全地域でマイナス、関東・近畿圏で大幅減…全国紙の地域別世帯シェア動向(2014年後半期版)

2015/02/17 13:00

当サイトでは定期的に日本の新聞業界の動向を、公開値を基に精査しているが、そのうちの一つ、読売新聞社の広告ガイドページ経由・日本ABC協会「新聞発行社レポート 半期」の値について、先日最新値となる2014年後期分が発表された(【販売部数の公開ページ】)。そこでその公開値を基に、いつもの通り全国紙5紙(読売、朝日、毎日、日経、産経)の都道府県別シェアの動向を、複数の切り口で確認していくことにした。

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全地域で前半期比マイナス


まずは「全国紙5紙の朝刊世帯普及率」(夕刊は含まれていない)を算出し、単純に合計したものを都道府県別に列挙する。なお今回のデータは上記にある通り、日本ABC協会「新聞発行社レポート 普及率」2014年7月-12月平均データを一次ソースとしている(ことになる)。

↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率・単純合計値(2014年後半期)
↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率・単純合計値(2014年後半期)

グラフ中の但し書きの通り、「1世帯が複数の全国紙を購読している事例も想定されるため、この値がそのまま「『いずれかの全国紙を購読している世帯普及率』では無い」ことに留意する必要がある。例えば奈良県なら92.2%との数字が出ているが、これは「奈良県では9割以上の世帯が、5大全国紙のいずれかを購読している」訳ではない。仮に新聞購読全世帯が5紙すべてを購読していた場合、実質世帯普及率はその1/5、20%足らずとなる。

一方、金銭的、時間的に余裕がある、大手新聞紙を複数購読し比べて内容の違いを検証する、特定の連載に目を通すために数紙を購入する事例はあるにせよ、多くの世帯で複数の主要新聞紙を購読しているとは考えにくい。実際、【月ぎめで新聞を取ってる人はどれぐらいいるのだろうか】によれば、全国紙を取っている人のうち複数紙の購読者は6.5%でしかないのと結果が出ている。

また、高い値を示している地域(関東・近畿圏や山口県)では、以前の解説記事【「全国紙」の都道府県別トップシェア新聞を地図化してみる(2010年下半期版)】で、読売新聞や毎日新聞のシェア比率が高い結果が出ており、主要紙の単純合計値でもそれなりに高い精度で状況が把握できている様子が確認できる。

さらに、このグラフで値が低い都道府県では多分に地方紙が多く購読されており、新聞そのものが読まれていないわけではないことが多い。例えば青森県では最大手の販売部数を誇る新聞は東奥日報(世帯普及率は4割超え)、次いでデイリー東北、その次にようやく大手5紙のうち読売新聞がついている。

次に、直前期2014年前半期からの半期における差異を計算したのが次のグラフ。要は半年間でどれ程の変化が生じたのかを示した結果となる。

↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率・単純合計値(2014年前半期から2014年後半期への差異)
↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率・単純合計値(2014年前半期から2014年後半期への差異)

2014年前半期では沖縄県のみがプラスを示したが、今半期では全地域がマイナスとなった。あくまでも紙媒体としての新聞、しかも朝刊のみでの計測ではあるが、世帯ベースでの新聞離れの現状が一目瞭然で把握できる。

一方で下げた地域の下げ幅を見ると、関東と近畿圏の下げ率の大きさが目立つ。これは前期の2014年前半期から続く傾向で、人口密集地帯における紙媒体としての新聞離れが進んでいることを想起させる動きではある。

5大紙の地域別動向を探る


続いて全国を「北海道・東北」「関東」「中部」「近畿」「中国」「四国」「九州・沖縄」のエリアに分割し、それぞれの地域別の朝刊世帯普及率を算出する。

↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率(地域別)(2014年後半期)
↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率(地域別)(2014年後半期)

人口密集地帯である関東と近畿において、大手2紙の読売新聞・朝日新聞が群を抜いて高い値を示しているのが分かる。まだ近畿は毎日新聞がそれに続く値ではあるが、関東では他の3紙は大きく突き放されている。関東では読売と朝日の天下状態とも表現できる。なにしろ単純計算ではあるが2紙合計で4割強もの世帯普及率を示しているのだから。

ただしこの人口密集地帯、関東圏・近畿圏は同時に上で記した通り、今半期で全国紙における世帯普及率が大きく減退した地域でもあり、新聞業界に与えた衝撃の大きさも容易に想像できる。

一方、「毎日新聞は近畿や中国、九州・沖縄などの西日本で強い。ただし四国は弱い」「中部地域では朝日新聞が読売新聞を抜いてトップ、四国でも読売とほぼ変わらない値に肉薄している」「産経新聞は関東と近畿に特化し、特に近畿で強く、日経を超えている」など、地域特性や各新聞社の特徴などが確認できる。特に産経新聞は関東と近畿のみ強く、他地域では世帯普及率が1%を切っており、同社の販売促進戦略が人口密集地域へのリソース集中投下にあるものとの推測ができる。

この朝刊世帯普及率について、前半期、つまり2014年前半期からの変移を計算した結果が次のグラフ。地域別の動向を眺め見ることができる。

↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率(地域別)(2014年前半期から2014年後半期における変移)
↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率(地域別)(2014年前半期から2014年後半期における変移)

まず最初に目に留まるのが、読売新聞・朝日新聞の大規模な減少ぶり。両紙は先行記事の通り、部数そのものが前半期から大きく削られる形となったが、それが全地域で押し並べて起きていることが分かる。一方で両紙とも関東・近畿地域での減少率が特に大きく、両地域での全国紙の減退ぶりは、主にこの2紙によって引き起こされている事実が浮かび上がる。また両紙においては、大よそ東日本では朝日新聞が、西日本では読売新聞の方が下げ幅が大きい傾向がある。特に北海道・東北と九州・沖縄にその顕著なまでの違いが描かれている。

他方、毎日新聞はやや四国で大きな下げを示しているが、読売・朝日と比べれば誤差の範囲、日経や産経に至ってはほぼゼロに等しい下げ方に留まっている。とりわけ今半期では5紙のうち唯一部数を増やした産経は、近畿と四国で大きな上げ方を示し、元々注力をしていたであろう関東・近畿のうち、近畿においてさらなる普及が成されたことになる。

最後に各新聞社別の普及率グラフを別の視点で再構築する。

↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率(新聞別)(2014年後半期)
↑ 全国紙5紙の朝刊世帯普及率(新聞別)(2014年後半期)

読売新聞の部数面での強さは、関東・近畿といった人口密集地帯、そして商業圏での強さにあることが分かる。朝日新聞も数字そのものはやや落ちるものの、地域別傾向としては読売に似ている。販売戦略も恐らくは同様なのだろう。さらにこの2紙は中国圏でも強い値を示しているのが特徴的。

産経は絶対値がかなり低く、部数の絶対数の足りなさは経営リソース不足によるところが大きいものと考えられる。また近畿圏での突出した値が目に留まる。元々同紙は近畿圏での強さが特徴だったが、今半期の伸びでそれがさらに際立った形だ。近畿圏のみなら日経新聞をも上回る値を示しているのは、注目に値する。



先行する部数動向記事でも言及しているが、日本では「人口の減少」「一人世帯の増加」「世帯数の増加」が同時進行で起き、そして一人世帯では新聞購読率が低くなるため(購読必要性の低下や可処分所得の小ささが原因)、仮に部数が維持されても世帯普及率は減少してしまう。母数となる世帯数が増加するからだ。今記事の各値は「どれだけの割合の世帯に新聞が届いているか」といった、新聞の動向を確認する指標の1つに過ぎない。また絶対数こそ少ないが、有料電子版の存在も忘れてはならない。

今半期においては、部数動向で示した通り、読売・朝日の大手2紙の大幅減少が目に留まる。一方、減少した分はどのような理由で減ったのか、その詳細は今件公開データからは分からない。もっとも今半期に限れば朝日新聞の大幅な下落は、数々の捏造報道の発覚とその後の対処によるところが大きいのであろう。

他方中長期的な部数の減少、購読世帯率の低下は、上記に挙げた一人世帯の増加に加え、【新聞を読まない理由は何だろう】などで挙げている通り、他媒体、特にインターネットやテレビから取得できる情報で十分との理由が多分を占めるものと思われる。これら要素は今後減少する可能性はゼロに等しいことから、今後も新聞の世帯普及率は低下を続けていくに違いない。もっともその減少傾向はそれぞれの新聞、地域で多様な違いを見せることだろう。


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