4マスの動き鈍く、電通は「その他」が大きく上向きプラス15.2%(電通・博報堂売上:2015年8月分)

2015/09/10 10:00

博報堂DYホールディングスは2015年9月9日、同社グループ主要3社(博報堂、大広、読売広告社)の2015年8月分の売上高速報を公開した。一方、電通も同年9月7日付で、同じく同社8月分の単体売上高を公開している。これにより日本国内の二大広告代理店における2015年8月次の売上データが一般公開されたことになる。今回は両社の主要種目別売上高の前年同月比、そして各種指標を過去の公開値などを基に独自に算出し、その動向などから各種広告売上動向、さらには広告業界全体の動きを確認していく。

スポンサードリンク


4マスはさえない動きでプラスもぱらぱら、ネットはプラスを継続中


データ取得元の詳細な情報、各項目における算出上の留意事項、さらに今件カテゴリーの過去記事は【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】に収録・記載済み。今件記事に合わせ、そちらで確認のこと。

まずは両社の主要項目ごとの前年同月比を計算し、グラフ化する。

↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2015年8月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2015年8月分種目別売上高前年同月比

4大従来型と当サイトでは命名している昔ながらの主力メディア、具体的にはテレビ・ラジオ・新聞・雑誌の動向を確認すると、今回月は電通では雑誌、ラジオ、テレビが、博報堂では新聞、雑誌がプラスとなり、前回月の博報堂の新聞とテレビのみがプラスの状況と比べ、随分と盛況な雰囲気が第一印象。

ただしよくその内情を見ると、数字的な盛り上がりはいま一つで、かろうじて金額そのものが大きいテレビにおける、電通のプラス6.4%が評価を得られる動きと言える。前月は博報堂のテレビが1割を超える上昇幅を示しており、博報堂の全体値をプラスに引き上げる大きな貢献の力となっている。今回月では電通の全体値のプラスへのけん引役の一つとなったことに違いは無い。ただ、それ以外はあまりぱっとしないのも事実ではある。

4マスの中では電通の新聞の下げ幅が特に大きい。前年同月(2014年8月)における前年同月比はマイナス9.3%で、本来ならば反動によるプラス化も期待できる環境だが、それにも関わらずマイナス化が生じている。同項目の売上の低迷度は深刻である。

4マスの軟調とは対照的に、インターネットは引き続き堅調に推移している。上げ幅こそそこそこレベルだが、今回月は両社ともプラス。博報堂の1割超えの伸びが頼もしい。

従来型広告も4マス同様、あまりぱっとしない。それどころかマイナス幅の大きい項目が複数確認できる。もっともそれと同様に、青色、つまり電通で複数項目が大きく伸びているのが分かる。とりわけ「その他」項目の伸びが著しく、プラス147.1%と3ケタ%台の伸びを計上、グラフ全体のバランスを崩す形となってしまっている。

この「その他」の伸びに関しては、先月の「FIFAワールドカップのものと思われる大幅な増加の反動」のような特殊イベントによる動きの兆しは確認できない。昨年同月に同項目が大きく下げている(マイナス45.8%)ことから、その反動も一部には影響しているが、2年前同月比を試算してもプラス33.9%となり、単なる反動以上の上昇となる。

電通に限るが2年前比を試算すると次の通り。「その他」が大きく伸びてインターネットすら追い越していること、4マスではテレビがかろうじてプラスに手が届いている以外は軟調であることが分かる。

↑ 参考:電通2015年8月度単体売上(前々年同月比)
↑ 参考:電通2015年8月度単体売上(前々年同月比)

4マスの中でも紙媒体の新聞、雑誌の不調ぶりが目立つ。とりわけ新聞2年間で1/4強の下げであることから平方根換算をすると、年間で1割強(約14%)の下げ幅を示していることになる。好ましい状況とはいえない。

各年8月における電通の売上総額の推移を確認


次のグラフは電通の今世紀(2001年以降)における、今回月となる8月を基準にした毎年8月分の売上高総額をグラフにしたもの。年を隔てた上で同月における比較となるので、選挙やオリンピック、FIFAワールドカップのような、広告と深い関係を有し売り上げに大きく影響を与える事象が無い限り、季節による変動を気にせず中期的な動向を確認できる。あくまでも電通だけの話だが、大いに参考になる。

↑ 電通月次売上総額推移(各年8月、億円)(-2015年)
↑ 電通月次売上総額推移(各年8月、億円)(-2015年)

大よそではあるが景況感を反映した値動きを示している。ITバブルの崩壊と不況、景気の回復、金融危機の勃発、リーマンショックによる景気悪化の加速、そしてそこからの立ち直り、震災や極度の円高に伴う低迷感、そして回復へ。

2014年はやや値が後退しているか、これは冷夏と消費税率引き上げに伴う消費性向の減退が影響している可能性がある。2015年はそれを取り戻してなお余りある値を示し、金融危機ぼっ発の水準すら超える形となった。「その他」の増加に伴うところが大きいが、評価すべき結果には違いない。

なお今件記事では日本の大手広告代理店として、売上高、取扱い領域の幅広さ、対象地域の広さ、日本国内に与える影響力など、多数の面で最上位陣営となる電通と博報堂2社の動向を精査している。一方で両社は同程度の規模では無く、売上・取扱広告の取扱範囲には小さからぬ違いがある。ところが今件記事上記グラフでは総額では無くあくまでもそれぞれの部門における前年同月比を示し、両社の分を併記していることもあり、その値が両社の売上と誤解される場合がある。

そこで次に両社部門の具体的な売上高を併記したグラフを生成し、その実情を確認する。それぞれの部門の具体的な市場規模や、両社間における違いが、成長度合いでは無く現状の売上の観点で把握できる。

↑ 電通・博報堂DYHDの2015年8月における部門別売上高(億円)
↑ 電通・博報堂DYHDの2015年8月における部門別売上高(億円)

インターネットは毎月目覚ましい成長率を計上しているものの、売上金額=市場規模としては他のメディアと比較すると、どんぐりの背比べレベルでしかない。また、4マス以外の従来型広告市場が大きな規模を示していること、テレビの広告市場がひときわ巨大であることなどが一目でわかる。

一方電通と博報堂間では、全項目で電通の方が単月売り上げは上。部門によって得手不得手があるため、新聞やラジオのようにほとんど変わらない部門もあれば、クリエーティブやテレビのように約2倍の差を示す部門もある。

「その他」も差異が大きいが、これは両社間における取扱い事業の違いに加え、「その他」の仕切りそのものの問題も大きい。メディア技術の進化に伴い、複合型の広告も増え、従来の仕切りでは分別しにくいタイプの広告が増えている。それらは「どれにも当てはまりにくいので『その他』行き」となると考えられ、年々「その他」に該当する項目が増えてしまい、金額も積み増しされてしまう。

この「その他」の区分内容の膨張問題は、経産省の特定サービス産業動態統計調査における広告業の調査でも生じている。他項目も含めた再統合では調査データの連続性が失われてしまうため、「その他」の内部における仕切り分けの追加を求めたいところではある。もっとも電通に限ってもこの項目は「衛星その他のメディア、メディアプランニング、スポーツ、エンタテインメント、その他コンテンツなどの業務」とあり、2分割や3分割程度の細分化は難しいのも事実。さらに細分化されると、電通と博報堂両社における共通性が無くなる可能性もあり、(両社それぞれにおいては何の問題もないのだが)比較する点では問題を抱えることになる。



今回分の2015年8月分は5月から7月と比べれば、テレビのそこそこな伸びをはじめ、それなりに、比較論ではあるが4マスも健闘した形となった。しかし「ぱっとしない」レベルでも健闘と評価しなければならないほど、ここ数か月の4マスの軟調ぶりは気に留めざるを得ない。

経産省の広告費動向でも似たように、今年の5月分以降は弱い動きが確認されている。電通や博報堂に限らず、広告業界全体で、小さからぬムーブメントが起きているのかもしれない。


■関連記事:
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(上)…4マス+ネット動向編】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(下)…ネット以外動向概況編】

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2016 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー