貸与型奨学金の返済不安は約8割、給付型の拡大希望者は7割超え

2015/11/27 10:43

このエントリーをはてなブックマークに追加
神奈川大学は2015年9月30日、奨学金と給費生制度に関する調査結果を発表した。それによると調査対象母集団のうち高校生と大学生においては、奨学金制度に関する情報が不足していると感じている人は約2/3にのぼっていることが分かった。また貸与型の奨学金に関して返済への不安を感じている人は8割近く、利用を検討している高校生では9割近く居ることも明らかになっている(【発表リリース:奨学金と給費生制度に関する意識調査2015】)。


スポンサードリンク


今調査は高校生・既卒生・大学生と、高校生・既卒生・大学生の子供を持つ親それぞれに対しインターネット経由で2015年7月31日から8月6日にかけて行われたもので、有効回答数は1000件。有効回答から子供・親が均等割り当てになるようにランダム抽出。内訳は高校生221人、既卒生10人、大学生269人、高校生の親249人、既卒生の親12人、大学生の親239人。調査実施機関はネットエイジア。

今調査対象母集団のうち高校生・大学生に、奨学金制度に関する情報が不足しているか否かを2択で尋ねたところ、不足しているとの回答をした人は66.2%に達した。学校では相応な情報提供をしており、昨今ではインターネットにアクセスできる環境があれば十分以上の情報収集ができるはずだが(それこそ学校や図書館のネット環境を借りても良い。大義名分は十分にある)、それでもなお2/3近くの人が不足感を覚えている。公的機関による分かりやすい、そして集約的、ガイダンス的なポータルサイトが必要なのかもしれない。

さて、その奨学金についてだが、大きく分けると卒業後に何らかの形で返済が必要な貸与型と、給付として受け取れ返済の義務が無い給付型の2種類がある。貸与型に関しては卒業後に少なからぬ額の負債を抱える状況となることが問題視されているが、これは例えばアメリカにおける学生ローンでも同じ状況にある(その実情を受け、卒業後しばらくは返済を猶予する制度もある)。

これらの状況に関して、奨学金を受ける・受けられたであろう立場の高校生や大学生に、その心境を尋ねた結果が次のグラフ。

↑ 貸与型奨学金の返済への不安、給付型奨学金の利用機会の拡大について(2015年7月)
↑ 貸与型奨学金の返済への不安、給付型奨学金の利用機会の拡大について(2015年7月)

当然ではあるが今後奨学金を利用する予定のある高校生の方が、貸与型奨学金の返済負担への不安は大きく、返済義務の無い給付型の奨学金の利用枠の拡大を望む人も多い。高校生・大学生を合わせた全体から、10%ポイント以上の値をつけている。

他方、奨学金制度を利用する予定が無い、あるいはすでに大学生で申請の機会を逃した人も含めた全体でも、78.4%が返済負担の大きさに懸念を持ち、72.4%が給付型の機会拡大を望んでいる。

給付型の奨学金は多様な種類のものがあるが、そのうちの一つとして挙げられるのが給費生制度。リリースの説明によると

給費生制度とは、入学試験の成績が優秀だった者などに、一定額の学費を給付したり、学費の免除をしたりする制度です。また、この制度を利用して大学に通う学生を、給費生と呼びます。

とあり、要は有望な技能を持つ生徒を優遇する、金銭面でサポートする制度を意味する。受験生の立場からは世帯負担を減らせる機会を得られ、大学側は予算面での負担は生じるが優秀な生徒を呼び集め、その学生が金銭的な事情で中退せざるを得なくなるリスクを減らさせることができる。すべての大学が実施しているわけではないが、昨今では授業料の家計への負担増や大学側における学生の確保難などもあり、導入を行う大学が増えている。

そこで高校生と大学生に対し、まずは予備知識を与えずに「給費生制度を知っているか」と尋ねた結果、その上で詳細を説明した上でその制度を実施している大学に関心があるか、さらにその制度を実施している大学の受験を希望するか・したかったか(大学生の回答者はすでに大学に入学しているので、受験希望はできない)を尋ねた結果が次のグラフ。

↑ 給費生制度の認知・関心(2015年7月)
↑ 給費生制度の認知・関心(2015年7月)

実のところ給費生制度の認知度は低く、1/4前後でしかない。そして興味関心を抱く人は5割前後、さらにその制度を自身で活用してみたい(活用できるようにチャレンジしたい)との人も5割前後に達している。関心がある人に比べて実際に希望したい人がやや低めなのは、誰もが適用されるわけではなく、入学試験の成績優秀者のような高めのハードルがあるからだと考えられる。

また意外にも、これから実際に制度活用の機会がある高校生よりも、すでに大学に入学している大学生の方が、関心度や希望度合いは高い。これはリリースでも解説されているが、すでに金銭的な負荷を覚えている人が多く、その負荷が少しでも除けうる制度があるのなら、使ってみたかった、挑戦してみたかったとの心境が、現役高校生よりも値を上乗せする結果をもたらしているのだろう。

今回調査を実施した神奈川大学でも給費生制度は実施されている。インターネット上で検索すれば、あるいは居住地域の近辺で、自身の希望する学部・施設を有し、給費生制度を持つ大学があるかもしれない。高校生で大学受験を考えている人は、まず関連する情報を手に入れる能力を身に付けるか、少なくとも探せる・探してもらえるつてを手に入れるよう、お薦めしたい。


■関連記事:
【バイトは6割、小遣いや仕送り5割強、奨学金は1/3強…大学生のお財布事情を探る】
【大学生の奨学金受給者率推移(2014年)(最新)】
【奨学金事業の推移(2014年)(最新)】
【60年あまりの大学授業料の推移(2015年)(最新)】


スポンサードリンク


関連記事


このエントリーをはてなブックマークに追加
▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2024 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー|Twitter|FacebookPage|Mail|RSS