レギュラーガソリン価格と灯油価格をグラフ化してみる(2015年)

2015/07/20 10:00

燃焼機関を動力源とする自動車は今や人間の社会生活には欠かせないツールの一つである。個人、世帯単位での移動手段としてだけでなく、流通を支える各種トラックやタンクローリーなど、工事現場などで働く建機、さらにはバスをはじめとした旅客用に至るまで、皆が皆、ガソリンを燃料として動いている(一部は軽油も使っているが)。最近では電気自動車、燃料電池自動車も少しずつ普及し始めているものの、今なお自動車がガソリンを主燃料としていることに違いは無い。当然、その燃料たるガソリン価格の動向は多くのドライバーはもちろん、自動車を間接的に利用する人にも気になるもの。今回は基準となる指標として総務省統計局による東京都区部のガソリン価格を用い、直近までの動きを確認していくことにしよう。さらに同じ石油を原材料として精製され、冬場に多く使われる灯油の動向も合わせて見ていくことにする。

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年平均では2014年は石油危機を超えたガソリン価格、今年は…


まずは原油価格(ニューヨーク原油・WTI)と連動する(WTI原油先物価格を参考に円換算されている)ETF(Exchange Traded Funds、証券取引所に上場しており証券口座があれば取引が可能な、株価指数などに代表される指標への連動を目指す投資信託)の一つ、【WTI原油価格連動型上場投信(1671)】のチャートを抽出し、原材料の価格動向を確認する。



WTI原油価格連動型上場投信
WTI原油価格連動型上場投信・6か月間・5年間の値動き(Yahoo! JAPAN ファイナンスより)

一つ目の過去半年間の動向を見るに、いくぶんのもみあいを示しつつも6月頭までは高値への値動きを目指していたものの、そこを天井とし、後は失速。今年頭、あるいは3月下旬の水準に戻しつつある。他方、5年範囲のチャートで見ると、2011年以降はもみあいの後、2013年に入ってから高値へ走ったものの、2014年夏をピークに、それ以降は急落。今年の頭に最安値を付けたあと、ややリバウンドで戻したが、再び値を落とす動きを示している。

この原油価格の動向を頭に入れた上で、早速ガソリン価格から見ていくことにする。過去データのいきさつについては【レギュラーガソリン価格をグラフ化してみる】で説明している通り、1991年以降の各種データは【総務省統計局・小売物価統計調査】から(全国平均が無いものは東京23区内データで統一)、1970年から1990年のデータについてはオートコミュニケーションズ(現在は該当データは存在せず)から抽出した。抽出元が異なるため、年次データには(正確・厳密には)連続性がないことに注意。

そして最近のデータは【総務省統計局・小売物価統計調査(動向編)/価格の動向】から逐次必要なデータを取得している。月次データのグラフは金融危機が勃発した2007年の頭からに限定し、激しい動向が分かりやすいようにしている。現在月次は2015年6月まで公表されていることから、年次のうち2015年分は6月までの平均を算出してグラフ上に加えている。

自動車ガソリンの東京都区部小売価格(年ベース、円)(1970年-2015年)(直近年は計上月までの平均)
自動車ガソリンの東京都区部小売価格(年ベース、円)(1970年-2015年)(直近年は計上月までの平均)

自動車ガソリンの東京都区部小売価格(月ベース、円)(2007年1月-2015年6月)
↑ 自動車ガソリンの東京都区部小売価格(月ベース、円)(2007年1月-2015年6月))

2008年夏期のガソリン価格高騰のイメージが強いため、同年の年次データが思ったより低い(「第二次オイルショック」と同等の150円台後半)ことに違和感を覚えるかもしれない。これは2008年後半においてガソリン価格が急落したため、年次における平均値としては押し下げられてしまったのが原因。二つ目の月次データを元にしたグラフで「原油直近天井価格」以後の急落を見れば、その下げぶりは一目瞭然である。何しろ半年で70円強もの下落を見せている。

一方、その月次においては、2008年4月の暫定税率一時解除に伴う下げを見せたあとは上昇を続けたものの、原油価格の天井である同年7月から8月付近で最高値をつけ、その後急速に値を下げている。そして原油価格の上昇、2012年末以降はそれに加えて為替レートの円安化と共に再び少しずつ上昇傾向にあり、それが2014年夏まで続いていたのが分かる。これは一つ目のグラフ、原油価格の動向にほぼ連動している。2014年夏までのガソリン価格の上昇ぶりは、為替レートにおける円安化と共に、原材料の原油価格の上昇に伴うものであることが、改めて認識できよう。

2014年秋以降は急速な原油価格の下落に伴い、稲穂がこうべを垂れるがごとく、値を落としている。月次の通りガソリン価格の大幅な下落は2014年11月から生じているが、2009年の下落以降の上昇機運が同年夏まで続いていたことから、2014年の年次では結果として年間平均値でも高値のまま、161円を付けてしまった。この金額は直近の金融危機(156円)、そして第二次オイルショック(154円)を超える値であり、夏までの高値ぶりを改めて実感できる結果となっている。

直近2015年6月の値は144円。数年分の上昇をすべて吐き出し、さらに下落が続いていた2015年2月の132円からじわりと上昇する動きを示している。昨今では上記の通り原油価格は再び下落に転じているが、その動きに合わせ、この小規模な上昇機運も再びトレンドを下値に戻すものと考えられる。

灯油価格の動向は?


ガソリンとはやや違った傾向を見せているのが灯油価格。こちらは東京都内・18リットルのデータを採用し、グラフを生成した。

↑ 灯油の東京都区部小売価格(年ベース、円、18リットル)(-2015年)(直近年は計上月までの平均)
↑ 灯油の東京都区部小売価格(年ベース、円、18リットル)(-2015年)(直近年は計上月までの平均)

↑ 灯油の東京都区部小売価格(月ベース、円、18リットル)(2007年-2015年6月)
↑ 灯油の東京都区部小売価格(月ベース、円、18リットル)(2007年-2015年6月)

上下変動の様子、グラフの形状はガソリンとほぼ同じだが、「計測史上」最高額はすでに2007年12月の時点で達成してしまっている。そしてその後も上昇を継続、結局最高値は2008年8月の2468円となった。この記録はいまだに破られていない。

幸いにも2008年においては、最高値をつけた夏以降、原油価格の急落を受けて灯油価格も下落。利用頻度が高まる2008年12月の時点では、価格は2006年の水準前後にまで戻っている。そしてその後はガソリン価格の変移と比べると緩やかではあるが、再び細かな上下を繰り返しながら、中期的に上昇の機運の中にあった。

そして2014年夏以降の動向もガソリンとほぼ同じで、同年秋からは大きな下落の最中にある。灯油を多用する2014年度の冬期に突入した時点でも安値は続き、前年度の同時期と比べても安値で推移した形となった。ガソリン同様原油価格に連動する形で値を少し戻した後は、もみ合いから小幅な上昇の気配を見せているが、すでに需要の多い冬季は過ぎ、今はもう夏真っ盛りな状況。タイミングの良さを実感させられる。




gogo.gs
昨年夏頃までは当方(不破)が巡回しているウェブサイトやブログ、ツイッターやFacebook上のタイムラインでも、自動車を運転する人による「ガソリン代がツライ」「また上がったの?」的な話をよく目にした。「景気ウォッチャー調査」をはじめとする各種市場調査、民間の商業関連の調査でも、電気代などとまとめて「エネルギーコスト」との表現が成され、ガソリン代の上昇に対する負担増に関する影響の大きさが認識できた。またガソリンスタンドを目にするたびにスタンドでの価格をチェックすると、少しずつではあるものの確実に、2014年夏頃までガソリン価格は上昇していた。

これは上記にある通り、原油価格の高騰によるところが小さくない。為替レートの変動(円安・ドル高)の影響もあるが、2014年夏までは1ドル100円あたりを行き来しており、ガソリン・灯油価格に大きな影響を与えるものではない。

ところが2014年夏の終わり頃以降、為替の大幅な円安化と原油価格の大幅下落の2要素から成る、ガソリン・灯油価格に大きな影響を与える事象が同時期に発生している。円安化の理由は【円ドル為替相場の移り変わりをグラフ化してみる】でも解説の通り、日米両国の金融政策上におけるいくつかの決定と、アメリカ経済の復調を受けて、そして原油価格の大幅下落は【これは驚いた、ルーブル安がゴリゴリ進んでいる件について】【止まらぬルーブル安、一時1ドル80ルーブルに】などで解説の通り、石油市場においてシェア維持を模索するOPECとシェールオイルによる市場参入を模索するアメリカとのチキンレース的な状況によるもの(原油を輸出することで外貨を稼いでいるロシアのルーブル安は、主にこの「レース」に巻き込まれた形)。また中国や欧州の景気鈍化などを受けて需要が減退したこと、その上原油安に伴い資産評価減を受けた石油関係各社が債務返却のため生産を継続どころか拡大しなければならなくなり、結果としてますます供給過多が進んだ結果とする分析もある。

日本では同時に円安が進んでいることと、すでに調達済みのものの出荷が先になることもあり、急に値が下がることはなかったが、2014年秋以降は確実に原油価格の下落の影響が出る形となった。昨今では原油価格の動向と比較的短期間で連動する値動きを示している。なお今記事右横に配されているgogo.gsのデータを執筆時点で確認すると、レギュラーガソリン(東京都)は7月13日から19日の集計値として、137円台をつけている。先月からはいくぶん値を下げており、今後原油価格の動向通り、やや下落の流れに移っているようだ。

現状では原油市場が供給過剰に陥っていることに加え、消費国の消費量減退(特に中国)に伴い、価格は再び下落するのではとの観測がある。他方、アメリカのシェールオイルを採掘している会社の債務が問題視される報道やレポートもあり(【米シェールオイル業界の次なる試練、総額29兆円の債務の利息(ブルームバーグ)】)、今後の動向は見極めが難しい。

ガソリン・灯油共に、現在の日常生活には欠かせない。そして冒頭にも触れた通り、直接消費するのみならず、流通においても多用されるところから、ガソリン価格の変化は多種多様な商品価格にも大きな影響を与えることになる。さらには費用・経費の上で、ガソリン価格次第でビジネス領域を縮小したり、商売そのものを断念せざるを得ない事例もある。今後もガソリン、そして今年度の最繁期は過ぎたものの、冬季においては生命線にも直結する灯油価格の動向には、深い留意を払いたい。


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