯蓄すべてを生活費の補てんに回した場合、あと28年ぐらいは持つ計算になる。

↑ 現時点の貯蓄残高であと何年実収入の不足分を補えるか(2014年、夫婦とも65歳以上で無職・他に同居人無し世帯、世帯主年齢階級別)(年)
↑ 現時点の貯蓄残高であと何年実収入の不足分を補えるか(2014年、夫婦とも65歳以上で無職・他に同居人無し世帯、世帯主年齢階級別)(年)

今件は平均値を元にした試算であり、加えて経年による状況変化も加味されていない。上記の通り、通貨性・定期性預貯金は年の経過とともに利子が上乗せされ、貯蓄性のある保険は満期を迎えれば相応額が通貨性預貯金へとシフトする。有価証券は株価の変動に伴い額面が大きく上下する。さらに対象者の歳がかさむに連れて必要となる生活費は医療費などで上乗せされるだけでなく、イレギュラー的な出費もありうる。その上、前述の通り配偶者の状況変化もありうる。

それらの影響を無視した上での試算ではあるが、現在の70代前半までは通貨性預貯金の切り崩しだけでは生涯の生活費の補てんは難しいことが分かる。有価証券の切り崩しまで考慮してもギリギリといったところか。逆に70代後半以降になると、通貨性預貯金でも余裕で補てんし切れることが推測される。

なお貯蓄高全体をはじめ、各年齢層でさほど額面に大きな違いが無いにも関わらず、ここまで年数に差が出るのは、ひとえに各層で切り崩し額が異なるため。実収入(多くは年金)もほとんど差異は無いが、実支出が大きく違い(食費や娯楽などで下の年齢世帯の方が大きな額となる)、結果として切り崩し額は上の年齢世帯の方が少なくて済む。

それぞれの属性が定年退職を迎えるまでにどれだけ貯蓄できたか、貯蓄可能な社会環境にあったかも多分に影響するが、平均余命を考慮すると、全貯蓄を使い切る前提ならば65歳以上の高齢年金生活夫婦世帯は十分な貯蓄を有しており、70歳以上では明らかに「自分の貯蓄を生活費として使い切る」には残高が多い。これは遺産を考慮していることに加え、いつ不必要になるかは自分自身でも分からないため、残高が少なくなってくると不安が募るようになることから、少しでも残高は多い方が良いとの考えが強まるのが原因だと考えられる。現時点の世帯主年齢階層別の貯蓄残高の推移を見ても、歳と共に減る額があまりにも少ないのが、その裏付けとなる。

一方、本人が往生したあとの貯蓄は遺産などとして他の人に譲り受けされ、市場に出回るが、それまでは使われることなく滞留していると解釈できる。また、いわゆるライフプラン(金銭的な観点を重視した人生の生涯設計)では、平均余命を元にお金の出し入れを試算していくことになる。

今件試算から何らかの結論を導くことはあえてひかえるが、色々と考えさせられる結果には違いない。


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