一人身世帯の家賃負担はどれほどか、昔と比べてどのような変化をしているか(2015年)(最新)

2015/10/14 08:09

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賃貸住宅に住む、物件を探す際の指針の一つとして「家賃は収入の何割程度まで」との文言がある。具体的な値はいくつかの説があるが、現状では約2割が上限で、それ以上は日常生活が厳しくなるとの話をよく見聞きする。見方を変えれば家賃を5倍することで、その賃貸住宅に住むための適正収入が算出できる次第である。今回は総務省統計局が2015年9月30日に発表した【「2014年全国消費実態調査」】のうち【「単身世帯の家計収支及び貯蓄・負債に関する結果」】の公開値を元に、一人暮らしのうち勤労者の立場にあり賃貸住宅に住む人たちにおける、家賃負担の推移を確認していくことにする。


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じわりと家賃負担は増加中


今調査の調査要目は先行する記事【普通乗用車より軽自動車が所有される時代…自動車の車種・世帯種類別普及率(2015年)(最新)】で確認のこと。今回対象となる属性は、単身世帯のうち世帯主=本人が勤労者である、具体的には会社、官公庁、学校、工場、商店などに勤めている人。そしてそのうちさらに、持ち家や居候では無く、賃貸住宅に住んでいる人を対象にする(原則家賃を支払っている人。ただし1999年分は家賃・地代を払っている人)。

その賃貸住宅住まいの人における、家賃の対収入費の算出だが、世間一般に語られている「収入」はいくつかの解釈ができる。今回はまず実収入(勤め先からの収入と、財産から得られた収入)を母数とする。サラリーマンならば源泉徴収や保険料などが引かれる前の、名目上の給料。

↑ 家賃(概算、円)(単身・勤労者世帯、家賃・地代を払っている世帯限定)
↑ 家賃(概算、円)(単身・勤労者世帯、家賃・地代を払っている世帯限定)

↑ 家賃の実収入に占める割合(単身・勤労者世帯、家賃・地代を払っている世帯限定)
↑ 家賃の実収入に占める割合(単身・勤労者世帯、家賃・地代を払っている世帯限定)

家賃そのものが上昇していることもあるが、大よその属性で経年と共に、家賃の実収入に占める割合は増加している。男性では1999年時点で9.8%、女性は18.0%だったものが、直近2014年ではそれぞれ14.5%・18.6%にまで上昇している。この値は収入に占める家賃負担の度合いであり、家賃は食費などのような調整がつきにくく、実質的に税金などの非消費支出と同列と解釈できる出費であることから、値の上昇≒生活が苦しくなっていることがうかがえる。

男性はほぼ年齢階層の差異無く上昇しているが、女性では30代など一部属性で減少、あるいは傾向づけが難しい動きも示している。男性は50代と70歳以上をのぞけばきれいな形で一様に増加しており、単身男性世帯の家賃負担が年々生活の負担として重くのしかかるようになっている状況が把握できる。

また実収入も多少は変化しているが、大よその割合の増加は、家賃の増加によるものであることが分かる。ただし借りている住宅が同じ水準では無いことから、ライフスタイルの向上を求める動きも、平均家賃の上昇≒家賃負担の増加≒生活の苦しさに影響を与えていると考えられる。

「2割以上はキツい」との話を元にすれば、男性は大よそ合格ライン、女性は30歳未満と60代がやや生活の上では厳しいとの判断を下せることになる。女性の値の動きを見ると、2割を目の前にかろうじて留まっているようにも見えるから不思議なものだ。

可処分所得を用いると……


他方、算出に用いる収入は実収入では無く可処分所得である、との説も見受けられる。実収入のうち非消費支出(税金や保険料)は半強制的に徴収されるため、本人自身がコントロールできる額ではないからである。世間一般に言われる「手取り」は、この可処分所得を意味するため、この額を元に算出すべきとの話であり、説得力のある説明には違いない。

そこで可処分所得を元に、同様の計算を行った結果が次のグラフ。女性30代は減少、それ以外は大よそ経年で増加、男性は40代までがきれいに増加などの傾向には変わりないが、値そのものが大きく底上げされている。

↑ 家賃の可処分所得に占める割合(単身・勤労者世帯、家賃・地代を払っている世帯限定)
↑ 家賃の可処分所得に占める割合(単身・勤労者世帯、家賃・地代を払っている世帯限定)

2割超が危険領域とすると、過去においては男性は抵触する年齢階層は無かったものの、貯金では30代から40代が該当してしまっている。女性は1999年時点でもすでに30代までがアウトで、直近では40代と70歳以上以外はすべて該当、特に60代は1/4を超えてしまっている。

これらの値はあくまでも指標の一つで、経済状況、家計のお財布事情のすべてを表しているわけでは無い。他方、単身の勤労者で賃貸住宅暮らしをしている人にとって、家賃負担は大よそ年々大きなものとなっていることが、改めて確認できたこともまた事実ではある。


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