現状は少しプラスに先行きはややマイナスへ…2015年7月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き下落

2015/08/10 16:00

内閣府は2015年8月10日付で2015年7月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で上昇して51.6となり、水準値の50.0を超える状態は維持された。先行き判断DIは先月から続いて2か月連続して下落し51.9となったが、水準値の50を超える状態は維持されている。結果として、現状上昇・先行き下落の傾向となり、基調判断は夏のボーナス時期が済んだことからその関連の文言が削られた他は前月と変わらず、「景気は、緩やかな回復基調が続いている。先行きについては、物価上昇への懸念等がみられるものの、観光需要、プレミアム付商品券への期待等がみられる」となった(【平成27年7月調査(平成27年8月10日公表):景気ウォッチャー調査】)。

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現状は上昇に転じるも先行きは継続して減少


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2015年7月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比プラス0.6ポイントの51.6。
 →「良くなっている」「変わらない」が増え、「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少。
 →家計は住宅関連が大幅減、飲食関連がやや減で後は微妙な上昇。企業、雇用は小幅な上昇。

・先行き判断DIは先月比で1.6ポイントマイナスの51.9。
 →全項目で小幅な下落。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

昨年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。ガソリン価格は春先までの原油価格の上昇を受けて一時値上がりの気配も見せたが、昨今では再び原油価格の下落基調が強まり、これを受けてガソリンなどの石油製品の価格も安値安定化の動きを示しており、少なくとも運輸方面そのものと運輸に大きな影響を受ける業界では安堵の声が聞かれる状況となっている。

先行きDIにおいては概況部分での説明は無いものの、具体的コメントからいくつか確認する限り、中国の株価急落や景況感への先行き不信感が強まりを見せ、それが小さからぬ影響を示しているものと考えられる。小売り関係や、企業動向での下げ幅がやや大きいこともうなづける。

↑ 景気の現状判断DI(全体)推移
↑ 景気の現状判断DI(全体)推移

↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移
↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

現状飲食大幅上昇で基準値超え


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。

↑ 景気の現状判断DI(-2015年7月)
↑ 景気の現状判断DI(-2015年7月)

消費税率改定からはすでに1年以上が経過したが、消費者心理の深層部分で影響を及ぼし続けているマイナスの景況感を回復させるに必要となる材料が見当たらず、低迷感は薄まりながらも継続していた。さらに電気代や食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、景況感は足かせをされている状況にあると評しても良い。

原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、上記の通りここ一、二か月では再び減少に転じ、景況感の観点ではプラスの要素となりりつある。また昨今では円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けている。

水準値(50)を切った項目は飲食関連と住宅関連の2項目。飲食関連は小幅な減退に留まっているが、住宅関連の大きな下落が目に留まる。コメント群から確認すると、材料費や人件費の高騰に伴い、元々単価の高い商品な事から値上がり額も大きくなり、顧客層の購入意欲が落ちているとの言及が複数で見受けられる。

景気の先行き判断DIはキレイな形で全項目でマイナス。

↑ 景気の先行き判断DI(-2015年7月)
↑ 景気の先行き判断DI(-2015年7月)

全項目での下げは久しぶりで壮観さすら覚えるが、下げ幅は小幅なものに留まっている。最大で非製造業のマイナス2.4、次いで小売りのマイナス2.3、住宅関連のマイナス2.1。住宅の下げは現状DIと同様で顧客需要の価格とのミスマッチさによるもの、そして企業関連や小売り関連の下げ幅がやや大きめなのは上記で触れている通り、中国の景気後退懸念が大きく作用しているものと考えられる(今件調査期間は7月25日から31日、中国市場の株価動乱は7月上旬頃から始まっている。現在は小康状態だが、不安定な環境下にあることは否定できない)。

商品券や気候状況、国内回帰で期待感高まる一方、中国景気や物価高への懸念


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「家計(現状・全国)」そして「家計(先行き・全国)」の事例を抽出し、その内容についてチェックを入れてみる。

■現状
・プレミアム付商品券の利用スタートから現在まで、売上、来客数共に増加傾向にある。また、猛暑が続いているため、夏型商材の売上が好調で業績も良好である(スーパー)。
・夏のボーナス後に猛暑日が増えたことで、エアコン等の冷房関連がけん引し、販売量が回復している(家電量販店)。
・全体的には前年より良い。内訳としてインバウンド客が増えているが、国内客が横ばいなのが気になっている(観光名所)。
・昨年に比べて天候が不順であったほか、パンや菓子類の値上げや野菜相場の高騰が続き、客の価格に対する感度は上がっている。牛肉の売行きが悪く、豚肉、鶏肉へのシフトが進んでいる(スーパー)。

■先行き
・9月の大型連休で九州への旅行客が増え、買上が増えるのを期待している。また、9月末に韓国の連休の中秋節があり、続いて10月初旬に中国の連休の国慶節があるので、インバウンド消費も増えると見込んでいる(百貨店)。
・当地域でプレミアム付商品券が発売され、ほぼ完売のなか、商店街等の小型店舗で利用できる商品券が今後、いくらかの売上増に寄与する(商店街)。
・景気回復が期待できる対策が見当たらない。また、中国の情勢も気になる(スーパー)。
・地方では相変わらず収入が増加しない一方で、食料品を中心に値上げが続いており、消費者の低価格志向が強い(商店街)。

大よそ昨今の景況感を左右する要素が盛り込まれており、興味深いものとなっている。プラス要因はプレミアム付商品券に伴う消費の後押し、さらに春先までは平年並みかむしろ涼しさを覚えるとの予想がされていた夏の気候に関して、猛暑日が増えた事で夏物商品の消費が後押しされ、これが景況感を底上げしている(反動として野菜の高騰が足を引っ張る部分もある)。

なお「インバウンド」とあまり聞きなれない言葉があるが、これは海外からの観光客を意味する。国内の供給に関して国外から需要が到来することから、日本国内に限れば需要は底上げされる形となる。この言い回しは昨月も使われており、外来観光客による需要喚起が大きな要因となっていることが改めて認識できる。

他方上記引用範囲には無いが、企業動向では円安による輸入原材料の価格上昇や電気料金の上昇に伴うコストアップに窮する事例が報告されている一方、優秀な人材を積極的に雇用する姿勢を見せる企業に関する言及や、パートやアルバイトでも時給アップなどの条件改善を行わないと人材が確保できないといった、労働市場の需給関係の変化を見受けることができる。



今回月ではギリシャのデフォルト問題や中国の景況感などが先行きDIに反映される形でマイナスに転じたものの、ここ数か月の動向を見る限りでは景気低迷感は底を打ち、少なくとも低迷感は払拭された雰囲気がある。震災後や、その後の超絶円高を示した時のような、隅から隅までの絶望感的な空気とは大きく異なるのは事実。しかし立ち上がり感はまだ弱く、ふらつきも見られる。単なる底打ちに加え、何か加速をつけるような材料が欲しい。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、それらの国のみの状況悪化に留めることはまず不可能で、日本にも小さからぬ火の粉が降りかかる可能性は高い。それらのマイナス要因を打ち消すほどのプラス材料が望まれるところではある。


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