ウェアラブルデバイスによる健康管理サービスの需要(2015年)

2015/08/27 11:32

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元々デジタル機器の類を身体に装着して身体の機能補助を成したり拡充する概念を体現化したウェアラブルデバイスは、SF作品の類で良く用いられている。昨今ではGoogleのグーグルグラスやAppleのApple Watchなどで話題を呼んだが、広域な概念で考えればペットの埋め込み式チップなども該当する(常日頃から肌身離さず身に着けるとの観点ではスマートフォンなども当てはまるかもしれない)。各種機器の小型化・省電力化、スマートフォンなどの普及に伴うデータの集積の容易化、そしてデータの蓄積や分析技術などで、かつては夢物語でしかなかった機能を有する機器が、実商品として開発され、展開し始めている。今回はウェアラブルデバイスの最大の特徴「常日頃から装着・利用している」の点を活用する形で、もっとも重要視される機能、健康管理に関して、その需要の現状を、総務省が2015年7月28日に発表した最新版の【情報通信白書】(【発表リリース:平成27年「情報通信に関する現状報告」(平成27年版情報通信白書)の公表】)から確認していくことにする。


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今件部分の直接の調査は「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」で、これは2015年3月にインターネット経由で実施されている。調査対象母集団は10歳以上の男女で合計2000人。男女比は1対1。世代構成比は10・20代と30代と40代と50代と60代以上で均等割り当て。また都市規模別で仕切り分けをして、偏りがない工夫がこらしてある。

冒頭の通り、ウェアラブルデバイスはその特性から、健康や医療方面での活躍が期待され、実装機能もその方面が多数検証・導入されている。そこで、ウェアラブルデバイスを用いた健康管理サービスについて、利用してみたいか否かを聞いたところ、約4割の人は利用意向を表明する形となった。利用したくないとする人は5割近く、健康管理の必要性を覚えない人は1割強で、実質的には6割強が「ウェアラブルデバイスによる健康管理は要らない」としている。

↑ ウェアラブルデバイスを活用した健康管理サービスの利用意向(2015年)
↑ ウェアラブルデバイスを活用した健康管理サービスの利用意向(2015年)

便宜性が高くコストパフォーマンスに優れたサービスがまだ展開されていないこともあり、具体的なイメージが浮かびにくいのも一因だろうが、好意的な人はあまり多くない。また、健康管理そのものを必要としない人は若年層に多く、それだけ自分の健康に自信を持っていることがうかがえる(健康診断や医療保険の必要性を尋ねても、恐らくは同じような結果が出るだろう)。他方、利用意向も若年層の方が高く、デジタル機器に対する抵抗感の度合いが、そのまま反映される形となっている。特に中堅層以降の拒否反応が大きいのが目立つ。

デジタル機器への拒否反応が左右するとの解釈は、スマートフォンの利用状況区分でもうかがえる。スマートフォンを利用している人に限れば4割以上が好意的だが、非利用者では3割強に留まってしまう(もっともこれは、スマートフォンの利用者が若年層よりなのも一因)。また、生活課題において医療や健康が重要だと考えている人は、健康管理サービスにも肯定的だが、重要でない人は否定意見が強いのと共に、そもそも健康管理の必要性を感じていない。健康への意識もまた、ウェアラブルデバイスによる健康管理への想いの違いに影響を与えていることになる。

では具体的に、ウェアラブルデバイスを用いた健康管理を望まない人は、どのような理由によるものだろうか。複数回答で尋ねた結果が次のグラフ。もっとも多い意見は「常時装着は面倒」とするもので、半数近い値を示すこととなった。

↑ ウェアラブルデバイスを活用した健康管理サービスを利用したくない理由(2015年、複数回答)
↑ ウェアラブルデバイスを活用した健康管理サービスを利用したくない理由(2015年、複数回答)

ほぼ同率で「価格が高い」が4割強、少々値を下げるが「機器を使ってまで健康管理をする必要性を感じない」が続く。他にもプライバシーの問題や精度の安定性、身体との相性やデザイン性への懸念があるが、上位3項目が主要な問題点と見て良いだろう。

価格の高さ、言い換えればコストパフォーマンスの問題は商品開発側の課題。いかに量産してコストを下げるか、あるいは他の低コストの商品と一体化するか(冒頭でも触れているが、常日頃から身に着けているスマートフォンに機能を装着して連動させれば、ある程度需要は満たせるとの発想もある)。身に着けることの面倒くささは、今後の技術面での進展に期待したいところ。省電力化、小型化が推し進められれば、それこそブレスレット、ネックレス、イヤリングレベルの気軽さでつけられるようなものになるかもしれない。

健康管理の必要性を覚えないとの意見は、個人の価値観によるものだから、ウェアラブルデバイス云々の話では無い。ただし当事者はそう思っていても、第三者が健康管理を望むような状況では、必要性が生じることになる(何らかの持病を持つ子供や高齢者が好例)。



現時点の技術、商品ベースではまだまだ多くの人の需要に応えているとは言い難いウェアラブルデバイスを活用した健康管理サービスだが、良い意味での先が見えてきた感は強い。今後高齢化が進む中で、健康「管理」の概念も合わせ、さらなる注目と需要を集めることになれば、各種技術商品開発も加速化されるに違いない。


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