下降トレンドは止まらず…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向(2015年4月-6月)

2015/08/10 14:00

ゲームそのものの楽しさの提供だけでなく、周辺の人達とのコミュニケーションのための媒介・ツールとしての役割も大きい家庭用ゲーム機とその対応ソフトは、スマートフォンの普及浸透とそれ用のゲームアプリの大々的な展開で、大きな転換期の中にある。ただでさえインターネットのインフラ化に伴い速報性が重要視されるゲーム関連をはじめとしたエンタメ情報の提供媒体として、紙媒体の専門誌の立ち位置が危ぶまれる中で、二重の危機誘発要因の到来に違いない。「アプリ系ゲームの紙媒体専門誌を出せばよい」との意見もあるが、あまり上手くいった事例を聞かないのは、情報の更新伝達スピードがマッチしないのが主な要因だろう。まさに四方の行く手をさえぎられた状態のゲームやエンタメ系の専門誌の実情に関して、社団法人日本雑誌協会が2015年8月5日付で発表した、主要定期発刊誌の販売数を「各社の許諾のもと」に「印刷証明付き部数」として示した印刷部数の最新版となる、2015年4月から6月分の値を取得精査し、現状などを把握していくことにする。

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Vジャンはトップ継続、だが…部数現状


データの取得場所の解説や「印刷証明付部数」など用語の内容に関する説明、読む際の諸般注意事項、さらには類似記事のバックナンバー一覧に関しては、一連の記事のまとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明済み。必要な場合はそちらを確認のこと。また記事のカテゴリ名をクリックしてたどれる同一カテゴリの記事一覧からも、印刷証明付き部数関連の記事の過去のものを確認できるので、その手段も併用してほしい。

まずは最新値にあたる2015年の4-6月期分と、そしてその直前四半期にあたる2015年1-3月期における印刷実績をグラフ化し、現状を確認する。

↑ 2015年の1-3月期と2015年4-6月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績
↑ 2015年の1-3月期と2015年4-6月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績


大よそ部数は青よりも赤の方が短めで、減退している様子が分かる。唯一トップのVジャンプが大きく伸びているが、これは後述する通り、第2四半期特有の季節特性によるもの。特段珍しい動きでは無い。

今四半期では追加誌は無いものの、脱落誌として「週刊アスキー」と「電撃PlayStation」が確認された。「週刊アスキー」は【週刊アスキー、紙媒体版は5月末で終了し、今後はネットへシフト】で伝えた通り紙媒体としての発行は終了し、今はデジタル媒体上での展開となっているため、当然印刷証明付き部数は存在しない。一方「電撃PlayStation」は現在もなお紙媒体として新刊が定期的に発行されており、休刊や電子化による非公開化では無い。

「電撃PlayStation」と似たような現象は前四半期で「ニュータイプ」にて起きており、それも合わせ発売元であるKADOKAWAの方針な感はある。株式公開企業や大型企業による法的な公開義務はないものの、すでに公開していた数字を非公開化する施策は、情報の非開示化との姿勢の観点では残念と評せざるを得ない。色々な憶測を呼ぶ原因にもなるからだ。

ともあれ今回の休刊・非公開化により、現在印刷証明部数を掌握しているゲーム・エンタメ誌は8誌にまで減少してしまった。すでに公開サイトにおけるジャンル区分で「パソコン・コンピュータ誌」は皆無、「ゲーム・アニメ情報誌」でも7誌にまで減少しているのが現状。今後も減少傾向が続くようならば、「ゲーム・エンタメ」の定義で包括しえる、類似カテゴリの雑誌を加えることも検討せねばなるまい。

プラスは2誌…前四半期との相違確認


次に四半期、つまり直近3か月間で生じた印刷数の変化を求め、状況の確認を行う。季節による変化が配慮されないため、季節変動の影響を受けるが、短期間における部数変化を見極めるには一番の値となる

↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2015年4-6月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2015年4-6月期、前期比)

プラス領域を示したのは「Vジャンプ」「声優グランプリ」の2誌。誤差範囲の5%を超えたのは「Vジャンプ」のみ。ただしこの数年、同誌は新年度に該当する第2四半期では部数を底上げする傾向にあり、今回もその波に乗っただけとの見方もできる。中期的な部数動向を見ると、この3、4年ほどの間のボックス圏からの脱出は果たしておらず、想定の範囲内での動きともいえる。

↑ Vジャンプ印刷実績(部)
↑ Vジャンプ印刷実績(部)

もっとも今回の上昇により、懸念されていた20万部割れはしばらく回避できたと見ても良いだろう。

他方マイナスは6誌、誤差範囲を超えた下げは5誌。中でも「ファミ通DS+Wii」の下げ幅が大きい。こちらは元々部数が少ないため、比率の上での大きな下げは仕方がない面もあるが、中期的な流れを見ると2014年以降は下降を継続しており、危機感は否定できない。このままでは早ければ次の四半期にも大台となる1万部を割り込むことも考えられる。

↑ ファミ通DS+Wii印刷実績(部)
↑ ファミ通DS+Wii印刷実績(部)

独自路線、そしてかつては「進撃の巨人」特需で大きく背伸びをした「PASH!」は、その特需の終結と共に失速状態に移行。特需による上昇はその後の反動をも導く、よくあるパターンを形成してしまっている。

↑ PASH!印刷実績(部)
↑ PASH!印刷実績(部)

しかし特需前の地味な、そして地道な上昇傾向の流れに再シフトする余力はまだ十分あるようにも見える。

前年同期比は1誌以外すべてマイナス


続いて前年同期比における動向を算出し、状況確認を行う。年単位の動きのため前四半期推移と比べればロングスパンの値動きの精査となるが、季節変動を気にせず、より正確な雑誌のすう勢を確認できる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)(2015年4-6月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)(2015年4-6月期、前年同期比)

「声優グランプリ」がかろうじてプラス領域で、それ以外はすべてマイナス。しかも誤差範囲の5%を超えた大幅なマイナス幅となっている。「ファミ通DS+Wii」の現状は上記グラフに示した通りだが、それ以外にも「メガミマガジン」「声優アニメディア」などが軒並み1割超え。1割を切る下げ幅に留まっているのは「Vジャンプ」のみというありさま。

アニメ関連雑誌としてはライバル的な存在、世間一般では「三大アニメ誌」とも呼ばれているとの話も聞く、具体的には「アニメージュ」「アニメディア」「ニュータイプ」の動向。上記にある通り前四半期から「ニュータイプ」の部数が非公開となったため、残り「アニメージュ」「アニメディア」のみ、データの継続反映をさせた上で、状況の精査を続ける。

「アニメージュ」と「アニメディア」の2誌間で順位変動が起きた後、そのポジションが維持されたまま、3誌とも部数を下げていた。今四半期では両誌とも前四半期から部数は減らしたが、「アニメージュ」の減少数の方が大きく、両誌の差は縮まることとなった。しかしなお「アニメディア」よりも「アニメージュ」の方が部数が多いことに違いは無い。

↑ 三大アニメ誌の印刷実績(部)(2015年4-6月期まで)
↑ 三大アニメ誌の印刷実績(部)(2015年4-6月期まで)

↑ 三大アニメ誌の印刷実績(部)(2015年4-6月期まで)(アニメディア・アニメージュ抜粋)
↑ 三大アニメ誌の印刷実績(部)(2015年4-6月期まで)(アニメディア・アニメージュ抜粋)

直近値では「ニュータイプ」は非公開、「アニメージュ」4万8100部、「アニメディア」4万5200部。各誌とも中期的には漸減傾向なのに変わりはないものの、「アニメージュ」はこの数年下げ幅を最小限のものにとどめる一方、「アニメディア」の下げ幅がきついことから、順位変動が起きてしまった実情が良くわかる。



今四半期から情報を非公開化した「電撃PlayStation」だが、実は過去にも一度1年ほどの間、情報を非公開化した経験を有している。

↑ 電撃PlayStation(部)
↑ 電撃PlayStation(部)

公開の法的義務はないものの、非公開化の理由も開示されていない状況は不用意な憶測の火種となる。一応公称部数は21万部とあるが(【AD MediaGuide 電撃PlayStation】)、厳密な情報としての印刷証明部数の開示再開を願いたいところだ。

【CESA、2014年分の国内外家庭用ゲーム産業状況発表】にもある通り、日本の家庭用ゲーム機業界の市場は縮小を続けている。冒頭の解説の通り、少なくとも利用者人口は堅調な動向にあるスマートフォンアプリ向けの紙媒体専門誌のアプローチも、情報の公知特性を考慮するとビジネス的には難しい。新しい付加価値の創生、アイディアの想起など、あらゆる手立てを講じて有効策を見出さない限り、今後も低迷は続くことだろう。


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