トップはいじめ…「広く社会的に見て問題だ」と思われている少年非行は何だろうか

2015/10/16 14:57

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先行する記事【いじめ2割近く、万引きやバイク・自転車の盗難1割強…見聞きしている少年非行の実情は】で、内閣府が2015年9月24日に発表した世論調査を元に、大人が自身の身の周りの問題として認識している少年(14歳から19歳までの少年・少女)による犯罪や問題行動に関する実情確認を行った。いじめや万引き、バイクや自転車などの盗難、ささいな事への立腹による暴力行為が上位を占め、インターネットを利用した非行は少数に留まっていた。それでは自身の周りに限らず、社会全体として少年非行問題を論じる際には、どのような事案が問題だと考えられているだろうか。今回は自分の周りの具体的事象では無く、社会一般的な論点として個々が認識している少年非行問題の具体的要件を確認していくことにする(【少年非行に関する世論調査(平成27年7月調査)】)。


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いじめ、高齢者への詐欺、刃物事案、そしてネット非行


今調査の調査要項は先行記事【79%は「5年前と比べて少年重大事件は増えている」と思っている】と思っている」を参照のこと。

次に示すのは冒頭で解説した通り、回答者自身の周辺で体現化したものではなく、「広く社会的にみて問題だと思う」少年非行(犯罪以外に喫煙や飲酒、深夜はいかいなどの不良行為も含む)について、複数回答で答えてもらったもの。具体的説明は回答用紙などには無いが、情報源としてはテレビや新聞、雑誌などの関連ニュース報道、解説、ワイドショー的な論説が主なものとなる。教育関係誌を通して広い地域の実情を知るケースもあるだろうが、多数とは考えにくい。

↑ 広く社会的に見て問題だと思う少年非行(複数回答、2015年7月)
↑ 広く社会的に見て問題だと思う少年非行(複数回答、2015年7月)

最大値を示した、つまりもっとも多くの人が社会全体として問題視されていると思っている少年非行の問題は「いじめ」。5割強の人が同意を示している。時には毎日のようにいじめそのものではなく、いじめを原因とした悲劇的事案が伝えられており、問題との認識を抱く人も多いのだろう。

次いで多いのは高齢者を狙った詐欺で42.8%。いわゆる振り込め詐欺が主なものとなるが、これは実際に件数の上で確実に増加傾向を示しており、報道される機会も増えている。警察庁発表の【平成27年上半期の少年非行情勢について】によれば、知能犯のうち振り込め詐欺に該当する事案の2015年上半期における少年検挙人員数は、前年同期の140人から増加して176人となり、過去最高を記録している。

続いて多いのは「掲示板に犯行予告や誹謗中傷の書き込みをするなどネット利用の非行」。これが41.5%。犯罪行為そのものへの該当よりも、不良行為に値するものや、犯罪に結びつく、きっかけとなる行為としてとらえられている感は強い。

男女別に見ると、家庭内暴力をはじめとしたいくつかの腕力などによる実力行使の事案をのぞくと、概して女性の方が回答率が高い。少年非行に関する高い問題意識を持っているからなのか、さまざまな機会で少年非行に係わる情報を見聞きしやすいからなのか。恐らくはその両方によるものだろう。さらに女性は震災関連の調査でも示されている通り、リスク事案に対しては敏感な反応を示しやすいのも一因かもしれない。

いじめなどについて属性別に見ると


続いて、いじめ、高齢者を狙った詐欺、掲示板に犯行予告や誹謗中傷の書き込みをするなどネット利用の非行の3項目に関して、細かい属性別の反応を確認する。

↑ 広く社会的に見て問題だと思う少年非行(複数回答、2015年7月)(一部)
↑ 広く社会的に見て問題だと思う少年非行(複数回答、2015年7月)(一部)

いじめは女性、そして若年層の方が問題意識は強い。そして50代でも過半数が問題だと認識している。子供のいる・いない、子供の学年による差もほとんど無く、属性の隔ては男女以外ではほとんど無い。

高齢者への詐欺もほぼ同様で、むしろこちらの方が属性別の差異は小さい。対象として狙われる可能性がある70代でも、他の属性とはさほど変化は無い。

属性別で大きな違いがあるのはインターネット利用の非行。年齢階層別では20代から50代までが高めで、特に30代から40代が大きく伸びている。年齢的に子供が居れば中高生ぐらいに該当するため、多分に自分の子供と状況を重ねて危機感を覚えているものと考えられる。そして60代以降は急速に下がり、70歳以上は2割を切る。

子供の学校種類別では小学生がもっとも高いが、大学生まで高い値は維持され、その他(既に卒業、中退、就労など)でようやく下がる。もっとも、子供が居ない世帯でも相応に問題意識をしているのは興味深いところ。

自分の身の回りでの体現化と、世間一般における認識と


先行記事で今調査において、回答者の身の回りで実際に起きている少年非行事案の現状を確認した。そこで、今回の「自分の身の回りで起きているものに限らず、メディアなどを通じて世間一般に起きていると認識し、広く社会的に見て問題視すべきと考えている少年非行」と、回答者の身の回り事案の実態を併記し、どのような差が生じているのかを見ることにする。

↑ 広く社会的に見て/実際に身の回りで起こり問題となっている少年非行(複数回答)
↑ 広く社会的に見て/実際に身の回りで起こり問題となっている少年非行(複数回答)

バイクや自転車などの乗り物の窃盗はむしろ周辺事案の方が多いが、それ以外は押し並べて社会全般としての問題意識の方が多い。また、万引きや喫煙・飲酒などの不良行為、家庭内暴力のような報道されにくい、されてもさほど触れられずに済まされてしまう事案は差異があまり無い。

そして高齢者目当ての詐欺や刃物などを使った殺傷事件、ネット利用の非行など、凶悪性の高いものやこれまであまり見受けられなかったタイプの事案など、注目を集めやすい、そして繰り返し詳細に伝えられやすい要件で、体現事案と社会問題認識の差異が大きく開いている感はある。

少年非行への問題意識を持つことは大いに推奨される話ではある。しかし少年が係わる(重大)犯罪の増加・減少にまつわる問題のように、実情と異なる認識では、社会のひずみ、弊害を導きかねない。確かな情報に基づいた正しい現状把握と理解を求めたいものだ。


■関連記事:
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