EUの懸念事項は経済や失業よりも移民やテロ問題、移民は34%が懸念を表明(最新)

2019/08/19 05:06

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2019-0817欧州連合欧州委員会(European Commission)は2019年8月に、同会が毎年2回定点観測的に行っているEU全体における世論調査「Standard Eurobarometer」の最新版となる第91回分の結果を発表した。それによると、現在EU全体の最大の懸念として挙げられたのは移民問題で、全体の34%が懸念を表明していた。気候変動、テロがそれに続いている。移民問題の懸念は急激な高まりを示し2015年11月分でピークに達したが、その後は減少。しかしテロと合わせ上位につく状況は続いている(【発表リリース:Standard Eurobarometer 91】)。

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「Standard Eurobarometer」は毎年2回、原則5月と11月に行われており、今回発表分が91回目となる。今調査の直近分は2019年6月7日から7月1日にかけて直接面談のインタビュー方式でEU加盟国および候補国内において行われたもので、回答者数は合計で3万2524人、EU28か国に限定すると2万7464人。

2015年以降外電でたびたび伝えられている通り、欧州諸国の経済問題が最悪期を脱したように見えたことや、中東情勢問題の悪化を受け、EU諸国への移民(難民)問題が大きな社会問題化している。船を使い、あるいは陸続きで、より経済的に安定していると思われるドイツ、さらには英仏海峡トンネルを越えてイギリスに向かう人たちは後を絶たず、海峡トンネルでは警備の強化が成されるほど。また、対応しきれない一部の国では国境線の封鎖措置も行われ、これに伴う衝突も起きている。

さらに移民(難民)が移民先にたどり着いても地元住民との間での対立も絶えず、文化的衝突も多々生じ、社会的公平性の概念による保護への理不尽さを覚える地元住民の不満の増加も併せ、大きな社会問題の火種となり、物理的衝突が生じている。これに伴い各国の移民・難民問題と多分に連動する形でのテロ事件なども多々生じており、情勢はお世辞にもよいとはいえない。当然各国国民の心理に与える影響は小さからぬものがある。

このような状況の中で調査対象母集団に対し、EU全体における大きな懸念事項は何かについて、選択肢の中から2つ選んでもらった結果が次のグラフ。変化がよくわかるように、過去4回分も併せ都合5回分の動向をまとめている(順位は直近分の回答値順)。また、直近調査の上位陣について、過去の調査分からの動向もグラフ化する。

↑ 現在EU全体における大きな懸念事項は(EU28か国、2つまで選択)
↑ 現在EU全体における大きな懸念事項は(EU28か国、2つまで選択)

↑ 現在EU全体における大きな懸念事項は(EU28か国、2つまで選択)(2019年6月)
↑ 現在EU全体における大きな懸念事項は(EU28か国、2つまで選択)(2019年6月)

↑ 現在EU全体における大きな懸念事項は(EU28か国、2つまで選択、上位陣の動向)
↑ 現在EU全体における大きな懸念事項は(EU28か国、2つまで選択、上位陣の動向)

回答個数無制限の複数回答では無いため、それぞれの項目の値は多分に相対的な動きを示すことになるが、経済状況や失業、公的債務といった、数年前までEU全体で問題視され、世界経済にも大きな影響を及ぼしていた問題への懸念は低下。その他経済関連の値も概して鎮静化、つまり強く懸念する状況からは外れつつある。インフレ・物価高の値も漸減している。

それに連れ、相対的に、あるいは経済的な復興感に引き寄せられる形なのか、移民問題への懸念が急激に上昇していたことが分かる。また同時に、テロ問題への懸念も高まりつつあり、両者の問題の連動性も覚えさせる。単なる犯罪項目にはほとんど変化が無いことから、単純な治安の悪化では無く、対外組織、あるいは国際問題的な事案への不安が感じられる。

ただし移民問題は2015年11月にピークを迎え、それ以降は下落、踊り場の後に再び下落する動きを示している。しかしそれでも他の問題と比べて非常に大きな値には違いなく、抜きんでる形となっている。

テロ問題は2017年5月の44%をピークに漸減の動きが継続している。状況に改善が見られたわけでは無いが、これ以上の悪化の動きも無いため、少しずつ心境的に慣れてきたのかもしれない。

一方、気候変動や環境問題は少しずつだが懸念事項として注目を集めている。2018年4月には欧州環境庁が気候変動とその対応に関する実情の調査をはじめて行い、その報告書を発表したのも影響しているのかもしれない。あるいは単に移民やテロなど目の前に直面している問題に慣れ、中長期的な影響をおよぼし得る気候変動や環境問題を気にするだけの余裕が出てきたとの見方もできる。

移民やテロへの懸念の実情は、国単位の動向からもつかみ取れる。上記解説の通り、陸続きで経済的に豊かだと思われるドイツやイギリスに渡ろうとする移民の増加は、当事国においては大きな問題となっている。類似設問を回答者自身の国に関して尋ねた結果が次のグラフだが、そのドイツやベルギーでは移民問題が高い値を示している。テロが相次ぎ生じているフランスではテロへの懸念の値も高め。

↑ 現在回答者自国における大きな懸念事項は(2つまで選択)(2019年6月)
↑ 現在回答者自国における大きな懸念事項は(2つまで選択)(2019年6月)

ベルギーでは移民問題がトップで、それに政府負債や年金が続く形。ドイツでは移民問題が高い値を示しているが、それよりも住宅環境や環境・気象・エネルギー問題の方が上位についてしまっている。

ギリシャでは失業問題がトップでほぼ半数、次いで経済状況問題と続いているが、政府負債に対する不安も大きい。移民問題に関する値も18%に達しているが、順位としては随分と下になる。

昨今ではドイツの実情を受け、ドイツはもちろん他のEU諸国でも移民への対応が厳しさを増している。それとともに社会的混乱が抑えられるのか、あるいは反発が生じることになるのか、先は読みにくい。一方でイギリスが混乱が続いているが、EUからの離脱に関する脱退プロセスを進めており、今後他のEU諸国とは方向性の異なる国民感情を有し、調査結果として現れる可能性もある。ただし移民やテロの実情を見るに、言葉通り「対岸の火事」とするのは難しそうだ。

今なお高い値を示す移民やテロ問題の行く末はもちろんだが、イギリスのEU離脱に絡んだ同国、そして関連しそうな諸外国の動きも大いに気になるところだ。


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