博報堂で新聞とラジオが堅調だがテレビは両社マイナス、インターネットは両社とも2割以上の上昇(電通・博報堂売上:2015年10月分)

2015/11/12 13:00

博報堂DYホールディングスは2015年11月11日、同社グループ主要3社(博報堂、大広、読売広告社)の2015年10月分の売上高速報を公開した。一方、電通も同年11月11日付で、同じく同社10月分の単体売上高を公開している。これにより日本国内の二大広告代理店における2015年10月次の売上データが一般公開されたことになる。今回は両社の主要種目別売上高の前年同月比、そして各種指標を過去の公開値などを基に独自に算出し、その動向などから各種広告売上動向、さらには広告業界全体の動きを確認していく。

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博報堂は4マスも一部で堅調さを見せる、ネットは相変わらず好調


データ取得元の詳細な情報、各項目における算出上の留意事項、さらに今件カテゴリーの過去記事は【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】に収録・記載済み。今件記事に合わせ、そちらで確認のこと。

まずは両社の主要項目ごとの前年同月比を計算し、グラフ化する。

↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2015年10月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2015年10月分種目別売上高前年同月比

4大従来型メディア(かつては4大既存メディア)と当サイトでは命名している昔ながらの主力メディア、具体的にはテレビ・ラジオ・新聞・雑誌の動向を確認すると、今回月は電通は全項目でマイナス、博報堂は新聞と雑誌、ラジオがプラス。特に新聞とラジオは誤差レベルを超えた明らかなプラスへの動きを示している。

電通は新聞がマイナス12.5%と1割超え、雑誌もマイナス7.3%と無視できない下げ幅。紙媒体が軟調な状況は、類似の解説記事である経産省の広告業動向でも指摘しているが、今回月は電通にのみその動きが連動したようだ。

今回月の4マスのうちもっとも大きな上げ幅を示した博報堂の新聞だが、前年同月の値はマイナス1.2%。その時には「新聞が不調」とのコメントもしたが、これを考慮して2年前同月比を試算してもプラス13.1%、年平均でプラス約6.3%。前回月は2年前比で2割強のマイナスを示していたため、博報堂で新聞特需の類が発生したのかもしれない。

他方テレビは両社とも小幅ながらのマイナス。ただしテレビ項目の金額は大きいため、たとえ下げ率がわずかでも、金額面では大きな影響を全体に与えることとなる。今回月ではプラス圏を示す項目が比較的多いものの、全体としては小幅な上げ幅に留まっているのは、テレビの軟調さによるところが少なくない。例えば電通では前年同月比で実額はマイナス13億円近いが、これは今回月の同社のラジオ広告費全額よりも大きなものとなる。

従来型広告は一部をのぞけばそこそこの順調さ。これらの動きを見るに、昨今の状況に関しては広告業界全般の不調では無く、4マスの不調と表現した方が適切な感は否めない。

電通に限るが2年前比を試算すると次の通り。

↑ 参考:電通2015年10月度単体売上(前々年同月比)
↑ 参考:電通2015年10月度単体売上(前々年同月比)

4マスではテレビがギリギリでプラス(厳密には0.04940%)、そしてそれ以外の4マスはすべてマイナス。特に新聞が他に類を見ない程の下げ幅を示していることが確認できる。ちなみに年ベースで再計算すると新聞の動向はマイナス8.8%となる。

各年10月における電通の売上総額の推移を確認


次のグラフは電通の今世紀(2001年以降)における、今回月となる10月を基準にした毎年10月分の売上高総額をグラフにしたもの。年を隔てた上で同月における比較となるので、選挙やオリンピック、FIFAワールドカップのような、広告と深い関係を持ち売り上げに大きく影響を与える事象が無い限り、季節による変動を気にせず中期的な動向を確認できる。あくまでも電通だけの話だが、大いに参考になる。

↑ 電通月次売上総額推移(各年10月、億円)(-2015年)
↑ 電通月次売上総額推移(各年10月、億円)(-2015年)

大よそではあるが景況感を反映した値動きを示している。ITバブルの崩壊と不況、景気の回復、金融危機の勃発、リーマンショックによる景気悪化の加速、そしてそこからの立ち直り、震災や極度の円高に伴う低迷感、そして回復へ。2013年以降は上昇がゆるやかなものとなり、10月に限定すれば、回復感はまだ弱く、金融危機前の景況感にまでは達していない。

なお今件記事では日本の大手広告代理店として、売上高、取扱い領域の幅広さ、対象地域の広さ、日本国内に与える影響力など、多数の面で最上位陣営となる電通と博報堂2社の動向を精査している(もちろん日本には両社以外にも多数の代理店が存在する)。一方で両社は同程度の規模では無く、売上・取扱広告の取扱範囲には小さからぬ違いがある。ところが今件記事上記グラフでは総額では無くあくまでもそれぞれの部門における前年同月比を示し、両社の分を併記していることもあり、その値が両社の売上と誤解される場合がある。

そこで次に両社部門の具体的な売上高を併記したグラフを生成し、その実情を確認する。それぞれの部門の具体的な市場規模や、両社間における違いが、成長度合いでは無く現状の売上の観点で把握できる。

↑ 電通・博報堂DYHDの2015年10月における部門別売上高(億円)
↑ 電通・博報堂DYHDの2015年10月における部門別売上高(億円)

インターネットは毎月目覚ましい成長率を計上しているものの、売上金額=市場規模としては他のメディアと比較すると、どんぐりの背比べレベルでしかない。また、4マス以外の従来型広告市場が大きな規模を示していること、テレビの広告市場がひときわ巨大であることなどが一目でわかる。電通、博報堂共に、各社の全売り上げの4割を超える額面を示している。

一方電通と博報堂間では、全項目で電通の方が単月売り上げは上。部門によって得手不得手があるため、ラジオのようにほとんど変わらない部門もあれば、テレビのように約2倍の差を示す部門もある。

「その他」も差異が大きいが、これは両社間における取扱い事業の違いに加え、「その他」の仕切りそのものの問題も多分にある。メディア技術の進化に伴い、複合型の広告も増え、従来の仕切りでは分別しにくいタイプの広告が増えている。それらは「どれにも当てはまりにくいので『その他』行き」となると考えられ、年々「その他」に該当する項目が増えてしまい、金額も積み増しされてしまう。

この「その他」の区分内容の膨張問題は、経産省の特定サービス産業動態統計調査における広告業の調査でも生じている。他項目も含めた再統合では調査データの連続性が失われてしまうため、「その他」の内部における仕切り分けの追加を求めたいところではある。もっとも電通に限ってもこの項目は「衛星その他のメディア、メディアプランニング、スポーツ、エンタテインメント、その他コンテンツなどの業務」とあり、2分割や3分割程度の細分化は難しいのも事実。さらに細分化されると、電通と博報堂両社における共通性が無くなる可能性もあり、(両社それぞれにおいては何の問題もないのだが)比較する点では問題を抱えることになる。



今回分の2015年10月分は博報堂が4マスの上で幾分の健闘をしたこともあり、起伏にとんだ結果となった。もっとも、額面が最大の項目であるテレビの軟調さがたたったのか、全体値の上昇は今一つ。また先月ほどではないが、やはり全体としての4マスの今一つ感は否めない。経産省の広告費動向でも同様の、今年以降の弱い動きが確認されており、気になる動きではある。

↑ 月次における4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(電通、2015年1月以降)
↑ 月次における4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(電通、2015年1月以降)

電通や博報堂に限らず、広告業界全体で、小さからぬムーブメントが起きているのかもしれない。


■関連記事:
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(上)…4マス+ネット動向編】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(下)…ネット以外動向概況編】

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