全般的に軟調状態…少女・女性向けコミック誌部数動向(2015年4月-6月)

2015/08/12 14:00

加速度的に展開される技術革新、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀なくされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は先行解説した少年・男性向け雑誌ばかりでなく、少女・女性向けのにも及んでいる。そこで今回は社団法人日本雑誌協会が2015年8月5日付で発表した「印刷証明付き部数」の最新値(2015年4月から6月分)を用い、「少女・女性向けコミック系の雑誌」の現状を簡単にではあるが確認していく。

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トップは変わらず、少女向けはちゃお、女性向けはBE・LOVE


データの取得場所に関する説明、「印刷証明付部数」など各種用語の解説、さらには「印刷証明付き部数」を基にした定期更新記事のバックナンバーは、一連の記事まとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】に掲載している。必要な場合はそちらを参照のこと。

まずは少女向けコミック誌の現状。内容の限りではターゲットとなる読者層は比較的年齢が若い世代、未成年でも高校生ぐらいまでが対象。今四半期も前四半期同様、脱落・追加雑誌は無し。また改名・リニューアル誌も無い。一時期は改名、リニューアル、休刊が相次いだだけに、平穏無事なだけでも嬉しい話には違いない。

↑ 2015年1-3月期と最新データ(2015年4-6月期)による少女向けコミック誌の印刷実績
↑ 2015年1-3月期と最新データ(2015年4-6月期)による少女向けコミック誌の印刷実績

少女向けコミック誌ではトップは「ちゃお」。第2位の「別冊マーガレット」に2.5倍ほどの差をつけており、少年コミック誌の「週刊少年ジャンプ」的な群を抜く部数の多さ。この圧倒的差異をつけた状況は、現在データが取得可能な2008年4月から6月分の値以降継続している。

第2位の「別冊マーガレット」と第3位の「りぼん」は僅差で競っており、何かイレギュラーな動きがあればすぐにでも順位は入れ替わりそう。そしてその後に「花とゆめ」「LaLa」「なかよし」「Sho-Comi」がほぼ同列で続き、その他諸々が後を追いかけている。前四半期と比べパッと見で大規模な変動をしているのは「Sho-comi」の大幅な減退で、これにより「なかよし」との順位が入れ替わっている。

続いて女性向けコミック誌。想定読者層は「少女向け」と比べてやや高めの年齢層。内容的には実質的に大人向けが多く、子供にはあまりお勧めできない(いわゆるR指定は無いが、その判断を下されてもおかしくない)。発行部数は少女向けコミックと比べて少なく、横軸の部数区切りの数字も小さめ。

↑ 2015年1-3月期と最新データ(2015年4-6月期)による女性向けコミック誌の印刷実績
↑ 2015年1-3月期と最新データ(2015年4-6月期)による女性向けコミック誌の印刷実績

トップの「BE・LOVE」(主に30代から40代向けレディースコミック誌)がやや突出、「プチコミック」「YOU」が続く。トップ以外の部数は各誌でそれぞれ類似順位他誌と一定の差異があり、並べるときれいな傾斜が出来ている。ただし第2位と第3位の雑誌はここしばらく激しいつばぜり合いを続けており、今四半期では順位が入れ替わる結果となった。ちなみに部数差は実質333部。

ここ数四半期ほど、順位が大きく変動しているのが「ARIA」。ようやく今四半期では部数・順位共に安定した形となったが、該当ジャンルのコミック誌では一番少ない部数のポジションとなっている。

映画特需で一誌伸びた以外は…四半期変移から見た直近動向


次に前四半期と直近四半期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに雑誌推移を知ることはできる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2015年4-6月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2015年4-6月期、前期比)

プラス領域は「なかよし」のみて、誤差の範囲(振れ幅5%以内)に留まっている。「LaLa」はまったく同数。残りはすべてマイナスで、誤差を超えているのは「LaLaDX」「ちゃお」「Sho-comi」「ザ・マーガレット」の4誌。上記で「Sho-comi」の順位下落について言及したが、この部数の下げが順位にも影響を及ぼした次第である。

今四半期では前四半期比でマイナス1.7%の下げを示した「りぼん」だが、他誌の動向と比べれば健闘を示している。一般週刊誌ならば「SPA!」に近い動き。

↑ りぼんの部数推移(2015年4-6月期まで)
↑ りぼんの部数推移(2015年4-6月期まで)

「りぼん」は「なかよし」「ちゃお」と並び小中学生向けの3大少女向けコミック雑誌。1955年8月に創刊し、すでに半世紀以上の歴史を有している。自分の母親も愛読者だったとの人も多分にいるはず。雑誌不況には勝てず部数を減らしているものの、上記グラフの通り、2011年後半期以降はほぼ20万部がキープされている。固定ファンの多い執筆陣を抱えている、編集方針の大きな変化が無く読者が安心して定期購読できる、毎号魅力的な付録を提供するため、本誌の内容以外の部分でも読者のハートをつかんで離さない手堅いの施策が結果に表れていると評することができる。

「りぼん」の部数は4年ほど横ばいの傾向が続いている。有力作品の映画化やアニメ化など、何かきっかけがあれば大きく伸びる雰囲気ではある。

一方直近四半期では同じような下げ方を示した「別冊花とゆめ」。

↑ 別冊花とゆめの部数推移(2015年4-6月期まで)
↑ 別冊花とゆめの部数推移(2015年4-6月期まで)

美内すずえ氏の「ガラスの仮面」の再開に伴い部数の盛り上がりを見せたものの、ほどなく休載。そしてその後現在に至るまで連載再開には至っていない(2012年7月号分が最後の掲載)。部数の下落も安定してきたことではあるし、そろそろ連載再開で掲載誌の発破をかけてほしいものではある。

続いて女性向けコミック。1誌をのぞき、軟調な動き。

↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック)(2015年4-6月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック)(2015年4-6月期、前期比)

プラスを示したのは「フラワーズ」1誌のみ。部数そのものは3.3万部から3.6万部への上昇。これは同誌掲載の「海街diary あの日の青空」について6月13日付で映画が公開されたのに伴い、さまざまな企画が催されたことによるもの。いわゆる映画特需と呼んでも良いだろう。7月号では巻頭カラー50ページの掲載に加え、付録としてクリアファイルまで添付される形となった。次の四半期も底上げされた部数を維持できるのか、気になるところ。

ここしばらく継続観測を続けている「ARIA」。「進撃の巨人」のスピンオフ作品「悔いなき選択」の掲載開始後、多くのファンを引き寄せ、部数を大幅に底上げしていた。そして同作品が2014年8月号(6月28日発売)で終了し、単行本も全2巻が発売されたあとは、勢いも失速。グラフにある通り部数を急速に落とし、今四半期ではほぼ特需前の水準にまで戻ってしまった。

↑ ARIAの部数推移(2015年4-6月期まで)
↑ ARIAの部数推移(2015年4-6月期まで)

特需前は1.2万部前後で推移していたことから、現在はほぼ同水準にまで戻っている。引き続き新連載などの展開を行っているものの、部数底上げにはつながっていない。他誌と比べて印刷部数そのものが少ないため、何か起きた際の余力が少ないのが不安要素。

下げ基調の雑誌多数…前年同期比


続いて「前年同期比」による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による変移を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2015年4-6月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2015年4-6月期、前年同期比)

プラスの動きを示す雑誌はゼロ。5%超、つまり誤差範囲を超えた下げ幅を示した雑誌は9誌で、前四半期と変わらず。その領域から逃れた「誤差範囲内の下げ幅に留まっている」雑誌は「別冊花とゆめ」「ちゃお」「別冊フレンド」「りぼん」「別冊マーガレット」の5誌。この5誌は前四半期も同じ誤差範囲内にあり、現状の環境を考慮すれば健闘組と見ても良い。

逆に10%超の雑誌5誌のうち、前四半期でも同じポジションにあったのは「なかよし」「Cheese!」「Sho-comi」の3誌。何らかの対策が求められている状況に変わりはない。

続いて女性向けコミック。

↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック誌)(2015年4-6月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック誌)(2015年4-6月期、前年同期比)

「海街diary あの日の青空」の映画化特需で前期比が盛り上がった「フラワーズ」が前年同期比でも大きく伸びている。同誌は元々3.3万部をほぼ維持し続けていることもあり、今回の3000部上乗せは前年同期でも大きなプラスとして計上される形となった(上昇率は同じプラス9.1%)。

「ARIA」は前述の通り「進撃の巨人」特需の反動によるもの。2/3ほどの減退は驚異的な値に違いない。まさに巨人去りし後。その「ARIA」の下げから他の雑誌の動向がかすんでしまっているが、5%を超えた下げ幅を見せる雑誌も「ARIA」以外で7誌。好ましい状況にあるとはいえない。



数四半期前にピックアップした「別冊マーガレット」の「俺物語!!」のアニメ化が決定し、現在好評展開中ではあるが、それによる相乗効果的な部数増加は今四半期では確認できなかった。購入層にはあまり受け入れられなかったようだ。

男性向けの雑誌と比べて女性誌は、通学はともかく通勤状況を見る限りでは、「すき間時間を費やす」目的としての雑誌需要の影響は少ない。少女・女性向けコミック誌は男性向け雑誌以上の減退ぶりを示している。インターネット、特にスマートフォンによる情報のやり取りが、男性よりも女性の方が積極的に行われるのも、女性向けコミック誌の減退が著しい要因の一つだろう。むしろそれを利点とし、ネットとのリンクを重視した雑誌展開が、あるいは起死回生の手立てとなるかもしれない。


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