子供の書籍離れなど無い…小中高校生の平均読書冊数などをグラフ化してみる(2015年)

2015/11/19 11:00

携帯ゲーム機やスマートフォンなどのデジタル機器の普及、地方の個人経営の本屋の相次ぐ閉店、出版業界の不振など、子供の本離れを想起させる環境変化が相次いでいる。その実態はどのようなものなのだろうか。本当に子供達は本離れを起こしているのか。今回は全国学校図書館協議会が公開している【「図書に役立つ資料」】の中から、同協議会が毎日新聞社と共同で毎年実施している「読書調査」の公開データをもとに、小中高校生の児童生徒における読書状況を確認していくことにする。

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小中高校生の読書冊数はむしろ増えている


次以降に示すのは全国学校図書館協議会と毎日新聞社が毎年6月前後に全国小中高校に対して実施している、読書に関する調査結果「学校読書調査」の公開データを元にしたもの。直近2015年分は選定基準により全国から求めた調査対象校に在学する児童・生徒のうち、各学年につき1学級を選定し、6月の第1・2週にクラス毎に集団質問紙法で、先生が説明をしながら生徒が回答を記入する方式を用いている。対象人数は小中高それぞれ4000人強。

次に示すのは該当生徒における一か月間の平均読書冊数。今調査では2014年分において別項目で電子書籍について尋ねていたことから、該当書籍は紙媒体のものに限られる(欧米はともかく日本ではまだ、一般的には「読書」との言葉で電子書籍・雑誌を対象とする認識は少数派に留まっている)。また雑誌は別項目で尋ねており、今項目は純粋に書籍に限定される。

↑ 1か月間の平均読書冊数推移(該当年5月、冊数)
↑ 1か月間の平均読書冊数推移(該当年5月、冊数)

↑ 1か月間の平均読書冊数推移(該当年5月、冊数、直近10年分)
↑ 1か月間の平均読書冊数推移(該当年5月、冊数、直近10年分)

2000年前後まではほぼ横ばい。それ以降は本離れどころかむしろ増加の傾向にある。特に小学生において増加は著しい。直近の2015年では小学生が11.2冊、中学生は4.0冊、高校生は1.5冊との結果が出ている。

2000年前後からの上昇、特に小学生において目覚ましい伸びを示しているのは、いくつかの理由があるが、最大の要因は1988年に船橋学園女子高校(現・東葉高校)で実践が始まった「朝の10分間読書」運動であるとする説が有力。これは読書の習慣を身に着けるために毎朝10分間、始業時間前に読書の時間を設けるとのもので、「皆で同時に行う」「毎日行う」「読む本は自由」「読むだけ」の4原則のもとに行われることになっている。対象の本は生徒が持参したものでも、学級文庫などでも良い。

2001年に文部科学省が「21世紀教育新生プラン」を呈し、その中で「朝の読書活動の推進」を具体的に掲げたことから(【文部科学省内 21世紀教育新生プラン】)、今件活動は特に小学校の間に浸透することとなった。また教材の文章と並行する形で学校の図書館などが保有する書籍を読書させる「並行読書」などの学習スタイルも推し進められており、これも小さからぬ影響を与えているようだ。

これに伴い読書をしない子供「不読者数率」も2000年前後を区切りとして大きく減少の動きを示している。

↑ 1か月間の不読者数率(該当年5月、冊数でゼロ冊回答者率)
↑ 1か月間の不読者数率(該当年5月、冊数でゼロ冊回答者率)

↑ 1か月間の不読者数率(該当年5月、冊数でゼロ冊回答者率、直近10年)
↑ 1か月間の不読者数率(該当年5月、冊数でゼロ冊回答者率、直近10年)

読書冊数の増加傾向は小学生で著しいが、不読者数率の減少はむしろ中学生の方が目覚ましい成果を出しているのが分かる。直近2015年では小学生は4.8%、中学生は13.4%、そして高校生は51.9%。類似の他の調査同様、高校生は幾分本になじまない傾向があるようだ。

雑誌は……離れている気配が強い


同調査では定期的に書籍だけでなく雑誌も対象とされている。こちらは書籍とはうってかわり、紙媒体離れが顕著な結果が出ている。記事執筆時点で取得可能な値は、この領域では2014年分が最新のため、今回はそれに従い状況を確認する(公開データの取得可能領域の関係から、1994年から2003年までは値が存在しない状態でのグラフ生成となっている。実データは存在しており、元記事にはグラフが形成されている)。

↑ 1か月間の平均読書冊数推移(雑誌、該当年5月、冊数)
↑ 1か月間の平均読書冊数推移(雑誌、該当年5月、冊数)

↑ 1か月間の平均読書冊数推移(雑誌、該当年5月、冊数、直近10年)
↑ 1か月間の平均読書冊数推移(雑誌、該当年5月、冊数、直近10年)

いくぶん凸凹はあるものの、大よそ漸減の形で減少している。

当然のことながら不読者数率は漸増傾向にある。

↑ 1か月間の不読者数率(雑誌、該当年5月、冊数でゼロ冊回答者率)
↑ 1か月間の不読者数率(雑誌、該当年5月、冊数でゼロ冊回答者率)

↑ 1か月間の不読者数率(雑誌、該当年5月、冊数でゼロ冊回答者率、直近10年間)
↑ 1か月間の不読者数率(雑誌、該当年5月、冊数でゼロ冊回答者率、直近10年間)

特に高校生はこの数年、急激に不読者数率が上昇しているのが目に留まる。報告書では解説は無いものの、書籍と比べて手軽・時間つぶし的な要素の強い雑誌の利用者が、スマートフォンなどのインターネットツールへとシフトしたと考えれば道理は通る。その仮説が確かなら、この数年で似たような傾向を中学生も見せ始めるはずだ。



「子供の本離れ」は教育関係者らの努力なども成果を結び、むしろより距離感を緊密なものとしている実態が明らかになっている。一方雑誌は元々距離を置く傾向にあったが、携帯電話などの代替手段の登場、浸透に伴い、特にこの数年は急速に読まない人の増加、読む冊数の減少が見受けられる。

とりわけ興味深いのが、現在スマートフォンの普及率が9割前後に達している高校生。この数年で従来型携帯電話、そしてスマートフォンへのシフトが急激に進み、それに合わせる形で雑誌との距離感が急激に遠のく形となり、書籍とのポジションが完全に逆転する形となってしまった。

↑ 1か月間の不読者数率(該当年5月、冊数でゼロ冊回答者率、直近10年間、高校生)
↑ 1か月間の不読者数率(該当年5月、冊数でゼロ冊回答者率、直近10年間、高校生)

↑ 1か月間の平均読書冊数推移(該当年5月、冊数、直近10年間、高校生)
↑ 1か月間の平均読書冊数推移(該当年5月、冊数、直近10年間、高校生)

今後もこの動きは継続するであろうし、高校生同様に普及率の上昇が目覚ましい中学生でも、そう遠からずのうちに似た動きが確認できるに違いない。


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