出版物の種類別売上の変化をグラフ化してみる(前年比)(2014年)

2014/10/20 14:00

昨今は「出版不況」「書籍不況」なる言葉も日常化し、紙媒体に関しては書籍に限らず新聞、そして手帳などの文房具ですら、厳しい状態が続いている。これもひとえにデジタル機器の普及に伴う、利用者側の購入性向の変化によるもの。今回はその中から特に景況感の上で取り上げられることが多い出版物の売上状況について、主要種類別、そして書店の規模別に区分した動向を、日販の『出版物販売額の実態』最新版(2014年版)を基に確認していくことにする。

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全種類、全規模でマイナス


まずは出版物の分類別、売上高の前年比。前年2012と比較するとプラス項目数はゼロ。つまり下げ幅に違いはあれど、すべてのジャンルで出版物の売上高は減退していることになる。下げ幅では「コミック」「文芸」は大人しいが、「新書」「実用書」が目を覆わんばかりの状況にあるのが分かる。

↑ 分類別売上高前年比(2013年)
↑ 分類別売上高前年比(2013年)

なお項目中「実用書」は「旅行地図」も含んでおり、辞典(「学参」には集計されない)・事典・日記・手帳・その他をまとめて「総記」と呼んでいる。

【出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる】でも解説しているが、出版物の売上高は漸減傾向にある。当然2012年と比べて2013年の売上高もマイナスだが、「出版物の分類によってその減少ぶりには違いがある」こと、そしてその一方で「今年は全分類でマイナス」な実態も見て取れる。特にマイナス値が大きいのは上記に挙げた通り「新書」。また「実用書」も前年比でほぼ1割台の下げ幅を示している。

一方、2012年時点ではマイナス16.5%と群を抜いた下げ幅を示した「文芸」は、2013年では0.4%のマイナスに留まっている。これは前年の下げの反動に加え、村上春樹氏の新作「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」が輩出され、ヒット作となったことが原因。実際、年間ベストセラーで今作品は第一位に輝いている。しかしそれでもなお、前年比でプラスを示すことはかなわず、出版不況の実情を垣間見させてくれる。

他方、書店の規模別に売上高の動向を見たのが次のグラフ。

↑ 店舗規模別売上高前年比(2013年)
↑ 店舗規模別売上高前年比(2013年)

昨年までは「大規模店舗ほど売上高が良い、少なくとも減退率が低い」という傾向がみられたのだが、今年はその動きがはっきりとは見られ無い。いわゆるスケールメリットが存在しなくなった形である。むしろ「200-300坪」という中堅どころの健闘ぶりが昨年から継続しており、書店の展開戦略の風向きが変わってきた感はある。単純に極大化を目指すのではなく、地域環境次第ではこの程度の規模の書店が理想となるパターンがあり、その成功事例が増えているのかもしれない。かえりみるとこの数年、書店の総坪数が減少に転じているのも、それを匂わせている。

↑ 書店数・坪数推移(2004-2013年度、各年度末集計値)(再録)
↑ 書店数・坪数推移(2004-2013年度、各年度末集計値)(再録)

「書店規模」と「分類別売上高前年比」を掛け合わせると……


次に「書店規模」と「分類別売上高前年比」をクロスさせ、傾向を見て行くことにする。大きく「大規模書店ほど好業績」「小規模書店ほど好業績」の2区分に該当する、出版物分類項目をそれぞれ抽出し、グラフ化を行う(双方に該当せず、下記2つのグラフには登場しない分類もある)。

最初は「大規模店舗ほど好業績」の分類。「好業績」とはいえ、「前年比マイナスの値が小さい」ものには違いない(一部プラスはあるが)。表現としては「悪くない」「業績悪化度が小さい」とした方が妥当。ともあれ、スケールメリットが効いている領域。

↑ 店舗規模別・分類別売上高前年比(一部、大規模ほど好業績項目)(2013年)
↑ 店舗規模別・分類別売上高前年比(一部、大規模ほど好業績項目)(2013年)

ややイレギュラー(上記で触れた中堅どころの書店での奮闘)な動きが一部の分類、例えば「コミック」で見られる。都市近郊でよく見受けられる、子供もよく足を運ぶ、地域を支えるエンタメ色の強い総合店的な店舗によるところだろうか。カードゲーム機の1つや2つも配してあり、相乗効果も狙っていそうだ。その動きをのぞけば、概して整った形で右肩上がりの状態となっている。ただし昨年と比べると、店舗規模による大きな差異は生じていない。

「小規模店舗ほど好業績」な分類もある。「学参」はやや強引な感もあるのだが。

↑ 店舗規模別・分類別売上高前年比(一部、小規模ほど好業績項目)(2013年)
↑ 店舗規模別・分類別売上高前年比(一部、小規模ほど好業績項目)(2013年)

2013年における「小規模店舗ほど好業績」の該当分類は、一応「学参」も含めたが、100坪以下の店舗は不調で、中規模店舗がやや堅調というところ。明確な小規模店舗優勢なものは「文芸」のみに限られている。昨年まで独断場だった「児童書」はむしろ大規模店舗におかぶを奪われ、「専門」は店舗規模別の傾向が見いだせなくなっている。上記の総合的な分類でも触れているが、明らかに風向きが変わった雰囲気を覚えさせる。



2012年から2013年への推移概要としては、下げ幅こそ前年と比べて落ち着きを見せるようになったものの、店舗規模に伴う得手不得手の垣根が低くなり、全般的に販売力が落ちていると評することができる。数少ない起死回生策である規模の大型化によるスケールメリットですら、その効果が薄れているのは確実で、昨年の表現「スケールメリットも単に下落スピードをゆるやかにさせるブレーキでしかなく、プラス化を見出すエンジンには成り得ていない状況」のブレーキがさらに弱まりつつあるともいえる。

立地場所次第ではあるが、「書店は大きければよい」というものでは無い。好業績を挙げるには大きさ以外に地域特性の見極め、隣接あるいは出店している本店舗(例えばデパートに出店している書店など)との連動性など、包括的な「市場対策」が求められる。これはどのような商売でも必要な要素なのだが、書店も同様で、小規模書店では限界があり、大規模過ぎると小回りが利かずに他店舗との連動性を検討しにくい。中規模書店が一部分類で健闘している、売上高の下げ幅が大人しいのは、その連動性が活かされているからなのかもしれない。


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(C)日販 営業推進室 書店経営支援チーム「2014 出版物販売額の実態」

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