不調・堅調二極化構造…主要テレビ局の直近視聴率をグラフ化してみる(2015年3月期上半期)

2014/11/08 16:00

従来型4マスメディア、具体的にはテレビ・新聞・雑誌・ラジオの中で、最大の広告市場規模と媒体力を有すると共に、昨今の広告市場動向では、唯一復調の兆しを示しているのがテレビ。そのテレビ全体、あるいは各局、さらには各番組のすう勢を推し量るのに、もっともシンプル、かつ明確な指標が「(世帯)視聴率」。要は世帯単位でどれだけその番組・テレビ局、さらにはテレビ放送そのものが視聴されているかを指し示したもので、雑誌や新聞ならば購読者数、販売部数に相当する。今サイトではテレビ局の中でもキー局、そして上場を(直接、あるいは間接的に)果たしている企業の(半期)決算短信資料などを基に、ほぼ半年毎にキー局の視聴率動向を確認している。今回は2014年10月から11月付で発表された各社の半期決算短信資料を基に、2015年3月期(2014年4月から2015年3月)における上半期の視聴率動向を確認していくことにする。

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全日は日テレトップ、プライムはテレ朝が逆転トップの構図変わらず


日本国内のテレビ局における視聴率は以前【「テレビをつけている時間」と「視聴時間」、「視聴率」を考え直してみる】で解説した通り、現在ではビデオリサーチ社のみが計測を実施している。上場テレビ局・企業では各社が程度の差はあるものの投資家への経営の状況判断材料として、各種短信資料で視聴率の公開を行っている。視聴率動向が広告売上をはじめとしたテレビ局の主事業である放送業務の勢いを推し量るのに、最適な指標だからである。一方、各社の資料ともビデオリサーチ社提供の値を基にしているため、基本的に同じものとなる。

まずは現時点で直近にあたる2015年3月期上半期の、キー局の視聴率をグラフ化する。データは【TBSホールディングス・決算説明会資料集ページ】内にある「2015年3月期第2四半期決算資料」から取得した(第2四半期とは上半期のことである)。なお「キー局」と表現した場合、一般的にはNHKは含まれないが、良い機会でもあるので合わせてグラフに収めておく。

↑ 2015年3月期・上期視聴率(2014/3/31-2014/9/28、週ベース、ビデオリサーチ)
↑ 2015年3月期・上期視聴率(2014/3/31-2014/9/28、週ベース、ビデオリサーチ)

テレビ東京は区分の上では在京キー局の5局に収められているが、他の4局と比べれば放送内容の特異性(比較的経済関連の内容が多い)の都合上、視聴率で他局と比べて低めの値が出るのは、ある意味やむを得ない。その特異性を考慮し順位精査の際に除外すると、TBSが主要キー局では視聴率が一番低迷している。これは昨年から継続している傾向である。

視聴率が低迷しやすい昼間や深夜を除いていることから、全日と比べて高い視聴率が期待できるのがゴールデンタイム(19時から22時)とプライムタイム(19時から23時)。その双方で、10%を切っているのは(テレビ東京以外では)TBSとフジテレビの2局。上位陣では日本テレビが群を抜き、テレビ朝日が追いかける形を取っている。NHKはややそれに遅れて続く形。

今件で選択したテレビ局の中ではやや特異な動きを示しているのがNHK。他局と比べてゴールデンタイムとプライムタイムの差異が結構大きい。これは以前からの傾向で、ゴールデンタイムよりもプライムタイムの方が低いことから、その違いとなる時間帯、22時から23時における視聴率がとりわけ低く、平均値を下げてしまっていることになる。もっともこれは各テレビ局の番組構成上、民放ではこの時間帯に番組のクライマックスや人気の高い番組が入ることが多いのに対し、NHKではそうとは限らないこともあり、仕方のない面もある。

ゴールデンタイムで視聴率動向を見ると、トップは日本テレビ、次いでNHK、テレビ朝日の順となる。しかしプライムタイムで比較すると、トップはやはり日本テレビのままだが、次いでテレビ朝日が付き、その次にフジテレビが収まることになる。NHKのプライムタイムでの低迷ぶりは直上にその理由を記した通りだが、プライムタイムでテレビ朝日がグンと伸びを示しているのは意外かもしれない。22時から23時の時間帯で放送される各局の人気番組のすう勢が、そのままこの差に表れるともいえる。テレビ朝日の場合は「報道ステーション」がメイン、後はワイド劇場や特番ということになるのだろう。

前年同期からの変化で各局の勢いを推し量る


通期について視聴率の変移を前年同期比で表すと次のようになる。比較対象は当然、2015年3月期上期のもの。

↑ 2015年3月期上半期・視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ)
↑ 2015年3月期上半期・視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ)

元々テレビの局単位での視聴率は、多分に特番や特定の番組、さらにはイベント的な放送に多分に影響されるところがある。例えばNHKの「あまちゃん」、TBSの「半沢直樹」が好例。今回の上半期では日本テレビの突出ぶりが目に留まるが、決算短信の説明には「大型単発番組『2014 FIFA ワールドカップ ブラジル』による収入に加え、レギュラー番組枠での収入の増加」などの解説が見受けられ、ワールドカップの放送が大きな牽引力となったのと共に、「ザ!鉄腕!DASH!!」などのような定番番組も健闘をしていることが分かる。第2四半期の説明会補足資料は現時点で未公開だが、第1四半期の資料を見るに、若年層を中心とした視聴率の確保のための番組編成や、ドラマの強化、生放送番組のプッシュなどが挙げられている。

テレビ朝日の短信資料から一方、前年同期比ではもっとも下げ幅の大きなテレビ朝日だが、全日の下げ幅がマイナス0.6%ポイントに留まっているのに対し、ゴールデンタイム・プライムタイムの下げ幅が大きいことから、特に夜の時間帯における番組の不調ぶりが推測できる。同社の説明会資料を見る限り、テレビCMの売上はタイム・スポット共に前年同期比で3%強のプラスを示す堅調さを示しており、制作費も前年同期から上乗せされ、金銭面では特に問題はないように見える。第2四半期決算短信そのものにも、テレビ放送事業の不調ぶりは語られておらず、むしろ「『ここがポイント!!池上彰解説塾』、木曜ドラマなどを中心に、単価の上昇を達成したことで」などの説明があり、問題は見受けられないように見える。

もっともこの1年ほどの間に限ると、直上で指摘した通りゴールデンやプライムタイムの視聴率減少傾向に歯止めがかからない動きが確認できる。もっとも視聴者が増える時間帯において低迷が見られる状況は、決して喜ばしい話では無い。

詳しくは経年のテレビ視聴率の記事で解説するが、この数年は各局ともターニングポイントを迎えている気配を示している。ある局はVの字回復を見せ、ある局は低迷を続け、ある局は下落傾向が継続している。まるで雑誌の印刷証明部数の話を思い起こさせるのだが、単発のヒーロー的番組やイベントのおかげで一時的な盛り返しを見せることはあっても、根本的な体質、視聴者への姿勢の部分がしっかりとしていないと、次第に低迷さが顕著になる。

中にはそのドーピング的効果に味を占め、魅惑に取りつかれ、繰り返しその効果を望んでいるような行動を示す局も見受けられるが、「待ちぼうけ」の歌にある通り、常に切り株にうさぎがやってくるとは限らない。それを期待するどころか、切り株を増やすべく樹の伐採を繰り返す動きすら見受けられるのは残念な話。

4大従来メディアの中では最大の影響力を持つ一方、その力に翻弄される面も見せている。そのような状況下で、各局がいかなる姿勢を見せ、その姿勢が視聴率の動向にいかなる成果として結びついていくのか。今後も注意深く見守りたいところだ。


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