EU最大の懸念事項は経済や失業よりも移民問題、45%が懸念を表明(2017年)(最新)

2017/01/14 14:43

欧州連合欧州委員会(European Commission)は2016年12月、同会が毎年2回定点観測的に行っているEU全体における世論調査「Standard Eurobarometer」の最新版となる第86回分を発表した。それによると、現在EU全体の最大の懸念として上げられたのは移民問題で、全体の45%が懸念を表明していた。テロ、経済状況、公的債務がそれに続いている。移民問題の懸念の高まりは昨今急激な上昇を示していたが、今回は前回に続き、直前調査分からは値を落としている。代わりに公的債務や経済状態、失業などが値を上乗せしているが、移民やテロ問題が大きな懸念として挙げられている状況に変わりは無い(【発表リリース:Standard Eurobarometer 86】)。

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「Standard Eurobarometer」は毎年2回、5月と11月に行われており、今回発表分が86回目となる。今調査の直近分は2016年11月3日から16日にかけて直接面談のインタビュー方式でEU加盟国及び候補国内において行われたもので、回答者数は合計で3万2896人、EU28か国に限定すると2万7705人。

2015年以降外電でたびたび伝えられている通り、欧州諸国の経済問題が最悪期を脱したように見えたことや、中東情勢問題の悪化を受け、EU諸国への移民(難民)問題が大きな社会問題化している。船を使い、あるいは陸続きで、より経済的に安定していると思われるドイツ、さらには英仏海峡トンネルを越えてイギリスに向かう人たちは後を絶たず、海峡トンネルでは警備の強化が成されるほど。また、対応しきれない一部の国では国境線の封鎖措置も成され、これに伴う衝突も起きている。

これに伴い各国の移民・難民による犯罪行為や地元民との文化的、さらには物理的衝突、その上移民・難民問題と多分に連動する形でのテロ事件なども多々生じており、情勢はお世辞にも良いとはいえない。当然各国国民の心理に与える影響は小さからぬものがある。

このような状況の中で調査対象母集団に対し、EU全体における大きな懸念事項は何かについて、選択肢の中から二つ選んでもらった結果が次のグラフ。変化が良くわかるように、過去4回分も合わせ都合5回分の動向をまとめている(順位は直近分の回答値順)。

↑ 現在EU全体における大きな懸念事項は(EU28か国、2つまで選択)
↑ 現在EU全体における大きな懸念事項は(EU28か国、2つまで選択)

↑ 現在EU全体における大きな懸念事項は(EU28か国、2つまで選択)(2016年11月)
↑ 現在EU全体における大きな懸念事項は(EU28か国、2つまで選択)(2016年11月)

回答個数無制限の複数回答では無いため、それぞれの項目の値は多分に相対的な動きを示すことになるが、経済状況や失業、公的債務といった、数年前までEU全体で問題視され、世界経済にも大きな影響を及ぼしていた問題への懸念は低下。その他経済関連の値も概して鎮静化、つまり強く懸念する状況からは外れつつある。インフレ・物価高の値も漸減している。

それに連れ、相対的に、あるいは経済的な復興感に引き寄せられる形なのか、移民問題への懸念が急激に上昇していることが分かる。また同時に、テロ問題への懸念も高まりつつあり、両者の問題の連動性も覚えさせる。単なる犯罪項目にはほとんど変化がないことから、単純な治安の悪化では無く、対外組織、あるいは国際問題的な事案への不安が感じられる。

ただし前回調査分となる2016年5月以降は、それら対外的要素が多分にある移民やテロへの懸念はピークを過ぎ、移民は2回連続、テロは今回調査分から、前回比で値を減らす形となった。その分、今回調査分では経済状態や公的債務、失業のような経済問題が上昇しており、移民やテロ問題に関わる懸念が(少なくとも心境面では)落ち着きを見せ始め、再び経済問題に注目が集まりつつある様子がうかがえる。

それと共にEUの影響力(の低下)の回答率が前回比で3%ポイントと大きく増加しているのも注目に値する。タイミング的には中東情勢に加え、米大統領選挙も多分に影響しているのだろう。

移民、テロ問題の懸念の実情は、国単位の動向からもつかみ取れる。上記解説の通り、陸続きで経済的に豊かだと思われるドイツやイギリスに渡ろうとする移民の増加は、当事国においては大きな問題となっている。類似設問を回答者自身の国に関して尋ねた結果が次のグラフだが、そのドイツやイギリスでは移民問題がとりわけ高い値を示している。

↑ 現在回答者自国における大きな懸念事項は(2つまで選択)(2016年11月)
↑ 現在回答者自国における大きな懸念事項は(2つまで選択)(2016年11月)

2016年3月22日にベルギーの首都ブリュッセルのブリュッセル空港とマールベーク駅で発生し、大規模な被害をもたらした連続爆破テロ事件の影響は、今なお当事国のベルギーには大きな影響を与えている。テロは大きな懸念事項として移民と共に挙げられ、問題の複雑さを思わせる形となっている。ドイツでは移民問題がトップだが、それに続いてテロが上位にあり、ベルギー同様の問題の複雑さがうかがえる。

他方、EU先進国でも失業率の高さが問題視されているフランスでは失業問題への懸念が大きく、テロ問題は次点。ただし前回よりも移民問題への懸念の順位が上がっており、移民に関わる懸念がドイツなどの特定国に限らなくなってきている感は否めない。イギリスは社会健康環境維持がトップだが、続いて移民が続き、言葉通り対岸の火事では無い心境がうかがえる。

ギリシャでは失業問題がトップ、次いで経済状況と続いているが、政府負債に対する不安も大きい。移民問題に関する値も15%に達しているが、前回調査から値は大きく減退している(マイナス5%ポイント)。

昨今ではドイツの実情を受け、ドイツはもちろん他のEU諸国でも移民への対応が厳しさを増している。それと共に社会的混乱が抑えられるのか、あるいは反発が生じることになるのか、先は読みにくい。一方でイギリスがEUからの離脱を決議し、脱退プロセスを進めることになり、今後他のEU諸国とは方向性の異なる国民感情を有し、調査結果として現れる可能性もある。

今なお高い値を示す移民問題やテロ対策の行く末はもちろんだが、イギリスの離脱に絡んだ同国、そして関連しそうな諸外国の動きも大いに気になるところだ。


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