現状マイナス先行きプラス、双方とも水準値までには至らず…2015年9月景気ウォッチャー調査は現状下落・先行き上昇

2015/10/08 15:00

内閣府は2015年10月8日付で2015年9月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で下落して47.5となり、水準値の50.0を下回る状態を継続する形となった。先行き判断DIは先月から転じて4か月ぶりに上昇して49.1となったが、こちらも水準値の50を割る状態は続いている。結果として、現状下落・先行き上昇の傾向となり、基調判断は中国の景気後退懸念で世界経済の足並みの乱れが生じていることを反映し「景気は、中国経済に係る動向の影響等がみられるが、緩やかな回復基調が続いている。先行きについては、プレミアム付商品券への期待等がみられるものの、中国経済の情勢や物価上昇への懸念等がみられる」となった(【平成27年8月調査(平成27年10月8日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は下落継続するも先行きは反転へ


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2015年9月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比マイナス1.8ポイントの47.5。
 →「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加、「変わらない」が大幅増加、「やや良くなっている」が大幅減少。
 →全項目で減少。特に飲食関連と小売関連、雇用関連の下げ幅が大きい。

・先行き判断DIは先月比で0.9ポイントプラスの49.1。
 →「やや悪くなる」「悪くなる」が減少、「変わらない」が増加気味。
 →家計動向関連がすべて増加、企業動向関連と雇用関連はすべて減少。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

昨年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。ガソリン価格は春先までの原油価格の上昇を受けて一時値上がりの気配も見せたが、昨今では再び原油価格の下落基調が強まり、これを受けてガソリンなどの石油製品の価格も安値安定化の動きを示しており、少なくとも運輸方面そのものと運輸に大きな影響を受ける業界では安堵の声が聞かれる状況。

今回月は先月に続き、水準値となる50.0を現状・先行き共に下回る形となった。具体的コメントや周辺状況からも明らかな通り、中国の景況感への先行き不信感が強まりを見せ、それが影響している。現状判断で小売りや飲食、先行きで企業がやや下げているのがその裏付けになる。他方、雇用関連が現状・先行き共に下落しており、国内の景況感への不安感も広がり始めている雰囲気が感じられる。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

現状飲食大幅上昇で基準値超え


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。

↑ 景気の現状判断DI(-2015年9月)
↑ 景気の現状判断DI(-2015年9月)

消費税率改定からはすでに1年以上が経過したが、消費者心理の深層部分で影響を及ぼし続けているマイナスの景況感を回復させるに必要となる材料が見当たらず、低迷感は薄まりながらも継続していた。さらに電気代や食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、景況感は足かせ状態が続いていると判断できる。

今年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で下落。景況感の観点ではプラスの要素として継続している。また円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが上記の通り、3か月ほど前から中国の景気後退、厳密には経済内情が見た目よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

今回月では全項目で下落し、水準値(50.0)以上を維持した項目はサービス関連と雇用関連のみとなった。特に小売や飲食の下げ幅が大きいのが目に留まる。

景気の先行き判断DIは家計動向関連のみすべてプラス、企業動向関連と雇用関連が揃って全部マイナスと、稀有な動きを示している。

↑ 景気の先行き判断DI(-2015年9月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2015年9月)

変動幅は小売りと飲食でやや大きめだが、それ以外は1ポイント以内に留まり、小幅な値動き。これにより水準値以上の項目はサービス関連と雇用関連のみの状況が前月から継続する形となっている。もっとも小売と飲食は前月に大きな下落を示しており、今回の上昇はその反動によるところが少なくない。

商品券は効果大、中国の景況感の影響が確実に


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「家計(現状・全国)」そして「家計(先行き・全国)」の事例を抽出し、その内容についてチェックを入れてみる。

■現状
・プレミアム付商品券の効果により、全体の商況が押し上げられている(一般小売店[書籍])。
・シルバーウィーク中に、国内・海外旅行へ出かける客がゴーデンウィーク並みに増加したが、連休を終えると、再び海外を中心に需要が低下している(旅行代理店)。
・中国の経済状態の悪化に伴い、株価が日米共に下がっているため、その影響で客が神経質になっている。株を持っている客の心境に変化がみられる(その他専門店[宝石])。
・9月は例年に比べ残暑が厳しくなく、飲料やアイスが不振で全体の売上も前年を大きく下回っている(コンビニ)。
・8月同様、沖縄県の入域観光客数は外国人観光客で順調に伸びているなか、外国人のレンタカー利用客は増えているが、国内観光客のレンタカー予約が減少しており予約全体では前年を割り込んでいる(その他のサービス[レンタカー])

■先行き
・年末に向けては、ボーナス支給も見込まれ購買力も高まる(スーパー)。
・年末商戦に向けて明るさが出てくると期待している。プレミアム付商品券の期限もあり、一定の上積み効果が顕在化するとも考えられる(家電量販店)。
・中国経済の不安定さからくる、株価の低下やインバウンド需要の減少などのマイナス材料による影響が懸念される(百貨店)。
・価格の上昇により、客は通常の生活場面では節約するようになり、来客数の前年割れが続く(スーパー)。

先月に続き中国の景況感の後退に伴う直接的、そして株価下落から連動する形での間接的な影響がそこかしこに確認できる。インバウンド需要の低下に加え、株価が低迷したことで消費者の購入意欲が減退、海外向けの需要が減っているなどの動きがみられる。詳細報告書における「中国」の表記は33件(重複含む)確認できるが、ネガティブな意見として用いられていることが多い。なお早くもドイツの自動車メーカーによる排ガス不正問題などを取り上げ、懸念視する意見も見受けられる。

他方9月の連休、いわゆるシルバーウィークにはプレミアム付き商品券の効果も相まって、小売やサービス関連でポジティブな意見が多数見受けられる。連休は終わり商品券の効用も今後少しずつ低下していくが、年末にかけてのボーナスによる需要増大などへの期待が早くも確認できる。

なお雇用方面では人材不足の言及が相次ぎ見受けられ、求人手段の多様化や、現行従業員の正社員化などでサービスの向上を図る動きも起きている。一方で需給のミスマッチを指摘する声も多く、また景況感への先行きが不透明さを増してきたのを受けて、契約・派遣社員に頼る姿勢を崩さないとの話もある。



今夏は8月前半までが猛暑で消費を大きく後押ししたものの、後半からは一気に冷夏的な温度低下・日照時間の低迷にシフトし、その辺りから景況感も足を引っ張られた感がある。株式を運用する個人、企業だけでなく、その他多方面にも心理的影響を与える株価もほぼ同じタイミングで、中国の株価急落をトリガーとして一段下げた形となり、その状態が続いていることから、景気の先行き感に不安を覚える人が増え、それが景気の歩みを引っ張る気配が随所に見て取れる。また上記にもある通り、EUから中東で相次ぐ発生した情勢不安定な要因も、経済の上ではマイナスにしかならず、雰囲気の上でのウェイトとなってしまっている。

多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内においてはそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかる可能性は高い。それらのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれるところではある。


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