新聞の販売部数などをグラフ化してみる(2014年後半期・半期分版)

2015/02/17 11:00

当サイトでは主に年単位で日本新聞協会発表の公式データを基にした、そして読売新聞社の広告ガイドページで半年単位で更新・公開されている日本ABC協会「新聞発行社レポート 半期」を基に、日本の新聞業界の動向を精査している。その後者について2015年2月16日付で、最新版となる2014年後半期の分のデータ掲載を確認することができた。そこで今回はその最新データを基に、日本の主要新聞社の新聞における発行部数の現状を確認していくことにする。

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前半期比で産経のみわずかにプラス、最大下げ率は朝日


まずは主要全国紙、具体的には読売新聞・朝日新聞・毎日新聞・日本経済新聞(日経新聞)・産経新聞の計5紙における「販売部数」。これは【読売新聞広告ガイド】からリンクをたどり、【販売部数の公開ページ】に掲載されている、「日本ABC協会「新聞発行社レポート 半期」2014年7月-12月平均」で取得することができる。該当半年間におけるで平均値であること、朝刊「販売」部数のみで夕刊は含まれないことに留意する必要がある。また電子版は含まれておらず、紙媒体としての新聞販売部数に限定されている。

↑ 2014年後期における主要全国紙の朝刊販売数(万部)
↑ 2014年後期における主要全国紙の朝刊販売数(万部)

読売新聞は数年前まで「販売部数1000万部超」をセールスコピーとして用いていた。他誌と比べて「ケタが違う」部数はそれだけで大きなセールスポイントとして呈することができた。しかし2011年前半期でその大台を割り込み、以後販売部数の減少が続いている。今半期でも部数漸減の動きに歯止めをかけることは出来ず、主要全国紙の中ではトップの部数を維持しているものの、後述するように減少部数率では朝日新聞に次いで大きな値を示してしまっている。

読売新聞に続く部数を計上しているのは朝日新聞、そこから部数を半分以下に減らして毎日新聞、日経新聞、そして産経新聞が続いている。各新聞社の順位はこの数年、少なくとも当サイトで各紙の部数動向の精査を始めて以来変化は皆無。各新聞の部数の差異から考察する限りでは、毎日新聞と日経新聞との間で順位変動が起きる可能性が一番高いが、各紙とも下げ基調の中にあるため、順位そのものの差し替わりの機会はなかなかなさそうだ。

読売新聞が部数の上で他紙と比べて優位な位置を維持しているのは、【「東洋経済の2010年 2/20号 特集:再生か破滅か……新聞・テレビ 断末魔」】によると「ホテルなどへの営業が功を奏している」のが大きな要因とのこと。ただしここ数年は下げ幅が大きくなっていることから、それらの場面での需要も減退している可能性はある。

なお一部で話題に登っていた「朝日新聞700万部割れ」の件だが、少なくとも2014年後半期における平均値の限りでは、700万部を維持した値が出ている。

朝日新聞の下げ幅は4%超


続いて公開値を基に独自算出した値を用い、複数の比較グラフを生成し、状況のより詳しい精査を行うことにする。まずは前半期、今回ならば2014年前半期との差異を比率化したもの。単純計算で、半年の間の変動部数を確認できる。

↑ 2014年後期における主要全国紙の朝刊販売数変移(2014年前期との比較)
↑ 2014年後期における主要全国紙の朝刊販売数変移(2014年前期との比較)

今半期は朝日新聞の「二つの吉田問題」など、朝日新聞を中心に新聞そのものの意義や信頼性が大きく問われる時期だった。各種調査でも全国紙に対する存在意義が改めて問われるような結果が出ていたが、それを思い返さざるを得ない動向が見受けられる。

奇遇にも読売新聞の前半期比の動向は、前半期のそれと同じくマイナス3.11%。しかしそれ以上に大きく下げたのは朝日新聞のマイナス4.47%。前半期のマイナス1.45%から加速的な減少ぶりとなっている。一連の問題露呈とその後の対応が、そのまま部数動向にも表れたと判断せざるを得ない。毎日新聞と日経新聞は部数を減少させたものの、下げ幅は1%未満に留まり、産経新聞に至っては逆にわずかだが部数を上乗せしている。

読売新聞は1000万部を切った後はしばらくの間、(恐らくは1000万部回復のための)奮戦ぶりが見受けられた。しかし2014年前半期で緊張の糸が切れてしまったかのような下げ方を示してしまった。今半期はその流れが継続している感はある。他紙と比べて部数そのものが多い読売なだけに、この下げ幅の大きさには少々驚きを隠せない。

詳細な部数算出、グラフ生成は省略するが、部数の増減においては、朝日新聞のマイナス33.3万部がもっとも減少部数が大きく、読売新聞のマイナス29.8万部が続いている。前半期比で1%前後までは誤差的変動の可能性もあるが、それを超える下げ幅はさすがに「低迷」と判断せざるを得ない。今回該当時期では朝日新聞は、単純計算で毎月5万部以上部数が減った計算になる。

世帯普及率は4紙で低下


最後に世帯普及率の算出。これは全世帯に対して各新聞が届いている世帯の比率を表したもの。例えば読売新聞は16.26%とあるので、大体6世帯に1世帯は読売新聞を取っていることになる。

↑ 2014年後期における主要全国紙の世帯普及率(2014年前期との比較)
↑ 2014年後期における主要全国紙の世帯普及率(2014年前期との比較)

朝刊は世帯単位で定期購読されることが多く、また世帯構成員全体が目を通す可能性が高い。今件は単純な朝刊の販売部数よりも新聞市場・業界のすう勢を推し量る指標として有意義な値である。これを見ても読売新聞の絶対的なポジションをはじめとした、各主要紙の現状がつかみ取れる。

今半期では、産経新聞以外の4紙が部数を減らしており、当然のことながら世帯普及率も減少している。特に部数の下げ率が大きかった読売新聞と朝日新聞において、明らかに前半期から棒グラフの長さが凹んでいるのが分かる。一方産経新聞は部数を積み増ししているが、その絶対数がごくわずかなため、世帯普及率の算出の際には誤差の範囲に留まってしまい、前半期からの増加は事実上無い結果が出ている。

注意事項を挙げるとすれば、世帯普及率の動向は、漸増する世帯数にも影響を受けるという点。人口は漸減しているものの、一人暮らし世帯が増えるため、世帯数は増える。そして一人暮らしの世帯では新聞の購読率は落ちるので(読み手が一人しかおらずコストパフォーマンスが低くなる、世帯収入が二人以上世帯より低いので可処分所得が下がり、新聞購入の余裕が無くなる)、世帯普及率はマイナスのプレッシャーを受ける形となる。



日経新聞電子版の有料会員数各紙の販売部数の減退の一つの要因に、購読者の一部が紙媒体版から電子版に切り替えたため、紙媒体の新聞販売部数としてはカウントされなくなったのでは、との説が挙げられる。各紙とも何らかの形で電子版を展開しているが、定期的に展開状況が把握できる値を公開しているのは日経新聞のみ。現時点で容易に取得できるデータとしては【MEDIA DATA 2014(PDF)】が確認できるが、それらによると

・朝刊購読数…313万4517

・朝刊(紙媒体)販売数…277万1025部

・電子版有料会員数…36万3492
 うち朝刊と電子版の併読…17万6388
 うち電子版単体購読…18万7104

となる。販売数ではなく購読数の表現が用いられているのは、日経Wプラン(紙と電子版の双方を読むプラン)で重複カウントをしているため。「読者数」「販売数」の概念としては、仮に有料電子版も読者として想定するのなら、277万1025(紙媒体購読者数)+18万7104(電子媒体のみ購読者数)=295万8129との概算値が出る。また現状では紙媒体の新聞部数の7%近くの値が、電子版のみの購読者と成り得ると考えれば良い。例えば100万部の発行部数を誇る新聞ならば、7万人が電子版のみの購読者として期待できる。

もっともこれは2014年7月時点での、日経新聞の事例。他社新聞社は恐らくこれより下回る部数・比率であることは容易に想像が出来る。また無料登録会は各紙ともそれなりに人数がいるはずだが、今件における紙媒体の新聞(当然有料)と合わせて考えることは、かなり難があるので考察には加えない。

過去のデータを確認する限り、日経新聞に限れば有料電子版単体の購読者、つまり紙媒体の新聞の代替的存在の数は漸増をしているものの、1年で5万人程度の増加に留まっている。例えば前半期との比較では、電子版有料会員数は約2万8000人、そのうち朝刊と電子版の併読は約9000人、電子版単独の購読は1万9000人、それぞれ増加している計算になる。今回計上された前半期との紙媒体としての新聞の部数推移はマイナス約1万9000部なので、電子版単独の購読者の増加でほぼ補完された形となる。

もっとも今回の事例はごく稀な成功事案。多分に音楽業界におけるCDの売上と有料音楽配信の売上の関係のように、メディアシフトが起きる一方、移行の際に分散化なども生じてしまい、売り上げの上では十分な代替にならなくなっている状況であることは、容易に想像できる。

そして他の4紙も電子版に関しては、大きな期待は出来ない。大いに公開できるだけの実績を挙げていれば、電子版の有料会員数、つまり紙媒体の購読者の代替的な存在数について、定期的に公知ができるはずであり、それが出来ていない現状からは色々と察せざるを得ない。

インターネットの普及、スマートフォンやタブレットの浸透に伴い、情報の取得スタイルは大幅に変化し、メディアの価値観は変動を続けている。その荒波を乗り越え、しかも新聞としての大義を忘れることなく品質を維持し、新時代の担い手として支持を得続けることが出来るか否か。努力と検証、そして決断が求められている。その選択の正しさは、部数にも反映されることだろう。


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