アルバイトの時給動向をグラフ化してみる(2015年)

2015/07/28 15:00

雇用市場における需給関係の変化は建設業やパート・アルバイト界隈で特に活発化しており、単なる人手不足の動向に留まらず、その状況を起因としたさまざまな方面への影響が話題に登り、ニュースとして配信される。その一面は【建設業界の人手不足状況を長期的にグラフ化してみる】でお伝えしている通りだが、今回は非正規雇用の中でもメインとなるパート・アルバイトの時給の推移を通し、市場動向を垣間見ることにする。

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パートやアルバイトの時給動向に係わる定点観測データは、公的機関では残念ながら見当たらない。国税局では正規・非正規別の賃金動向を収録しているものの、こちらは2012年分以降のもののみ。今回はリクルートグループが展開している求人情報メディア「TOWNWORK」「TOWNWORK社員」「fromA navi」に掲載された求人情報をベースとして、同社が2007年以降毎月の状況を公開しているデータを用い、その動向を確認していくことにする(【リクルートホールディングス・プレスルーム】)。

直近データとなる2015年6月分では、業種別では大分類で販売・サービス系、フード系、製造・物流・清掃系、事務系、営業系、専門職系に区分されている。また地域別では主要エリア別、三大都市圏(首都圏・東海・関西)、全国の平均値などが確認できる。このうち長期時系列のデータ取得が容易な三大都市圏の分について、全体値、さらには日常生活で見聞きすることが多くしばしば話題にも登る販売・サービス系(例:レジ、販売、コンビニスタッフ、チラシやパンフ配布など)とフード系(飲食店のホールスタッフ、ファストフードなど)、そして専門職系のうち介護スタッフに焦点を絞り、値を抽出していくことにする。

なおデータの上で2011年10月までと11月以降とでは細かい業態部分の再整理における平均値算出に関して、再計算が行われた・いないの違いが生じているため、厳密にはデータの連続性は無い。もっともその影響は最小限に留められているため、大きな差異は生じていないと見ても実質的には問題は無い。

まずは全体的なパート・アルバイトの募集時における平均時給の推移を確認する。各グラフには直近月の値に加え、描写範囲内の最高額・最低額の月の具体的値を示しておく。

↑ パート・アルバイト募集時平均時給(円)(三大都市圏、全体)(リクルートジョブズ)
↑ パート・アルバイト募集時平均時給(円)(三大都市圏、全体)(リクルートジョブズ)

最低額は意外にも金融危機ぼっ発前の2007年4月における928円。以降900円台後半にまで上昇し、ほぼ一定額のボックス圏内で推移する。なお毎年特定の時期に大きく跳ねる様子が見られるが、これは年末(12月)におけるかきいれどきの求人で、相場が上昇する様子が表れている。

金融危機やリーマンショック(2008年9月)の影響もほとんど受けておらず、意外な感はある。ただしよく見ると、リーマンショックよりはむしろその後の震災、極度の円高不況による影響をいくぶん受けているような雰囲気を覚える。また2013年以降は年末のピークの後の下げ方も限定的なものとなり、2014年は夏以降高止まりしているのが分かる。

最高値は今回月の2015年6月における967円。前月2015年5月分の966円を1円だけだが上回る形となった。繁忙期でないこの月における上昇ぶりは、底上げが起きている感が強い。ちなみに前年当月は957円なので10円のプラス、1.0%の上昇。

続いて販売・サービス系。

↑ パート・アルバイト募集時平均時給(円)(三大都市圏、販売・サービス系)(リクルートジョブズ)
↑ パート・アルバイト募集時平均時給(円)(三大都市圏、販売・サービス系)(リクルートジョブズ)

最安値を付けた時期が金融危機ぼっ発前であることは全体値動向と変わりはなし。またリーマンショックの影響を大きく受けていることも良くわかる。一方で最高値は震災のあった2011年の年末についており、それ以降はむしろ安定の流れにある。

毎年12月がピークとなる動きも変わりなし。ただしリーマンショック後の数年はその定石が崩れたパターンを示しており、いかにアルバイト市場に大きな打撃を与えていたかが分かる形となっている。

直近となる2015年6月は945円。前年同月は938円なので、プラス7円、0.7%の上昇。

続いてフード系。景気動向に即した、もっとも典型的な動きを示している。

↑ パート・アルバイト募集時平均時給(円)(三大都市圏、フード系)(リクルートジョブズ)
↑ パート・アルバイト募集時平均時給(円)(三大都市圏、フード系)(リクルートジョブズ)

最安値を付けたのは震災直後の2011年4月で893円。それ以前は金融危機ぼっ発後もあまり変わらず、リーマンショック以降じりじりと下げている。そして震災以降は一様に上昇……にも見えるがよく精査し直すと2012年夏から2013年夏ぐらいまではほぼ横ばい、それ以降は再び上昇カーブを強めながら推移している。最高値は前月2015年5月で、昨年末の12月では無い。それ以外の年も年末12月に高値を付ける傾向が見られないのは、他のグラフとは異なる動きでもある。このペースでいけば、1000円の大台を超えるのも遠くは無いかもしれない。

直近の2015年6月は938円。前年同月の931円からは7円のプラス、0.8%の上昇。

最後は介護スタッフ。今項目は2012年7月から調査対象となっているため、グラフの生成期間もそれに従っている。

↑ パート・アルバイト募集時平均時給(円)(三大都市圏、介護スタッフ)(リクルートジョブズ)
↑ パート・アルバイト募集時平均時給(円)(三大都市圏、介護スタッフ)(リクルートジョブズ)

ややばらつきが大きいものの、2014年末まではほぼ960円から980円のボックス圏で推移している。それが今年に入ってから大きな上昇を見せ始め、2015年5月には初めて1000円の大台を突破した。直近ではやや値を落として再び3ケタ台に戻してしまったが、トレンド転換までとは言い難い。戻しの勢いが限定的なため、ここ数か月の上昇的な流れは継続中と考えられる。



販売・サービス系ではやや異なる動向だが、全体的にパートやアルバイトの時給も少しずつ上昇傾向にある。需給の関係から考察すれば、求職者以上に求人が増え、賃金を引き上げることで求人を充足させようとする動きの中にあると見て良いだろう。別記事で触れている「非正規雇用の就業者が急増している」実態と合わせると、少なくともパートやアルバイトの雇用市場では、就業する立場にある人から見て、情勢は好転していると見てよいのではないだろうか。

なお一部報道にある通り、今回月の3大都市圏における平均額967円は、調査開始の2007年1月分以来最高値を更新している。上記説明の通り2011年に一度データの取得様式で断絶が生じているものの、注目すべき動きには違いない。

ちなみに同じくリクルートジョブズによる定期公開データから、派遣スタッフ募集時の平均時給動向を見た結果が次のグラフ(こちらも2015年6月分が最新データとなっている)。

↑ 派遣スタッフ募集時平均時給(円)(三大都市圏・全体)(リクルートジョブズ)
↑ 派遣スタッフ募集時平均時給(円)(三大都市圏・全体)(リクルートジョブズ)

こちらの方がより明確に、景気動向を表しているようにも見える。金融危機ぼっ発後の下落、リーマンショックによる加速、その後の復調、震災や円高不況による低迷、そして回復基調。最高値は直近値となる2015年6月分の1594円。非常に興味深い動きに違いない。


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