「ハイリスク・ハイリターン」な金融資産、欲しい? 要らない? (2014年)

2014/11/26 14:00

金融広報中央委員会の「知るぽると」は2014年11月5日、同会が毎年調査定期的に発表している「家計の金融行動に関する世論調査」の最新版、2014年分を公開した。今回はその公開値、さらには過去のデータとあわせ、「ハイリスク・ハイリターンの金融商品への願望」についてチェックを入れていくことにする。投資と投機の区別はおろか、期待値計算によるリスク勘案ですら浸透しているとは言い難い現状で、高リスク・高リターンの金融商品に対するイメージはどのような実態を有しているのだろうか(【知るぽると:調査・アンケート公開ページ】)。

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金融商品には「絶対儲かる」ものは無い。リスク(マイナスの結果を生み出す可能性)の大小と、そのリスク込みの商品を選ぶことで得られるかもしれないリターン(利益、収益)のバランスを考え、購入者自身で選択することができる(「買わない」のも選択の一つ)。今件項目では「元本(投入した資産)割れを起こす可能性があるが、収益性が高いと見込まれる金融商品」、つまり「損をするかもしれないが大きく儲けられる可能性がある金融商品」について、今後1-2年間における購入・保有性向を尋ねている。例えば株式、投資信託が該当する(預貯金などは該当しない)。

直近の2014年のデータでは、購入そのものを希望しない人が単身者で63.5%、二人以上世帯で81.5%に達している。特に(世間一般に言うところの)「世帯持ち」で、リスクを極力避ける傾向が見受けられる。

↑ ハイリスク・ハイリターン金融商品の保有について(2014年)
↑ ハイリスク・ハイリターン金融商品の保有について(2014年)

四半期ごとに日銀から発表される資料を元に記事化している「家計資産推移」でも明らかだが(直近は【日米の家計資産推移をグラフ化してみる】)、日本では諸外国と比べて(特に金融方面で)リスクを敬遠する傾向が強い。正確には冒頭でも触れている通り、「リスクとリターンの正しい関係」を習得していない感がある。あるいは強固な慎重さを持っている、と表現すべきか。

また世帯種類別では二人以上世帯の方がリスクを強く避ける動きがある。これは「家族」という守るべきものがあることや、リスクが生じた時に自分以外に迷惑がかかる対象が多いとの気負いがあるからだと考えれば道理が通る。

今調査項目の結果は2007年以降の値が取得可能。それらをまとめてグラフ化したのが次の図。単身・二人以上双方の世帯で、少しずつ反動を経ながらリスク回避傾向が強まっているのが確認できる。

↑ ハイリスク・ハイリターン金融商品の保有について(単身世帯)
↑ ハイリスク・ハイリターン金融商品の保有について(単身世帯)

↑ ハイリスク・ハイリターン金融商品の保有について(二人以上世帯)
↑ ハイリスク・ハイリターン金融商品の保有について(二人以上世帯)

元々リスク性向へ立ち向かう勢いが強かった単身世帯の方が、リスク回避へと流れて行く動きも大きなものとなっている。2007年といえば直近の金融危機…サブプライムローンショックに始まりリーマンショックに続く、長きに渡る不景気時代…が体現化した年でもあり、「リスクを避けよう」という考えが支配的になるのも理解はできる。

直近データとなる2014年分を中心に精査をすると、単身世帯では2012年を底値に少しずつ積極的な保有姿勢を見せる人が増えるものの、その分消極姿勢の人が減っており、購入を拒否する人の割合は変わらない……どころかいくぶん増える動きを見せている。要は購入志向の人はより積極的に移行し、非購入志向の人が少しずつ増加するという、二極化かつ先鋭化の動きが見える。他方二人以上世帯ではやはり2012年を底値とし、少しずつだが消極・積極保有姿勢を示す人が増えている。

双方とも2012年を底値にしていることから、株価や景気動向の変化を受け、投資に対する姿勢が少しずつ変化を見せている雰囲気がある。一方同じような環境変化の中で、単身世帯と二人以上世帯の間に生じた変化の中身に違いが生じているのは興味深い。



「家計資産推移」でも中期的な傾向として「現金・預金」比率の増加と、2012年以降の金額面における株式や投資信託の増加は確認されていたが、今回別の視点からも「日本の世帯におけるリスク回避の動きの強まり」「2012年以降の金融資産に対する姿勢の変化」が明らかになった。一方で以前大きな問題となり、厚生年金制度においても動きを生じさせるきっかけとなったAIJの問題(【消えた企業年金、2000億円の大半...AIJ投資顧問のどたばた】)に代表されるような、金融商品に絡んだ詐称事件が後を絶たない状況を見るに、元々本質的な「安全志向」の他に、本文中でも触れている「リスクとリターンとの正しい関係」に関する知識・経験が不足している雰囲気がある。要は「分からないから手が出さない」。

自分が理解できないものには手を出さない。これは正しい投資の大原則に他ならない。同時に市場環境の改善を待ち望むのであれば、そもそも論として「お金とは何なのか、どのような役割を果たしているのか」関連から、経済や金融の基本的な知識のさらなる啓蒙が必要なのかもしれない。


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