新聞と携帯電話の世帯年収別利用状況(最新)

2023/05/28 02:28

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2023-0519情報配信を行う媒体の多様化、特にインターネットに関連したデジタル技術の伸張に伴い、紙媒体の相対的価値観が減少し、需要は減少しつつある。またその媒体に載せるコンテンツを制作する業界内部における経年劣化、金属疲労的な実態、あるいは実情の暴露機会も数多く指摘され、結果として価値をさらに押し下げているとの分析もある。それでは昨今、低所得層においても生活必需品として欠かせないと言われている新聞は、本当に現在必需品足りえる存在なのだろうか。同じようにコンテンツを取得するツールとして今や生活必需品的認識の強い携帯電話(従来型携帯電話、スマートフォン双方を意味する。以下同)と併せ、総務省統計局が2023年2月7日付で発表した、【家計調査報告(家計収支編)における2022年分平均速報結果】の各種データを基に、状況を見ていくことにする。

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グラフ作成に用いるデータの取得方法などは、これまでの「家計調査報告(家計収支編)」関連の記事にある通り。また購入世帯率や世帯購入頻度などの言葉の概念は、先行記事【雑誌や書籍の支出金額(家計調査報告(家計収支編)・総世帯版)】にて解説しているので、そちらを参照のこと。

次に示すのは二人以上世帯全体(勤労者(勤め人。無業者は該当しないが、他に役員や自営・自由業者も該当しない)世帯以外に、就業者が世帯にいない年金生活者世帯(年金も収入に含まれるので無収入ではない。貯蓄の取り崩しは収入ではない)も含む)における、世帯別新聞購読率・携帯電話通信料支払率の、世帯年収別推移。さらに購読・支払世帯における支払金額も算出した。なお今件では「新聞購読料支払世帯は月極での購入」「携帯電話通信料を支払う世帯は携帯電話を所有している」前提で計算している。また単身世帯はデータが存在しないので精査は不可能。

↑ 新聞購読・携帯電話通信料支払率(二人以上世帯、世帯年収別)(2022年)
↑ 新聞購読・携帯電話通信料支払率(二人以上世帯、世帯年収別)(2022年)

↑ 新聞購読・携帯電話通信料支払金額(二人以上世帯、購読・支払世帯限定、月額、世帯年収別、円)(2022年)
↑ 新聞購読・携帯電話通信料支払金額(二人以上世帯、購読・支払世帯限定、月額、世帯年収別、円)(2022年)

まず料金の支払率、つまり実質的な普及率だが、新聞はおおよそ低年収の世帯の方が普及率が高い(250-300万円未満の層が一番高い)。ただし1000万円以上に限れば高年収の世帯の方が高い傾向も見受けられる。100%を超えている層がある場合、計算上は1世帯あたり2部以上か、月極以外にも単発で周期的に購入している世帯があることになる(実際【月極で新聞を取ってる人はどれぐらいいるのだろうか】にもある通り、数%だが複数紙を購読している世帯は存在する)。ただし2022年ではそのような実例は確認できなかった。他方、携帯電話はおおよそ低年収の世帯ほど低普及率ではあるが、その差は200万円未満の世帯を除けば大きくても20%ポイント程度でしかない。

利用世帯の支払金額は、新聞ではほぼ一定。1紙あたりの月額料金にさほど差が無いこと、多くの購入世帯では1紙の購読であることを考えれば当然の話ではある。他方携帯電話は利用の仕方で費用が大きく変わる、子供のいる・いないなど世帯構成などによって世帯内所有台数が変わる、さらに利用している携帯電話の種類(従来型携帯電話かスマートフォンか)でも料金に大きな差が出ることから、おおよそ高年収の世帯ほど金額が上昇していく。

この結果のみを見ると、「新聞は低年収世帯においてはコンテンツ、情報取得のために欠かせない存在」との主張も間違っていないように判断できる。しかし二人以上世帯には勤労者世帯以外に就業収入が無く年金と貯蓄の取り崩しで生活をしている世帯(年金生活者)も多分に含まれていること、年金生活者は世帯年収こそ低いものの、生活費の少なからずを資産の取り崩しで充当している実態から、実生活様式と額面上の世帯年収との間には、勤労者世帯と比べて差異が大きく出ることを考える必要がある。

そこで実質的な年金生活者世帯を除外できる、勤労者世帯に限り、上記グラフを再構築したのが次の図。

↑ 新聞購読・携帯電話通信料支払率(二人以上世帯のうち勤労者世帯、世帯年収別)(2022年)
↑ 新聞購読・携帯電話通信料支払率(二人以上世帯のうち勤労者世帯、世帯年収別)(2022年)

↑ 新聞購読・携帯電話通信料支払金額(二人以上世帯のうち勤労者世帯、購読・支払世帯限定、月額、世帯年収別、円)(2022年)
↑ 新聞購読・携帯電話通信料支払金額(二人以上世帯のうち勤労者世帯、購読・支払世帯限定、月額、世帯年収別、円)(2022年)

利用者世帯の支出金額動向はさほど変わりはなく、おおよそ新聞は一定、携帯電話は高年収の世帯ほど上昇していく。ただし低年収の世帯ではそれなりに高い値が出ており、家計の観点で無理をしているようすがうかがえる。利用世帯における世帯年収別の利用内情(使い方)は、勤労者世帯に限ってもそれほど変わりがない。他方支払率=普及率は一部イレギュラーが生じているものの、新聞は多分に高年収の世帯ほど高い値、そして携帯電話は世帯年収による差異があまり出ていない。200万円未満の世帯で低めに出ている程度。

つまり現役就労層に限れば「低年収の世帯における生活必需品」は、新聞と携帯電話の二択ならば新聞よりもむしろ携帯電話であり、新聞は優先順位としては低いことが推定できる。そして逆算すれば、新聞を「低年収の世帯における生活必需品」的な立ち位置に押し上げているのは、二人以上世帯においては非勤労者世帯、おおよそ高齢年金生活者世帯が該当していることとなる(若年層では年金生活者は存在しえない)。

実際、世帯主の年齢階層別で区切り直すと、まさにその通りの結果が出る。

↑ 新聞購読・携帯電話通信料支払率(二人以上世帯、世帯主年齢階層別)(2022年)
↑ 新聞購読・携帯電話通信料支払率(二人以上世帯、世帯主年齢階層別)(2022年)

↑ 新聞購読・携帯電話通信料支払金額(二人以上世帯、購読・支払世帯限定、月額、世帯主年齢階層、円)(2022年)
↑ 新聞購読・携帯電話通信料支払金額(二人以上世帯、購読・支払世帯限定、月額、世帯主年齢階層、円)(2022年)

世帯主の年齢とともに新聞の支払率=普及率は上昇していく。他方、携帯電話は70歳以上でやや下がるが、60代まではおおよそ9割台をキープしている。広範囲の世帯に普及浸透しているか否かの観点では、はるかに携帯電話の方が上となる。

なお高齢者世帯で携帯電話の利用者世帯における利用料金が大きく下がっている。これはスマートフォンではなく、利用料金が安上がりで済む従来型携帯電話を利用している人が多いのが要因。これは【携帯電話の普及率現状】など他の複数調査からも明らかになっている。また、世帯構成員が少ない(同一世帯内に子供がいない場合が多い)のも要因。

↑ スマートフォン普及率(世帯主年齢階層別)(2022年)(再録)
↑ スマートフォン普及率(世帯主年齢階層別)(2022年)(再録)

↑ 従来型携帯電話普及率(世帯主年齢階層別)(2022年)(再録)
↑ 従来型携帯電話普及率(世帯主年齢階層別)(2022年)(再録)

もとより同じ「コンテンツ、情報を取得するツール」的立場にある新聞と携帯電話だが、厳密には前者がコンテンツそのものを創生する業界、企業をも多分に包括しているのに対し、携帯電話はあくまでも純粋なインフラであり、そのインフラに乗る形で配信されるコンテンツまでは今件のような普及率関連の話では内包されない。同一次元で比較するのは、多少無理がある。

とはいえ、金銭面やメディア論の上で、両者がよく比較されるのも事実。特に世帯年収で難儀している人において、情報伝達のためのツールは何が普及しているのか、考えさせられる実情には違いない。


■関連記事:
【月極で新聞を取ってる人はどれぐらいいるのだろうか】
【週刊誌や雑誌、書籍の支出額…購入世帯率や世帯購入頻度の移り変わり(家計調査報告(家計収支編)・二人以上世帯版)(最新)】
【複数データを基にした携帯電話の普及率推移】

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