熱中症による死亡者の動向をグラフ化してみる(人口動態調査版)(最新)

2020/10/06 05:16

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2020-0923厚生労働省が2020年9月17日付で2019年分の確定報を発表した、人口動態調査における人口動態統計だが、その中で参考資料として熱中症による死亡者数の推移が、直近9年間とそれ以前は5年おきの形で掲載されていた。これは総務省消防庁が発表している値とは別のもので、注目に値する内容といえる。今回はこの値を手掛かりに、一次資料をたどり、熱中症による死亡者数の動向をいくつかの切り口で確認していくことにする(【発表ページ:令和元年(2019)人口動態統計(確定数)の概況】)。

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増加傾向にある熱中症による死亡者


今回の発表資料を基に、政府統計のデータベースe-Statから各値を精査したところ、人口動態統計における「熱中症による死亡者」とは、ICD-10(国際疾病分類第10版)におけるX30(自然の過度の高温への曝露)を死因とするものであることが判明。過去の人口動態統計で時折発表される「熱中症による死亡者」でも同様の基準が用いられているため、この「X30」に該当する死亡者を精査していく。

e-Statから取得可能なデータは1999年以降。そこでまずは単純に、年単位での死亡者数の推移をまとめる。

↑ 熱中症による死亡者数(人口動態調査、人)
↑ 熱中症による死亡者数(人口動態調査、人)

消防庁のデータからも分かる通り、熱中症による死亡者数は多分にその年の夏の暑さに影響を受ける。そのため、大きなぶれが生じているが、原値でも次第に増加していくようすはうかがいしれる。特に猛暑が観測された2010年と2013年、そして2018年に大きく上振れし、影響が大きかったことが見て取れる。

とはいえ、年ごとの気候によるぶれは否めない。そこで毎年の値に関して、その前年と前々年、つまり都合3年分の値を足して平均値を算出し、値を均す方法を用いた結果が次のグラフ。単年によるイレギュラーの影響を抑えることができる。

↑ 熱中症による死亡者数(人口動態調査、該当年と過去2年を合わせた3年分の平均値、人)
↑ 熱中症による死亡者数(人口動態調査、該当年と過去2年を合わせた3年分の平均値、人)

2012年を一つの山として漸減する動きを示しているが、それまでは増加する傾向にあったことが分かる。特に2006年以降、そして2010年以降と2段階に分けた上昇ぶりが確認できる。今世紀初頭の300人前後から、2012年では4倍近くの値となり、さまざまな要因(高齢・一人世帯化、ヒートアイランド現象の影響、都市部への人口密集化など)はあるが、熱中症による死亡者数は確実に増加していた。

他方、2013年以降は漸減に転じた。気候の影響の他に、熱中症対策の啓発が進んだ結果が数字となって表れているのかもしれない。ところが2016年を底に、それ以降は再び増加に転じている。原値の2018年で大きな値が出たため、平均値でも2018年は当然として直近の2019年もまた、大きく伸びてしまっている。2020年もまた、同様の高い値を示すのは容易に想像できる。

男女別などで見る熱中症死亡者の動向


これを男女別に見たのが次のグラフ。やはり直近2019年分の原値と、過去2年分も合わせた上での平均値の双方について、年齢階層別に区分した上で男女別の値を確認する。

↑ 熱中症による死亡者数(人口動態調査、年齢階層別・男女別、人)(2019年)
↑ 熱中症による死亡者数(人口動態調査、年齢階層別・男女別、人)(2019年)

↑ 熱中症による死亡者数(人口動態調査、該当年と過去2年を合わせた3年分の平均値、年齢階層別・男女別、人)(2019年)
↑ 熱中症による死亡者数(人口動態調査、該当年と過去2年を合わせた3年分の平均値、年齢階層別・男女別、人)(2019年)

国立環境研究所の定点観測調査の結果から分析した【熱中症による救急搬送者の内情をグラフ化してみる】でも言及しているが、若年層から就業層に至るまでは、概して男性の方が熱中症の発症(、そして死亡)リスクは高い。これは就業時における外出過程でのリスクが多分に存在するからに他ならない。60代後半以降になると定年退職を迎え、男性も自宅にいる時間帯が長くなり、リスクそのものは女性と変わらなくなる。もっとも高齢者になると、室温が上昇していることに気が付かずに高温の中で過ごしてしまうケースも多々生じ、自宅における熱中症のリスクも高まるのだが。

80代以降になるとむしろ女性の方が死亡者数が増えるが、これは単純にその年齢階層で存命している数そのものが、女性の方が多いからに他ならない。むしろ年間で百人単位の80代以上の高齢者が、熱中症(との認定の上で)亡くなっている事実に驚きを覚える人も多いはず。

熱中症死亡者の約8割は65歳以上


最後は経年における、年齢階層別のリスク変化について。要は昔と比べ現在では、どれほど熱中症による死亡者が増減しているかに関して、年齢階層別に検証したもの。イレギュラーな動きを抑える目的で、該当年を含めた3年分の平均値を用いるため、一番古い値として取得可能な2001年分と、直近となる2019年における死亡者数の変化度合いを倍率で示したのが次のグラフ。

↑ 熱中症による死亡者数(人口動態調査、該当年と過去2年を合わせた3年分の平均値を元にした2001年分から2019年分への変化、倍数)
↑ 熱中症による死亡者数(人口動態調査、該当年と過去2年を合わせた3年分の平均値を元にした2001年分から2019年分への変化、倍数)

若年層は絶対数が少ないため値が突出したものとなりやすいが、それでも5-9歳以外は1.00以下に留まっており、近年にかけて死亡者が減少しているのが分かる。他方、中年層以降、特に55歳以降で大きな増加を示しているのも確認できる。もちろん社会構造の高齢化に伴い、該当年齢階層の人数そのものが増加しているのは確かだが、20年近くの間に人数が2倍も3倍も増加しているはずはなく、確実に高齢層における熱中症による死亡リスクが高まったことが確認できる。

もっとも、動向を詳しく見ていくと、ここ数年は高齢者においても死亡者数が漸減していたことが分かる。

↑ 熱中症による死亡者数(人口動態調査、該当年と過去2年を合わせた3年分の平均値、年齢階層別、人)
↑ 熱中症による死亡者数(人口動態調査、該当年と過去2年を合わせた3年分の平均値、年齢階層別、人)

「漸減している」ではなく「漸減していた」のは、直近2年において高齢層で値が大きく伸びているから。ここ1、2年の熱中症による死亡者の増加は、多分に高齢者によるものであることがうかがえる。

各年の死亡者全体に占める高齢者の比率を計算すると、ほぼ一様に増加傾向にある。

↑ 熱中症による死亡者数(人口動態調査、該当年と過去2年を合わせた3年分の平均値を元にした各年合計における65歳以上の割合)
↑ 熱中症による死亡者数(人口動態調査、該当年と過去2年を合わせた3年分の平均値を元にした各年合計における65歳以上の割合)

今や熱中症による死亡者の約8割は65歳以上。今後もこの値は漸増していくことだろう。

国立環境研究所の調査結果などにもある通り、高齢者の熱中症リスクは自宅内で体現化することが多い。当人はもちろん、周辺関係者もまた、くれぐれも配慮を欠かさないよう、努力をしてほしいものである。


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