巨人去り 後に残りし 低迷感…少女・女性向けコミック誌部数動向(2015年1月-3月)

2015/05/03 08:00

多様な技術革新、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及浸透で、紙媒体は立ち位置の変化を余儀なくされている。すき間時間を埋めるためによく使われていた雑誌は影響を大きく受け、市場・業界は大人しめに表現しても大変動のさなかにある。その変化は先行解説した少年・男性向け雑誌ばかりでなく、少女・女性向けのにも及んでいる。そこで今回は社団法人日本雑誌協会が2015年4月27日付で発表した「印刷証明付き部数」の最新値(2015年1月から3月分)を用い、「少女・女性向けコミック系の雑誌」の現状を簡単にではあるが確認していく。

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少女向けトップはちゃお、女性向けはBE・LOVE。不動のトップ達


データの取得場所に関する説明、「印刷証明付部数」など各種用語の解説、さらには「印刷証明付き部数」を基にした定期更新記事のバックナンバーは、一連の記事まとめページ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】に掲載している。必要な場合はそちらを参照のこと。

まずは少女向けコミック誌の現状。特に明記はされていないが内容を確認する限り、ターゲットとなる読者層は比較的年齢が若い世代、具体的には未成年でも高校生ぐらいまでが対象。今四半期も前四半期同様、脱落・追加雑誌は無し。また改名・リニューアル誌も無い。

↑ 2014年10-12月期と最新データ(2015年1-3月期)による少女向けコミック誌の印刷実績
↑ 2014年10-12月期と最新データ(2015年1-3月期)による少女向けコミック誌の印刷実績

少女向けコミック誌ではトップは「ちゃお」。第2位の「別冊マーガレット」に3倍に迫る部数差をつけており、少年コミック誌の「週刊少年ジャンプ」的な独走ぶり。この圧倒的差異をつけた状況は、現在データが取得可能な2008年4月から6月分の値以降継続している。その勢いの良さも「週刊少年ジャンプ」と変わらず。

第2位の「別冊マーガレット」と第3位の「りぼん」は僅差で競っている。そしてその後に「花とゆめ」「LaLa」「Sho-Comi」「なかよし」がほぼ同列で続き、その他諸々が後を追いかけている。前四半期と比べパッと見で大規模な変動をしているのは「なかよし」の大幅な減退で、これにより「Sho-comi」との順位が入れ替わっている。

続いて女性向けコミック誌。想定読者層は「少女向け」と比べてやや高めの年齢層。内容的には大人向けと評しても良いものが多く、子供にはあまりお勧めできない(いわゆるR指定は無いが)。発行部数は少女向けコミックと比べて少なく、横軸の部数区切りの数字も小さめ。

↑ 2014年10-12月期と最新データ(2015年1-3月期)による女性向けコミック誌の印刷実績
↑ 2014年10-12月期と最新データ(2015年1-3月期)による女性向けコミック誌の印刷実績

トップの「BE・LOVE」(主に30代から40代向けレディースコミック誌)がやや突出、「YOU」「プチコミック」が続く。トップ以外の部数は各誌でそれぞれ類似順位他誌と一定の差異があり、並べるときれいな傾斜が出来ている。順位変動が起きにくいように見えるが、元々の部数が少ないことから、実際には環境変化に伴う変動の影響が出やすい。例えば今四半期では「Cookie」が大きく部数を減退しており、このままでは「ザ・デザート」との入れ替わりもあるように見える。

ここ数四半期ほど、その順位変化のさなかにあるのが「ARIA」。今四半期でも前四半期と比べ減少を示している。これはここしばらく続いている動きで、理由は後ほど詳しく解説していく。

軟調感ただよう…四半期変移から見た直近動向


次に前四半期と直近四半期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに雑誌推移を知ることはできる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2015年1-3月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2015年3月期、前期比)

プラス領域は「LaLaDX」「ちゃお」のみで、しかも誤差の範囲(振れ幅5%以内)に留まっている。「別冊マーガレット」「りぼん」はまったく変化なし、残りはすべてマイナスだが、誤差を超えているのは「なかよし」のみ。下げ基調にあるが大よそゆっくりとしたレベルで持ちこたえている。身体の状態に例えると、いわゆる未病的な感じ。

今四半期は変化なしの結果を示した「りぼん」。同誌は他誌の動向と異なり、意外な健闘を示していることでも注目できる対象となっている。一般誌の「SPA!」に近い動き。

↑ りぼんの部数推移(2015年1-3月期まで)
↑ りぼんの部数推移(2015年1-3月期まで)

「りぼん」は「なかよし」「ちゃお」と並び小中学生向けの3大少女向けコミック雑誌。1955年8月に創刊し、すでに半世紀以上の歴史を有している。自分の母親も愛読者だったとの人も多分にいるはず。その老舗も昨今の雑誌不況には勝てず部数を減らしているものの、上記グラフの通り、2011年後半期以降はほぼ20万部を維持している。固定ファンの多い執筆陣を抱えている、編集方針の大きな変化が無く読者が安心して定期購読できる、毎号魅力的な付録を提供するため、本誌の内容以外の部分でも読者のハートをつかんで離さない手堅いの施策が結果に表れていると評することができる。

「りぼん」の部数は4年ほど横ばいの傾向が続き、例えば有力作品のアニメ化など、何かきっかけがあれば大きく伸びる雰囲気。他ジャンル(例えば少年・男性向けコミック雑誌)でも似たようなチャートを作る雑誌はいくつかあり、それらと同様に「秘めたる力」の発動が待ち遠しい。

同じく継続的な観測をしている「Sho-Comi」。「少女コミック」から雑誌名も含めて大幅にリニューアルし、さらに2010年に行われた小学館の少女向けコミック内の再構築に合わせ、読者想定層の年齢をいくぶん下げて現在に至っている。

この大規模なリニューアルに伴い、下げ基調にあった部数動向は横ばいになり、上昇機運を見せる機会も何度かあったものの、結局2013年後半からは失速しはじめ、その傾向は現在も継続中。

↑ Sho-Comi(少女コミック)の部数推移(2014年10-12月期まで)
↑ Sho-Comi(少女コミック)の部数推移(2014年10-12月期まで)

続いて女性向けコミック。少女向けコミックの動向と似たような動き。

↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック)(2015年1-3月期、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック)(2015年1-3月期、前期比)

↑ ARIAの部数推移(2015年1-3月期まで)
↑ ARIAの部数推移(2015年1-3月期まで)

プラス領域の雑誌は皆無(切り捨てなどの問題では無く、まったく同じ)。マイナス領域雑誌が多数、誤差を超えた大幅な下げを示した雑誌が1誌、「Cookie」。同誌は前四半期の6.5万部から5.9万部へと部数を減らして今回の下げ幅を示したが、元々同誌では数四半期毎に少しずつ部数をまとめて減らす動きかあるため、今回に限った話では無い。とはいえ後述の通り、年ベースでも1割以上の減退は、よろしいものではない。

「ARIA」は「進撃の巨人」のスピンオフ作品「悔いなき選択」の掲載開始後、多くのファンを引き寄せ、部数を大幅に底上げしていた。そして同作品が2014年8月号(6月28日発売)で終了し、単行本も全2巻が発売されたあとは、勢いも失速。グラフにある通り部数を急速に落とし、今四半期ではほぼ特需前の水準にまで戻ってしまった。特需前と比べ600部ほど上乗せしているが、残り香的なレベル。同誌では「悔いなき選択」以外にも「遙かなる時空の中で6」の漫画化など新しい手を打ち出しているが、部数底上げにはつながっていない。

下げ基調の雑誌多数…前年同期比


続いて「前年同期比」による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による変移を考慮しなくて済む(いわゆる季節調整値による調整が要らない)ので、より確からしい精査が可能となる。

↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2015年1-3月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少女向けコミック誌)(2015年1-3月期、前年同期比)

プラスの動きを示す雑誌はゼロ。5%超、つまり誤差範囲を超えた下げ幅を示した雑誌は9誌で、前四半期と変わらず。その領域から逃れた「誤差範囲内の下げ幅に留まっている」雑誌は「りぼん」「別冊フレンド」「ちゃお」「別冊マーガレット」の4誌。この4誌は前四半期も同じ誤差範囲内にあり、現状の環境を考慮すれば健闘組と見ても良い。

逆に10%超の雑誌4誌のうち、前四半期でも同じポジションにあったのは「なかよし」以外の3誌。部数の絶対数に違いはあれど、年1割以上の減少は「もう慌てるような時間」に違いない。

続いて女性向けコミック。

↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック誌)(2015年1-3月期、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(女性向けコミック誌)(2015年1-3月期、前年同期比)

「ARIA」は前述の通り「進撃の巨人」特需の反動によるもの。前四半期に計上した「前年同期比でマイナス78.0%」と比べればまだ大人しいが、2/3近い減退は驚異的な値に違いない。まさに巨人去りし後。

その「ARIA」の下げから他の雑誌の動向がかすんでしまっているが、5%を超えた下げ幅を見せる雑誌も「ARIA」以外で7誌となり、プラスは皆無。グラフの横軸もプラス領域が要らない状態。好ましい状況にあるとはいえない。



数四半期前にピックアップした「別冊マーガレット」の「俺物語!!」のアニメ化が決定し、それによる相乗効果も期待されたが、結果としてその動きはみじんも感じらなかった。テーマ自身が異作ともいえる存在で、注目を集めるのに値する作品ではあるが、実情は厳しい。

もっとも「ARIA」の動向にある通り、単発作品の特需による効果は一時的なもので、それこそそのクラスの底上げを行える作品を複数、そして常時有していない限り、プラットフォームとなる雑誌自身の活性化は望めない。かつての週刊少年ジャンプにおけるキラ星的連載陣のような体制は、趣味趣向が多様化した現在では難しく、さらに少女・女性向けコミック誌ではハードルが高いのだろう(かつて言及した「別冊 花とゆめ」における「ガラスの仮面」クラスのタイトルが複数、同時展開されればあるいは……という感はある)。

男性向けの雑誌と比べて女性誌は通学はともかく通勤状況を思い返すに、「すき間時間を費やす」目的としての雑誌需要の影響は少ない。事実、少女・女性向けコミック誌は男性向け雑誌以上の減退ぶりを示している。インターネットによる情報のやり取りが、男性よりも女性の方が積極的に行われるのも大きな要因だろう。むしろそれを利点とし、ネットとのリンクを重視した雑誌展開が、あるいは起死回生の手立てとなるかもしれない。


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