テレビはプラスを維持、ネットはプラス17.9%と大きく伸びる(経産省広告売上推移:2015年10月発表分)

2015/10/09 16:00

経済産業省は2015年10月9日、「特定サービス産業動態統計調査」の2015年8月分における速報データ(暫定的に公開される値。後程確定報で修正される場合がある)を、同省公式サイトの該当ページで公開した。その内容によれば2015年8月の日本全体の広告業全体における売上高は前年同月比でプラス6.8%となり、増加傾向にあることが分かった。今件記事シリーズで精査対象の業務種類5部門(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ・インターネット広告)では新聞、雑誌、ラジオと4マスのうちテレビをのぞく3媒体がマイナスで、テレビは先月から続きプラスを維持、インターネット広告は先月から引き続きプラスを計上した。下げた部門では新聞が一番下げ幅が大きく、マイナス4.7%を示している(【発表ページ:経済産業省・特定サービス産業動態統計調査】)。

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テレビはプラスを維持するも上げ幅縮小、ネットは2倍近くに伸び率拡大


今件記事で検証しているデータの取得場所、速報値と確定値の違い、過去の記事の一覧など「特定サービス産業動態統計調査」に関連する共通要件の解説は、記事集約ページ【定期更新記事:4大既存メディア広告とインターネット広告の推移(経済産業省発表・特定サービス産業動態統計調査から)】に記載している。必要な場合はそちらを参照のこと。

まずは主要5部門の動向に関してグラフ化を行い、状況の確認をする。

↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2015年7月-2015年8月)
↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2015年7月-2015年8月)

今件データは前年同月比を示したもので金額そのものでは無い(棒の長さと市場規模の大小は比例しない)。同時に前回月分からの動きが確認しやすいよう、前回記事分の2015年7月分データと並列してグラフ化している。なお先月分の値は、先月記事で用いた速報値の後に発表されている確定値に修正済みのため、前回記事とは異なる値が表記されている部門もある。ただし昨今では調査の精度が上がったようで、速報値と確定値との間に差が見られる事態は、以前と比べて少なくなっている(今回月の修正項目はゼロだった)。

ここしばらくは軟調が続いている4マス(新聞・雑誌・テレビ・ラジオ)だが、今回月は前回月同様にテレビがプラス、それ以外はすべてマイナスとなった。そのテレビもプラス幅を0.5%ポイント縮小し、かろうじてプラス圏に留まっている感が強い。先月の上昇幅(その前月からは11.6%ポイントのプラス)の勢いが強すぎて、いくぶんの反動が生じたようにも見える。もっともマイナス圏にある他の3項目は、すべてマイナス幅を縮小しており、少なくともさらなる状況悪化は避けられているようである。

ただし今年に入ってから現時点で、4マスにおいてマイナスでなかったのは項目単位で1月のテレビとラジオ、4月の雑誌とテレビ、そして7月と8月のにおけるテレビのみ。随分と寂しい状況が継続している。このマイナス基調ぶりは今年に入ってからのもので(新聞と雑誌は去年の夏前からだったが)、広告業における4マスのトレンドに変化が生じている可能性は高い。

↑ 月次における4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2014年1月以降)
↑ 月次における4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2014年1月以降)

一方、インターネット広告は前回月と比べて伸び幅は大きく広がり、2割近い上昇率を示す形となった。

今回計測分となる月、つまり2015年8月における日本の大手広告代理店電通・博報堂の売上動向に関する記事で個々の相当する部門の動きを確認すると、「4マスではあまりパッとした動きが見られない」「電通の新聞は2割近い下げ」「インターネットはそこそこ」の動きを示している。大よそ方向性としては一致している。

なお4マスとネット「以外」の一般広告(従来型広告)の動向は次の通り。海外広告が凄まじい伸び率を計上している。

↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2015年8月)
↑ 屋外広告などの広告費・前年同月比(2015年8月)

ただし海外広告は伸び率は高いが金額はさほど大きくなく(今回月はこれだけの伸び率だが額面では新聞の半分にも満たない)、しかも振れ幅が大きい。今回月の動向だけを見て、急速に成長していると判断するのは認識は早計でしかない。

新聞とインターネット広告の差は1.72倍


今回も該当月(2015年8月分)における、各区分の具体的売上「高」(額)のグラフ化を行い、状況の確認をしていく。広告代理店業務を営む日本企業は電通と博報堂が最大手だが、その2社がすべてでは無い。そして各広告種類の区分は業界内で似たような文言が用いられているが、その構成内容は業界内で完全統一されておらず、【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】と今件グラフとの額面上で、完全一致性は無い。その点に注意されたい。

↑ 月次広告費(2015年8月、億円)
↑ 月次広告費(2015年8月、億円)

電通・博報堂のみの広告費動向では今なお新聞がインターネット広告よりも金額的に優勢。しかしその2社以外の大中小すべての日本国内における広告代理店を含めた今件データでは、インターネット広告のウェイトが電通・博報堂よりも高い企業も多数含まれていることから、全体に占めるインターネット広告の額比率が高めとなり、ここ数年の間に両者の金額面での立ち位置が逆転している。詳細は【どちらが優勢か…新聞広告とインターネット広告の「金額」推移をグラフ化してみる(2015年)(最新)】で解説の通り。現時点では2014年1月を最後に、新聞の金額はインターネット広告を超えておらず、金額面で4マスとネットにおける上位順位はテレビ・インターネット広告・新聞の順となっている。

今回月では両者の金額差は約171億円。約1.72倍の差がついている。もちろんインターネット広告の方が上。8月は7月に続きインターネット広告の閑散期にあたるが、新聞も軟調な動きを示しており、結果として差は大きなものとなった。また、「従来型メディアの紙媒体全体の広告費」は307億円で、これはインターネット広告費よりも下。つまり今回月も先回月に続き「インターネット広告の売上高が、大手4マスのうち紙媒体全体の広告費を上回った」ことになる。

一方話題のインターネット広告だが、中期的には成長を続け、減少する月もその下げ幅は小規模に留まっている。他方、その機動性の高さと使い勝手の良さもあり、金額面だけを追い続けると、浮き沈みが大きい。2011年以降は3月と12月に大きく伸びる動きがパターン化しているが、これは【ネットショッピング動向をグラフ化してみる】でも精査の通り、この時期、つまり年末と年度末にインターネット経由で商品が多く売れる時期のため、それを見込んでインターネット広告への資金投入が活性化した結果と考えられる。バレンタインデーが近づくとチョコレート関連の新商品が続々登場したり、広告をよく見かけるのと構造は同じである。

↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2015年8月)
↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2010年1月-2015年8月)

2011年以降は明確な形で、3月と12月に突出した額が投入されていることが確認できる。ただしそれ以外の月でも多分にぶれがあるものの、上昇していることに違いは無く、中期的には確実に成長を示しているのが分かる。

なおテレビ同様に金額面で突出している、テレビとの間でも額面では競り合っている「その他」項目は、多種多様なスタイルの広告が織り交ぜた形となっており、技術進歩に伴い項目分けが難しくなった類の事案が次々と組み込まれ、膨張している感が強い。同じ項目ではあるはずなのだが、それこそ1年の間に構成内容が大きく膨張している可能性は否定できない。電通・博報堂の2社における動向を追った広告費関連の記事でも似たような状況が生じており、現状を把握するために用意された区分としては、前年同月比で状況精査をする際の弊害になりつつある(内部構成要素が不確かでは、状況の判断が難しくなる)。新たな部門の追加が求められよう。

次のグラフは今件記事で対象の5項目、そして広告費総計(5項目以外の一般広告も含むことに注意。上記の通り額面が大きな部門もあるため、4マスとインターネットを合わせた動きとは異なる場合もある)について、公開されているデータを基にした中期的推移を示したもの。今調査で「インターネット広告」の金額が計上されはじめたのは2007年1月以降なので、それ以降に限定した流れを反映させている。

↑ 月次における4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2015年8月分まで)
↑ 月次における4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2015年8月分まで)

雑誌(黄色)と新聞(ピンク)の折れ線がグラフ中では「0%」よりも下側に位置する機会が多い。これは金額が継続的に減っていることを意味する。前年同月と比べてマイナスの値が続けば、金額は漸減していくのは道理ではある。そして効果が上がらない、広告力(世間一般に働きかけられる影響力。メディア力)の無いメディアに広告費を大量投入するのは付き合いによるものか、条件交渉の結果によるものかは定かではないが、少なくとも広告の直接対価によるものとしては考えられないので、雑誌・新聞の広告力が漸減していると広告主からは判断されていると見なせる。

そして雑誌・新聞共に紙媒体であることから、デジタル系メディアの浸透に伴い、割りを食った形となっていることは容易に想像できる。ただし紙メディアの一部は、その内容をデジタルに代えてインターネット広告を掲載する媒体の後押しをしている(新聞社によるウェブ上の無料記事展開、有料電子新聞が好例。また雑誌も続々紙媒体版との電子版同時発売スタイルに足を踏み入れている)。単純に紙媒体が衰退しつつあるのも一面だが、その上に載るコンテンツの、アナログからデジタルへのシフトが進んでいる現状を表しているとも読み取れる。そしてそのシフト具合は、それぞれ単独の広告費の挙動のみでは見極めが難しい。

昨今の動向を見返すと、緑色の線で示されているインターネット広告が確実に上昇基調にあり、他の業種とのかい離が生じていること、藍色の「ラジオ」が復調の兆しを見せていたが失速してしまったのが把握できる。また今年に入ってから4マスの軟調さが全業種に渡って継続しているのも気になる(2015年8月における2年前同月比を試算しても、4マスはテレビ以外はマイナスとなる)。昨年同月からの反動でも無く、また電通と博報堂の売上でも似たような現象が起きていることから、広告市場における何らかの動きが生じている可能性は否定できまい。


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