4マス軟調続き、電通はサッカーの反動が響きマイナス15.5%(電通・博報堂売上:2015年7月分)

2015/08/12 08:00

博報堂DYホールディングスは2015年8月11日、同社グループ主要3社(博報堂、大広、読売広告社)の2015年7月分の売上高速報を公開した。一方、電通も同年8月7日付で、同じく同社7月分の単体売上高を公開している。これにより日本国内の二大広告代理店における2015年7月次の売上データが一般公開されたことになる。今回は両社の主要種目別売上高の前年同月比、そして各種指標を過去のデータなどを基に独自に算出し、その動向などから各種広告売上動向、さらには広告業界全体の動きを確認していく。

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博報堂ラジオ・テレビがプラスで残りの4マスはすべてマイナス


データ取得元の詳細な情報、各項目における算出上の留意事項、さらに今件カテゴリーの過去記事は【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】に収録・記載済み。今件記事に合わせ、そちらで確認のこと。

まずは両社の主要項目ごとの前年同月比を計算し、グラフ化する。

↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2015年7月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2015年7月分種目別売上高前年同月比

4大従来型と呼ばれる昔ながらの主力メディア、具体的にはテレビ・ラジオ・新聞・雑誌の動向を確認すると、今回月は博報堂の新聞とテレビのみがプラスで、それ以外はすべてマイナス。先月は同じく博報堂のテレビとラジオのみがプラスだったことを思い返せば、さほど変わりない雰囲気であるのが分かる。テレビは市場が大きめで、その市場で10%超えのプラスは好ましい話ではあるが(そのおかげで博報堂の全体額もプラスに振れている)、4マスの環境があまり良い状況では無いことが分かる。

4マスの中では特に博報堂の雑誌の下げ幅が大きく、約3割減。前年同月、つまり2014年7月時点の同項目を確認するとマイナス4.9%で、本来ならば反動によるプラス化も期待できる環境ではあるが、それにも関わらずマイナス化が生じている。同項目の売上の低迷度は深刻なようだ。

4マスの軟調とは対照的に、インターネットは引き続き堅調に推移している……と表現したいところだが、今回月は電通で前年同月比がマイナスを示している。博報堂が2割近い伸びを見せたのが幸いなところ。

従来型広告は4マスとは相反する形で大よそ堅調。特に電通の伸び方が頼もしい。ただし「その他」が大きく下げ、それがグラフ全体のバランスをも崩す形となってしまっている。これはグラフ中注記でも説明の通り、前年7月におけるFIFAワールドカップのものと思われる大幅な増加(プラス252.8%)の反動に他ならない。ちなみに前年同月の博報堂もプラス98.4%と大きく上昇しているが、今回月ではマイナス0.1%に留まっており、反動の影響はほとんど生じていない。

電通に限るが2年前比を試算すると次の通り。「その他」の大幅な下げがやはり反動によるものでしかなく、中期的に見れば上昇基調にあることが分かる。また4マスの軟調さも再確認できる。

↑ 参考:電通2015年7月度単体売上(前々年同月比)
↑ 参考:電通2015年7月度単体売上(前々年同月比)

4マスの中でも紙媒体の新聞、雑誌の不調ぶりが目立つ。2年間で2割近い下げであることから平方根換算をすると、年間で1割程度の下げ幅を示していることになる。新聞では約5.3%のマイナス。好ましい状況とはいえない。

各年7月における電通の売上総額の推移を確認


次のグラフは電通の今世紀(2001年以降)における、今回月となる7月を基準にした毎年7月分の売上高総額をグラフにしたもの。年を隔てた上で同月における比較となるので、選挙やオリンピック、FIFAワールドカップのような、広告と深い関係を有し売り上げに大きく影響がある事象が無い限り、季節による変動を気にせず中期的な動向を確認できる。あくまでも電通だけの話だが、大いに参考になる。

↑ 電通月次売上総額推移(各年7月、億円)(-2015年)
↑ 電通月次売上総額推移(各年7月、億円)(-2015年)

大よそではあるが景況感を反映した値動きを示している。ITバブルの崩壊と不況、景気の回復、金融危機の勃発、リーマンショックによる景気悪化の加速、そしてそこからの立ち直り、震災や極度の円高に伴う低迷感、そして回復へ。

ただし今回月、つまり7月は直上で触れた「広告と深い関係を有し売り上げに大きく影響がある事象」が生じている。具体的にはFIFAワールドカップ。この影響が2002年はともかく、それ以降、2006年・2010年・2014年に大きく生じており、景気動向とは別に大きな底上げ効果を示している。見方を変えれば2006年以降の電通において、FIFAワールドカップは4年に一度の稼ぎ時とも評することができる。

なお今件記事では日本の大手広告代理店として、売上高、取扱い領域の幅広さ、対象地域の広さ、日本国内に与える影響力など、多数の面で最上位陣営となる電通と博報堂2社の動向を精査している。一方で両社は同程度の規模では無く、売上・取扱広告の取扱範囲には小さからぬ違いがある。ところが今件記事上記グラフでは総額では無くあくまでもそれぞれの部門における前年同月比を示し、両社の分を併記していることもあり、その値が両社の売上と誤解される場合がある。

そこで次に両社部門の具体的な売上高を併記したグラフを生成し、その実情を確認する。それぞれの部門の具体的な市場規模や、両社間における違いが、成長度合いでは無く現状の売上の観点で把握できる。

↑ 電通・博報堂DYHDの2015年7月における部門別売上高(億円)
↑ 電通・博報堂DYHDの2015年7月における部門別売上高(億円)

インターネットは毎月目覚ましい成長率を示しているものの、売上金額=市場規模としては他のメディアと比較すると、どんぐりの背比べレベルでしかない。また、4マス以外の従来型広告市場が大きな規模を示していること、テレビの広告市場がひときわ巨大であることなどが一目でわかる。

一方電通と博報堂間では、全項目で電通の方が単月売り上げは上。部門によって得手不得手があるため、ラジオのようにほとんど変わらない部門もあれば、クリエーティブやテレビのように約2倍の差を示す部門もある。

他方「その他」も差異が大きいが、これは両社間における取扱い事業の違いに加え、「その他」の仕切りそのものの問題も大きい。メディア技術の進化に伴い、複合型の広告も増え、従来の仕切りでは分別しにくいタイプの広告が増えている。それらは「どれにも当てはまりにくいので『その他』行き」となると考えられ、年々「その他」に該当する項目が増えてしまい、金額も積み増しされてしまう。

この「その他」の区分内容の膨張問題は、経産省の特定サービス産業動態統計調査における広告業の調査でも生じている。他項目も含めた再統合では調査データの連続性が失われてしまうため、「その他」の内部における仕切り分けの追加を求めたいところではある。もっとも電通に限ってもこの項目は「衛星その他のメディア、メディアプランニング、スポーツ、エンタテインメント、その他コンテンツなどの業務」とあり、2分割や3分割程度の細分化は難しいのも事実ではある。



今回分の2015年7月分は6月分に続き主要従来型4マスの軟調ぶりが目に留まる動きとなった。「その他」の動きは2年前同月比の試算やサッカーの反動であることが確認できているので問題は無いのだが、4マスの後ずさり感は今年5月以降継続したもの。年度替わりを受け、メディアそのものの動向に変化が生じた可能性もある。

広告業に絡んだもう一つの定点観測、経産省の広告業売上動向と共に、これまで以上の注意深く見守りたいところだ。


■関連記事:
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(上)…4マス+ネット動向編】
【20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ)(下)…ネット以外動向概況編】

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