出版物の書店立地条件別での売上変化をグラフ化してみる(2014年)

2014/10/21 11:00

最近では住宅地域や地方にある昔ながらの書店が次々に閉店へと追いやられる一方、駅周辺の一等地にある大型書店が盛況を見せている。また近郊部に配された、レンタルショップやゲームソフト販売店などと機能を融合した複合的なエンタメサービス提供ショップ的な書店がよく目に留まるようになった。今回はそれら立地条件により、書店の売上がどのような違いを見せているのか、【出版物の種類別売上の変化をグラフ化してみる(前年比)】でも取り上げた、日販による『出版物販売額の実態』最新版(2014年版)のデータを基に、精査を行うことにした。

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まずは立地別の売上高前年比。「SC」とは「ショッピングセンター(Shopping Center)」のことを指す。「商店街」や「駅前」と比べて、「郊外」の下げ方が無難な線で収まっているのは、いわゆる複合店が郊外に多いからではないかとの推測も成り立つ(これについては後程さらなる分析を加える)。また「ビジネス街」については「新書」「文庫」「実用書」の下げ幅が大きく、今回年では場所区分において最大の下げ幅を示すこととなった。

↑ 立地別売上高前年比(2013年)
↑ 立地別売上高前年比(2013年)

2012年と比べると「ビジネス街」は大きく下げ幅を拡大しており、やや驚かされる(前年は各場所別で一番小さな下げ幅、マイナス3.0%に留まっていた)。他方「郊外」は前年からさらに健闘を見せ、今回年では最小の下げ幅で済んでいる。とはいえいずれの場所でも前年比でマイナスには違いないが。

そこで今回は昨年から転じて大きな下げ幅を示した「ビジネス街」、そしてビジネススタイルとして特徴的な「郊外」について、細かい分類別を見ていくことにする。まずは今回の区分では一番下げ幅が大きい、この数年間で復調の兆しも見せていたものの、今回年でその動きも終えてしまったのではないかとすら思える「ビジネス街」。

↑ 分類別売上高前年比(2013年、ビジネス街)
↑ 分類別売上高前年比(2013年、ビジネス街)

まず目立つのが「新書」の下げ方。全体でもマイナス13.1%の下げ幅ではあるのだが、「ビジネス街」における下げ幅がもっともキツい。ついで「実用書」「文庫」など、オフィスが集まる場所に配する本屋なら売れ筋になりそうなジャンルの書籍が、軒並み2ケタ台の下げ幅を示している。元々出版不況は全体的な傾向ではあるのだが、「ビジネス街」では必然的に就業者が多く、それらの人達はスマートフォンをはじめとしたモバイル端末の所有・使用率が高くなることから、紙媒体の書籍離れが他の属性より進んでいるのかもしれない。あのヒットセラーとなった村上春樹氏の新作「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」の属する「文芸」ですら、マイナス5.8%の下げ幅を示しているあたり、その深刻さが容易に想像できる。

続いて特徴的なビジネススタイルを持つ「郊外」。

↑ 分類別売上高前年比(2013年、郊外)

↑ 分類別売上高前年比(2013年、郊外)

「ビジネス街」では全分類においてマイナスだったが、「郊外」では2分類がプラス、1分類が1%未満の下げ幅に留まっている。最大の下げ幅「新書」のマイナス12.4%はジャンル全体の不調もあり仕方がない面はあるものの、その他の分類の健闘ぶりは注目に値する。何より直上で説明したベストセラー作品の登場した「文芸」において場所別では唯一プラスの値を示し、比較的豊作だった「コミック」でもギリギリながらプラスを見せているのが素晴らしい。

これはいわゆる「大手の郊外複合店」によるところが大きい。隣接する、あるいは内包されている娯楽系店舗への来店も兼ねて書店に足を運び、これらの書籍を手にし、購入していく。話題性の高い書籍、幅広い層が興味関心を覚える書籍が目に留まる機会も増え、結果として「コミック」「文芸」が買われていく。逆に新刊が発売された「コミック」などを購入がてらに、娯楽系店舗にも立ち寄るパターンもあるだろう。

さて、その「郊外」も含め、立地条件別における書店の動向はどのようなものなのか。書店では額面上大きな売上を占める3大分類「雑誌」「コミック」「文庫」(全体ではこの3区分で売上全体の約2/3に達する)、それに加えて「ビジネス」と、今回年でヒットセラーが登場している「文芸」の計5区分を抽出したのが次のグラフ。上記に挙げた「ビジネス街」と「近郊」の特性が良くわかる。

↑ 分類別・立地別売上高前年比(一部、2013年)
↑ 分類別・立地別売上高前年比(一部、2013年)

「文芸」は「郊外」で唯一マイナス値を脱しており、「コミック」ではやはり「近郊」そして「商店街」がプラスに転じている。また「ビジネス街」では多くの分野で場所別において最大の下げ幅を記録しており、「ビジネス街」の書店における、幅広い分野での売り上げの急速な減退が起きていることが改めて確認できる。

「ビジネス」は「ビジネス街」が唯一マイナス値を脱しており、「児童書」では「近郊」が一番マイナス値が低い。また「文庫」ではその2か所でプラスを示しており、特性を持つ場所の書店での堅調さは、その地域に合った出版物が(比較的)売れたのが要因であることが明らかに分かる。また、客層が比較的似通っているからなのと、複数の商店の集合地域という環境を想定するに、「郊外」における複合店と似通った相乗効果が期待できるためか、「商店街」も「近郊」に近い結果が出ていることは注目に値する動きといえよう。



昨年展開した2012年分のデータにおける記事では「デジタル化の普及に伴う出版物離れが明らかに加速した状況でのものとなる。特にスマートフォンやタブレットの普及率の向上、電子書籍の本格的な展開が始まるにつけ、地域によって書店にはどのような影響が生じていくのか」とのコメントを添え、いわゆる紙媒体離れの進行で場所別の書籍販売動向にいかなる変化が生じるのかについて、電子書籍を容易に読めるスマートフォンなどの端末の普及ぶりが小さからぬ影響を与えるとした。いざフタを開けてみると大よそその類推通りとなり、一番影響が生じやすい「ビジネス街」の書店売り上げが、もっとも値を下げる結果が出てしまった。

スマートフォンなどの普及率上昇は今後もさらに進み、他の場所における書店でもさらに大きな影響を与えることは、想像するに難くない。来年以降はついで買い、機会の集約化が成されている「郊外(の総合・複合店舗)」「SC内」の強みによる踏ん張りが、さらに際立つこととなるだろう。


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(C)日販 営業推進室 書店経営支援チーム「2014 出版物販売額の実態」

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