「少年重大事件は増えている」と思う人は昔から多かったのか

2015/10/13 14:55

先行記事【79%は「5年前と比べて少年重大事件は増えている」と思っている】で内閣府による世論調査【少年非行に関する世論調査(平成27年7月調査)】から、実情とは逆に「少年による重大事件は昔と比べて増加している」と認識する人が8割近くに達していることを確認した。この現象は昔からのものだったのだろうか。今回は内閣府の類似調査の過去分をたどり、経年変化による推移を見ていくことにする。

スポンサードリンク


今調査などの調査要項は先行記事「79%は「5年前と比べて少年重大事件は増えている」と思っている」を参照のこと。

内閣府では過去にも何度か少年事件に関する世論調査を実施しており、もっとも古いものは1983年実施のものが確認できる(調査文言に「ディスコやゲームセンターに行く」などがあり、時代を感じさせる)。他方、先行記事で確認した「過去と比べて少年による重大事件が増えているか否かの認識」に関しては、「5年前」ではなく「昔」とのやや曖昧な表現も合わせれば、1998年以降直近分まで都合5回分が比較対象として抽出可能。ただし1998年は全体値しか取得ができない状態となっている。

そこでまずは1998年以降の各調査結果から全体、男女別に「5年前(昔)と比べて少年重大事件は増えている」と考えている人の割合の推移を見ていくことにする。

↑ 実感としておおむね5年前(昔)と比べて、少年による重大な事件が増えていると思うか(増加派)
↑ 実感としておおむね5年前(昔)と比べて、少年による重大な事件が増えていると思うか(増加派)

全体値のみが取得できる1998年の値が異様な高値を示しているが、これは調査直前の1998年1月に少年によるナイフを使った「栃木女性教師刺殺事件」が発生し、世間を大きく騒がせたのが原因。実際、この年の調査では複数の項目でナイフの文言が用いられている。

それ以降は高値を示していることに違いは無いが全体としては少しずつ漸減。ところが直近の2015年では再び増加の動きに転じている。「重大」の明確な定義が無いために回答者の判断に任せる部分が多分にあるが、スマートフォンなどを用いた新たな事件が増えており、それが「重大な事件」の増加と認識されている可能性が高い。実際、調査の他項目でも例えば「最近の少年非行はどのような少年が起こしているか」との問いに、45.3%の人が「スマートフォンやインターネットなどに依存している少年」と答えている(51.5%の「保護者が教育やしつけに無関心な家庭の少年」に次いで高い値)。

一方、これを回答者の年齢階層別に見たのが次のグラフ。全体値しか取得できない1998年分はのぞいている。

↑ 実感としておおむね5年前(昔)と比べて、少年による重大な事件が増えていると思うか(増加派)(年齢階層別)
↑ 実感としておおむね5年前(昔)と比べて、少年による重大な事件が増えていると思うか(増加派)(年齢階層別)

2011年に至るまでの減少ぶりはどの世代でも変わらないが、2015年に上昇へと転じている動きは、実のところ50代以上の高齢層による増加認識の結果であることが分かる。元々それ以前も70歳以上は別として若年層ほど「重大少年事件は増加している」との認識は少なかったが、2015年の調査では70歳以上も大きく上昇し、「若年層から中堅層まで」と「高齢層」でほぼ二分化した形となっている。

「少年による重大事件は減っている」との実情とは異なる認識がまだ過半数であることに違いはないものの、中堅層までは誤認識は減少を続けている一方で、高齢層は増加に転じている。先行する記事でも触れた「過去の事案は忘れてしまった」「過去に無かったタイプの事件が起きたことで『増えた』と認識する」仮説を補強する動きとして注目に値する。

この動向をもう少し細かい属性別で確認するため、10年経過による変化を計算したのが次のグラフ。主要属性別では10年間ではすべての属性で減少しているため、減少した値を%ポイントで算出している。たとえば全体では14.5%とあるが、これは2005年(93.1%)から2015年(78.6%)の間に、14.5%ポイント増加派が減ったことを意味する。

↑ 実感としておおむね5年前(昔)と比べて、少年による重大な事件が増えていると思うか(2005年→2015年)(増えている派合計の減少%ポイント)
↑ 実感としておおむね5年前(昔)と比べて、少年による重大な事件が増えていると思うか(2005年→2015年)(増えている派合計の減少%ポイント)

男女別では女性、年齢階層別では高年齢、居住地域別では地方、子供の年齢別では上の年ほど、減少%ポイントが少ない。それだけ事実の認識浸透が進んでいない、相対的には後ずさりしていることを意味する。居住地域別に関しては先行記事でも触れたが、地方ほど高齢者が住んでいる可能性もあることから、年齢階層別動向と意味を同じくすると考えられるので、「年上」「子供の年齢が上の保護者」において、事実の啓蒙・認識が進んでいないことが分かる。

高齢層は単なる事実情報のアップデートが進んでいない・昔の事案を忘れているで説明できるが、子供が年上の動きは関係が無い。こちらは上記で触れている、「昔無かったが今は見受けられる」事案の代表格である、インターネット・スマートフォンによるトラブルが、自分自身の子供の身の回りでも起きている、重大ではないが事件あるいはリスク的状況が生じていることが、大きく作用しているのだろう。


■関連記事:
【少年非行の印象と、スマホ普及の問題と】
【大人が認識する少年非行、トップは「いじめ」】
【少年の問題行為を見かけた大人、半数近くは「見て見ぬふり」】

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2016 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー