「今年は北海道も含めて数値目標なし、無理のない節電協力要請」…2014年冬の節電要請内容正式発表

2014/10/31 12:00

政府や経済産業省など関係省庁は2014年10月31日、同日開催された「電力需給に関する検討会合」の結果として、2014年度冬季における電力需給対策「2014年度冬季の電力需給対策について」を正式に決定すると共に、その内容を公開した。それによれば沖縄電力をのぞく、電力需給の点で懸念のあった9電力会社すべてで、電力の安定供給に最低限必要とされる予備率3.0%以上を確保できる見通しとなった。予断を許さない状況には違いないものの、今冬では具体的な数字目標付きの電力使用制限令の発令は無く、「数値目標を伴わない節電要請(定着節電分の確実な実施)」(高齢者や乳幼児などの弱者への配慮を行う)がなされることとなった。北海道電力管轄では昨冬は数字目標付きの節電要請がなされたが、今年は設定されていない。節電要請の期間は2014年12月1日-2015年3月31日(年末の12月29日-31日、及び1月2日を除く)の平日9時-21時となる。ただし北海道電力管轄・九州電力管轄は時間帯を8時-21時とする。

一方、北海道電力管轄は他電力管轄との電力融通の点で制限が多分にあることに加え、1発電所のトラブル発生時における影響が大きい特殊性を踏まえ「計画停電回避緊急調整プログラムの準備と需給ひっ迫時の発動」「政府による自家発電設備の導入支援」などが追加対策として行われる(【電力需給に関する検討会合公式ページ】【節電ポータルサイト(経産省)】)。

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2014年冬季は昨年冬季と変わらない電力需給状況


【電力需給検証小委員会】などで公開された「2014年度冬季の電力需給対策について」の関連資料によれば、直近過去冬季と照らし合わせた厳寒リスク、昨今の経済成長ぶり、企業や家庭における節電の定着などを織り込んだ上で、いずれの電力管内でも電力の安定供給に最低限必要とされる予備率3.0%以上を確保できる見通しとなった。ただし今夏同様需給状況の厳しい関西・九州両電力管轄では、当初から中部・中国電力管轄からの電力融通を想定し、ようやく3.0%を確保できるに至っている(周波数の異なる東日本の東京電力からの融通電力は、今回は行われていない)。もっとも沖縄電力管轄以外では、大規模な電源脱落などが発生した場合には、電力需給がひっ迫する可能性があることは言うまでもない。

その他、今冬季における電力需給対策として発表された内容は次の通り。

1.沖縄電力管轄以外の全国で「数字目標を伴わない」一般的な節電の協力要請。高齢者や乳幼児などの弱者への配慮。

2.想定外のトラブルによる電力供給急減により電力需給がひっ迫する場合への対策実施。
 2-1.電力会社による発電設備の保守、保全強化。
 2-2.電力会社による広域電力融通、卸電力取引市場の活用、自家発事業者からの追加電力購入などの準備。
 2-3.電力会社による随時調整契約などの積み増しなど、需要面での取り組みの促進。
 2-4.節電・省エネキャンペーンの実施。

3.北海道電力管轄への特別対策。
 3-1.「計画停電回避緊急調整プログラム」の策定と、大規模なトラブル発生・電力供給減少の際の発動。2014年12月15日から2015年2月27日まで。大口電力需要家対象。
 3-2.自家発電設備導入支援。
 3-3.ネガワット入札など需給ひっ迫対策。

4.需給対策追加検討。状況に応じて対策検討。特に北海道電力管轄では数字目標付きの節電協力要請の検討も。

今件ではリストアップされていないが、重要なポイントとして、震災から3年以上が経過した今冬季であってもなお、特殊事情を有する北海道電力管轄だけでなく、沖縄電力を除いた全管轄で厳しい電力需給状況が見込まれている点も挙げられる。理由は言うまでも無く、電力供給の柱の一つである、原子力発電所による発電が、今なお遅滞状態にあるため。とりわけ冬季では北海道電力の需給バランスの乱れがその影響を受ける形となっている。

↑ 2014年度冬季(2月)における電力予備率見通し(沖縄除く)
↑ 2014年度冬季(2月)における電力予備率見通し(沖縄除く)(「値上勘案」は北海道電力管轄で実施される電気代値上げに伴う電力需要減退の可能性を計算に含めたもの)

↑ 2010年度比の、2014年度冬季定着節電見込み(9電力管轄)
↑ 2010年度比の、2014年度冬季定着節電見込み(9電力管轄)

無論昨年の冬と比較すれば新設発電所の稼動、再生可能エネルギー関連の発電量の上乗せ、新電力への切り替えに伴う9電力管轄からの離脱など、需給面でプラスとなる面もある。一方で出力を増加させた火力は老朽化や過負荷運転、管理の面でリスクが上昇しており、揚水は天候に左右される面や連続使用の点でやや難があり、再生可能エネルギーは出力に波があることから火力や水力より使い勝手の点で問題が生じやすい(例えば北海道電力管轄では特に、積雪時において電力の需要が大きく伸びるが、太陽光による発電はほとんど期待できなくなる)。数字上の計算はあくまでもフル出力が成し得た場合のものであり、楽観視できない現状がここにある。

↑ 2014年度冬期供給量想定(各電源別、2013年度冬季最大需要日の供給力実績比、万kW)
↑ 2014年度冬季供給量想定(各電源別、2013年度冬季最大需要日の供給力実績比、万kW)

原子力の値がプラスマイナスゼロとなっているのは、前年度冬季では稼働状態の原発がゼロ基だったこと、今件発表では確認した限り「全原子力発電が稼働しない前提」とした上で今件検証を行ったためによるものである。

需要の面では節電が逐次進み、新電力への移行もなされている。一方で震災以降の経済復興などに伴い、電力需要は増加している。例えば東京電力管轄では今冬の経済影響などによる電力需要の変化はマイナス52万kWだが、内部を詳しく見ると経済の伸長による電力需要はプラス72万kw、新電力への離脱影響でマイナス124万kW、差し引きでマイナス52万kWとなる次第である。

↑ 電力需要における冬季経済影響等(新電力への離脱影響含む、2010年度冬季比)(万kW)(9電力管轄)
↑ 電力需要における冬季経済影響等(新電力への離脱影響含む、2010年度冬季比)(万kW)(9電力管轄)

蓄積されるリスクと費用と


今回の発表によれば、今冬は今夏同様関西・九州両電力管轄でギリギリの3.0%の予備率となるものの、火力発電所の過負荷運転による増出力、緊急設置電源の活用、さらには今夏同様他電力管轄との間の電力融通を駆使し(中部電力と中国電力から、関西電力と九州電力への融通)、安定電力供給に必要な予備率を確保できる試算が出ている。一方で火力発電所において、従来行われるはずのメンテナンスや機器の改編・更新を先延ばし、間引きなどを実施している。

当然リスクの上昇が懸念されており、今回の試算においては電気事業法に基づいた定期検査のガイドライン(ボイラーは2年、タービンは4年毎の定期検査)に基づいて勘案して見極め、定期検査を行うべき発電所は供給力としては計上していない。ただしこの定期検査対象となった発電所は33機のみで、前回の定期検査終了から2年以上が経過した火力発電所総数の81機の半分以下でしかない。

↑ 各年度の計画外停止件数推移(夏季と冬季)(2014年度は夏季のみ)
↑ 各年度の計画外停止件数推移(夏季と冬季)(2014年度は夏季のみ)

↑ 各年度の計画外停止件数推移(夏季のみ)
↑ 各年度の計画外停止件数推移(夏季のみ)

特に老朽火力発電所によるトラブル件数が漸増傾向にあるのが気になる。これらはいわば「老体に鞭打っての稼働」であるため、想定の範囲外のトラブルが発生する可能性が高まるのは必然的ではあるが、看過するわけにもいかない。当然リソースは浪費されてしまう。

さらに想定された通常の運転を超える領域での運転を行い、出力を増加させるという過負荷運転も行われている。

↑ 火力発電所の過負荷運転等による増出力見込み(1月)(万kW)(2014年度)
↑ 火力発電所の過負荷運転等による増出力見込み(1月)(万kW)(2014年度)

この運転が継続されれば、通常運転よりもコストパフォーマンスは落ち、リスクの増加を招くことになる。

また、原発稼働停止に伴う火力発電の焚き増しによる燃料費の増加も顕著化している。「原発の停止分の発電電力量を、火力発電の焚き増しにより代替していると想定し、直近の燃料価格などを踏まえ」これまでの実績及び今後の試算を行うと(各資源価格の上下変動も考慮)、2011年度から2013年度の3年間で9.0兆円のロスが生じた計算となる。現在進行中の2014年度の試算も合わせると4年間で12.7兆円にまで積み上げられる。

↑ 原発稼働停止に伴う火力発電の焚き増しによる燃料費の増加(兆円/年)(2014年10月時点、2014年度は推計)
↑ 原発稼働停止に伴う火力発電の焚き増しによる燃料費の増加(兆円/年)(2014年10月時点、2014年度は推計)

このコストは直接的に電力会社への負担となり、メンテナンスや機器改編・更新のさまたげの大きな要因となる。そして負担軽減のために行われる電気料金の引き上げは、家計や企業への重圧となり、しいては経済行動の低迷を導くことになる。家計に限っても、それだけ可処分所得が減り、生活への負荷につながる。

この現実は多くの人がかみしめているはずだ。また直近の景気ウォッチャー調査の結果を見ても、多くの業界で燃料費と共に電気代の高騰に頭を痛めており、生産・消費活動への支障が生じていることが確認できる。電力需給が社会インフラである以上、その痛手はそのまま社会全体の痛手につながる次第である。



今回発表内容を読み解く限りでは、周波数を超えた管轄からの電力融通を駆使しない限り関西・九州電力管轄の想定予備率が3.0%を切った今夏状況と比較して、いくぶんの余裕が見受けられる。

冬季では一番シビアな綱渡りが求められる北海道電力管轄でも、供給力状況に変化は無いものの、需要量では節電効果や新規火力発電所の稼働、過負荷運転、新電力への離脱などによりいくぶん需要が減退しており、これが昨年冬のような数字目標付きの節電要請を回避する要因となった。とはいえ、発電所1基のトラブルによるリスクが他の電力管轄よりもはるかに高く、特段の注意が求められている状況に変わりはない。実際、過去において何度となく計画外の停止事案が発生し、電力需給のバランスが危機に陥ったケースが存在している。

↑ 北海道電力管轄の電力実績(万kW、冬季(2月))
↑ 北海道電力管轄の電力実績(万kW、冬季(2月))

電力需給の観点だけで見れば、北海道電力管轄以外は今夏、あるいは昨年冬と比べ、今冬はいくぶん緩やかな状況となる。しかし電力事情全体に渡るアンバランスで危機的な状況に変わりはない。震災直後から連なる一連の政策の決定的・致命的な過ちとそれが今なお続く現状を悔やみつつ、今後に向けて最大限の状況改善のための手立てを切に望みたいところだ。


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